転生したらダンジョン雲になった訳

2章英雄と龍魔王

クロイツVS六龍

　一方、クロイツは右脚を夥しい数の緑蛇によって、自由を奪われ、動くことができなかった。
　しかも、緑蛇は毒牙で、脚をガブリガブリと噛みついてくるのだ。

「くっ……ぁぁぁぁぁぁ」

　思ったよりも毒の効能が早く、眩暈や視界が霞む。
　クロイツは何とか打開することを試み、持ち味であるアイテムボックスから解毒瓶を転出し、治療を試みる。
　が、しかし、六龍獣（ヤマタノオロチ）が、下から物凄い勢いで、迫り、クロイツの全身に噛みついた。
　無情にも、解毒瓶は地上へと吸い込まれる。
　代わりに六頭の牙がそれぞれ、肉まで食い込み、急速に毒を内部まで浸透させ、食い込む度に、血飛沫が飛び、気絶させる激痛を味わせる。

「ああぁぁぁぁぁぁぁあ！！」

　クロイツは意識朦朧とし、首を傾げ、麻痺状態、木の枝に立つのもやっと。
　ヤマタノオロチの恍惚の笑みが黒眼に宿る。
　ヤマタノオロチも傷を負ったものの、自由を奪い、毒を注入した時点で、勝利は確定したようなものだ。
　だが、突如、こんな絶望的な状況にも関わらずクロイツは笑みを浮かべ、嘲笑う。

「フフフ」

「シャラァ？」

「……もう少しで先程矢に付加した寄生虫アビノカルテがお前の細胞を破壊する頃合いだ」

　その瞬間、ヤマタノオロチが突然、目を見張り、体内も見る見るうちに膨れ上がり、大破裂をし、緑の鱗が風によって、無惨に舞う。
　クロイツは千鳥足になりながらも、眼鏡を抑え、息を切らしながら、

「龍幹部もこの程度とはな……拍子抜けだ」