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2章英雄と龍魔王

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  横に広がる凶暴な角、銀色の翼を羽ばたかせ、四足歩行の銀鹿。
 龍と鹿が合わさった銀色の魔獣。
【龍鹿《ドラゴンケンタウルス》】
 レベル700。第二龍。
 巨大な凶暴な角は当たれば相手を即死させる程の強さを持つ。
 
 獰猛な紅の両眼で、ティアを見下ろし、咆哮する。

「ギャァァァァァァァァァ!」

 ティアが両手に拳銃を装備し、発弾の準備は万全。
 一方、アタマカラは硬直し、なにより、フレッドは涙を浮かばせ、恐怖の表情で、ゆっくりと後退するも、灰色の赤ちゃんドラゴンに止められた。

「うわぁぁぁぁ!」

「……逃がさないもんね」
 
 羽が生え、猫ぐらいの大きさの赤ちゃんドラゴン。
 手にはヤリを持ち、口から迸る火の粉。
 悪の魔獣とは思えない、愛嬌のある顔と幼い声。
【ベイビードラゴン】
 レベル100。
 まだ、成長段階のために、完全体になった場合にどんな姿になるかは分からない。
 すると、先程まで怯えていたフレッドは見る見るうちに顔を綻ばせ、腹を抱えて、吹き出す。

「ぷっ……なんだよこいつ……赤ん坊かよ……ウハハハハ……おいおい怯えて損したわ」

「ぼくは赤ちゃんじゃないもん」

 モリを掲げて、膨れっ面、蒼い両眼をうるうるさせるベイビードラゴン。
 フレッドはあの作った笑みで、余裕満々な態度で、モリを取り上げる。

「おいおい、赤ん坊がそんな危ないもの持っちゃだめだろ」

「あーぼくの! お兄ちゃん返して! 返して!」

「だめだめ」

 あまりのフレッドの場違いな行動にティアは険しい形相で、苦言を下す。

「あんた何やってんのよ! 空気読みなさいよ!」

「あぁ? うるさいね。そんなにうるさいと、武器取り上げまちゅよ」

「あんた本当馬鹿なの?」

 そんな呆れる一同を無視し、暴走するフレッド。
 フレッドはモリを掲げながら、どこかの方角へと逃げるのだった。

「やーい、やーい、返して欲しかったら、取ってみな」
 
「待って! ぼくのだよそれ!」

 ベイビードラゴンは蒼い両眼から涙を垂らしながら、追い掛ける。
 ティアは溜め息付いた後、サファイアの眼で龍鹿を睨み、戦闘の合図が始まった。

「さて、雑魚もいなくなったし、うちら英雄の戦い見せるわ」
 
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