転生したらダンジョン雲になった訳

2章英雄と龍魔王

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 　その時、またもや怪物並の殺気を感じる。
　いや、イリスより何千倍もあろうか殺気と膨大な魔力を感じる。
　明らかに怪物すら、余裕で超える存在。
　
「ルークを倒したのは君かな？」

　二人の英雄の真ん中が開かれ、金髪で、豪奢な防具を装備した男がアタマカラにゆっくりと近づいた。
　冷徹なエメラルドの両眼はまるで、魔獣を殺す英雄。
　イリスはやはり、知っていたと理解し、まずいと思い、動き出すが、膨大な光の魔力によって完全停止。
　アタマカラは神々しさに目を見張り、硬直する。
　金髪の英雄の右手から眩い光の魔力ができ上がり、アタマカラの心臓を目掛けて、突き進もうとする。
　
「やめて！！」

　イリスの悲鳴のような声が響き渡るも、時は待ってはくれない。
　次の瞬間、金髪の英雄の男の右手は中間で停止し、相手を迎え入れた。

「僕はロイスだ。よろしく」

「あっ。俺はアタマカラです。よろしくお願いします」

「いい名前だ」

　ロイスは嘘か本音かは分からないが、笑みを向け、アタマカラを迎え入れた。
　場に安堵の息が漏れ、ティアがアタマカラに近づき、疑問の目を向ける。

「あんた……本当にルーク倒したの？」

「いや……」

「見たところ……あんた駆け出し冒険者だし、レベル０じゃない」

「まぐれというか……なんとか言うか」

　アタマカラは返答に困り、しどろもどろになる。
　そこへ、イリスが口下手な割に、彼を助ける。

「まぐれじゃない。私は見た」

　ティアは納得は言ってはないが、イリスがそう言うならと頷く。

「ふーん。そうなんだ。なら、今度はうちと勝負しなさい。分かったわねアタマカラ……」

「ああ、考えとくよ」

　アタマカラはそう言って、視線を上げると、ロイスと目が合う。
　ロイスは柔和な笑みで返し、

「イリスがあれほど、君のために、話するなんて初めて見るよ。イリスをよろしく頼むよ」

「もちろんです」

　あれはなんだろうか。
　エメラルドの両眼の奥から嫉妬のようなものを感じたのは。