亂世 ~幾千万の声、幾億の無言~

るてん

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第一部「開戦の狼煙」

Act2「嵐のように」

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 4/1未明

 台湾全土で通信障害が発生し、市民の間にも混乱が広がった。SNSや動画サイトはほぼ機能せず、
一部のユーザーが辛うじて繋がったとしても、異常な遅延やエラーメッセージが頻発する。

「どうせ大陸の仕業だろうな」
「まったく、選挙が近くなると毎回これだ」
 そんな書き込みが、断続的につながるSNS上に次々と投稿されていた。

 一方、台湾軍の通信網も同様の影響を受けていた。レーダー網の一部がダウンし、空軍基地との連携が断続的に途切れる。
参謀本部では状況の分析と復旧作業が急ピッチで進められていた。

 午前4時過ぎ、サイバー防衛チームの指揮を執る陳志堅特務室長が参謀本部へ到着した。
李凌雲少将の同期であり、サイバー戦におけるエキスパートだった。

「凌雲、奴らは本気だぞ」
「そちらの状況は?」
「お互い様ってところだ。連中は一気に仕掛けてきたが、こっちも簡単にはやられん」

 陳は部下たちに指示を飛ばしながら、迅速にネットワークの防御プロテクトを強化し、敵のサイバー攻撃に対応した。
その間も、スクリーンに映し出された台湾全土のマップには、絶え間なくシステムエラーの警告が点滅していた。



 午前6時、南シナ海に展開する中国海軍艦艇から複数の弾道ミサイルが発射された。
同時に、沿岸部や移動式発射台からも巡航ミサイルが放たれ、台湾全域を標的とする飽和攻撃が開始された。

「ミサイル接近!複数確認!」
 警報が鳴り響き、台湾軍の防空システムが即座に迎撃態勢に入る。各地の地対空ミサイル部隊が発射命令を待ち、イージス艦も迎撃に向けて動いた。

 最初の波は防空ミサイル網によって大部分が防がれた。台湾軍の練度の高さを証明するかのように、迎撃弾が次々と敵ミサイルを打ち落としていく。

 だが、圧倒的な物量と巧妙な攻撃パターンが台湾軍を追い詰める。標的の一つである高雄の軍港では、ミサイルの直撃を受けた駆逐艦が炎上し、被害が拡大した。

「敵の攻撃パターンが読めません!」
「続けて迎撃、余計な判断を挟むな!」

 さらに、台湾海峡を挟んで展開するイージス艦の一隻が中破し、迎撃網に大きな穴が生じた。この隙を突き、中国軍は次の一手を繰り出そうとしていた。

 参謀本部には次々に被害と死傷者数の報告が入る。参謀たちは、それを悼む間すらなく次の迎撃計画を組み立てた。



 前線に移動中の李凌雲少将は被害状況を整理し、参謀本部へ伝達した。参謀長官から配置の変更が発令され、台湾軍全体に展開命令が下る。

「移動式の防空部隊はすでに展開中です。新型兵器の投入も準備完了」
「航空戦力は?」
「無人機の編隊が敵のミサイル発射地点へ向かっています」

 その報告の直後、台湾軍機が侵入してきた中国の無人機群を全滅させたとの一報が入った。

「全機撃墜を確認!」
「やった!」
 前線の兵士たちが歓声を上げた。士気は高まり、台湾軍は次の一手に備える。



 日本では台湾で飛び交うミサイルの映像がネット上に急速に拡散し、市民の不安が広がっていた。
政府は臨時会見を開くものの、官房長官は「慎重に推移を見守る」との発言にとどめた。

 正午のニュース番組では、論客たちが前回の尖閣占領事件を引き合いに出し、「今度こそ断固たる対応を」と政府を批判する場面が流れる。



 そのころ、在日米軍司令部では緊急会議が開かれ、アレックス・バーンズ提督が熱弁を振るい主導していた。

「第七艦隊が即応態勢を取ることで、抑止力を示せる」

 バーンズ提督は自分が率いる第七艦隊に強い自負を持つ。中国への抑止のために増強された艦隊の提督としては当然だ。

「このまま地上戦になれば、我々が介入するのが困難になる」
「だが、ホワイトハウスの許可なしに動くことはできん」
「時差もある。ホワイトハウスはまだ夜中だ」
「しかし、中国がこのままエスカレートすれば、我々も動かざるを得ない」

 バーンズは冷静に状況を捉えつつも、軍としての迅速な行動を主張した。

「大統領がどう判断するか次第だな」

「中国軍と直接衝突になってからでは遅い…大統領閣下は勿論理解しておられるはずだ」

 在日米軍司令が場を収めるようにそう語り、会議室には一瞬の沈黙が流れた。



 こうして、台湾への攻撃が激化する中、国際社会の対応が試される局面へと突入していった。

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