転生したらダンジョン雲になった訳

2章英雄と龍魔王

クロイツVS六龍

　既に他者に迷惑が掛からないように場面を移し、戦闘開始されていたのは、眼鏡を掛けた英雄と六の顔の緑の化け物である六龍獣（ヤマタノオロチ）の対決。
　六龍獣は高い空中を飛び回りながら、木々に身を隠すクロイツを追い詰める。
　クロイツはすぐさま、ヘルム（頭部）を構築し、白金の術者へと変貌を遂げる。
　六頭の首は変幻自在に、木々の間をすり抜け、あっという間にクロイツの懐に飛び込み、恐ろしい牙を攻撃する。
　だが、クロイツのアイテムのシールドで攻撃は遮断され、逆に、連続で投げられた氷結弾を食らってしまう。

「シャルァァァァァ」

「単調過ぎます」

　激痛が襲い、苦しむ六龍獣を高空で見上げるクロイツ。
　そして、クロイツは次なる攻撃を仕掛けようと、木々の枝を伝いながら、尋常ではない脚力と速度で、上へ上へ登っていく。
　ようやく、激痛が引いた六龍獣は姿が無いことに気づくも、全臭感覚という補助スキルによって、クロイツの位置を特定し、翼を羽ばたかせ、一直線に木々や葉っぱを巻き込みながら、上昇し、獲物を噛み殺す。

「シュルァァァァァァァ！」

　だが、しかし、噛み殺したのは野生の狸だった。
　血飛沫同時に、視界が隠れた瞬間後、罠が発動したのか、四方八方から一本槍が放たれ、六龍獣の黒両眼に命中する。
　六龍獣は翼を羽ばたかせ、身体を動かし、激痛に耐える。
　その怒りを糧に、ようやくクロイツを特定し、その瞬間、六炎の渦が龍のように進み、クロイツもろとも直撃する。
　
「あまい」
　
　だが、クロイツは既にシールドを完成させ、その六炎の渦を回避した。
　もちろん、六炎の渦が効果的でなかった訳ではない。
　それを示すのも、ここらの森林が上一直線に丸焦げなのだ。
　あまりの悔しさに六龍獣は咆哮する。
　弱い人間ごときにここまでの力を見せつけられ、悪の魔獣が耐えられるはずはない。
　その瞬間、六龍獣に反撃の決意が湧き上がり、黒い両眼は血の両眼に変貌する。
　クロイツは避難した木々の中で、全把握スキルを使い、その反撃の狼煙を感知する。
　
「まずいな……」
　
　クロイツはいち早くここから退避し、別の場所に罠を仕掛けてから攻撃を練る計画を瞬時に立てるが、突然、脚を掴まれ、自由を奪われた。

「これは」