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2章英雄と龍魔王

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「そんな決闘……私がさせない」

 イリスが意を決っし、戦いの中止を主張する。
 一方、フレッドが馬車の上にあぐらを掻いて、乗っかって、決闘を盛り上げる。

「面白そうじゃん! こりゃ見物だね! よぉ! 待ってました謎の白い男と英雄の対決」

「……」

 ムッとするイリスをよそに、アタマカラは剣を握り、前へ出る。
 
「戦う」

「駄目……」

 イリスの困惑した表情でアタマカラを引き留める。
 少し涙を浮かべながら、首を振るが、決闘は始まってしまう。
 そして、ルークは不適な笑みを浮かべ、青い剣を一振りし、開戦の風圧でアタマカラに浴びせる。
 風圧によって砂埃が舞い踊り、視界は不良となる。
 砂の壁を打ち破り、初撃を仕掛けたのはルーク。

「ああああぁぁぁぁぁ!」

 紺色の髪は乱れ、目を見張った狂気の男。
 そして、アタマカラを正面の青い突き出しするが、運良く白剣で防御される。

「フハハハハ……」

 ルークは更に追撃の連打を繰り出し、アタマカラを防戦一方にさせる。
 凄まじい連続の突きで青い閃光が迸る。

【青剣《せいけん》】
 極限の水の魔力を剣に纏らせ、あらゆるものを斬る。
 
「どうした? 避けてばかりではつまらないぞ!」

 アタマカラは挑発に返す余裕が無く、二、三歩、四歩と後退を招く。
 おそらく相手の剣は水の魔力を纏らせ、殺傷力を極限まで上げている。
 これほど美しい一閃は修業や鍛錬の成果だろう。
 果たして、勝てるのか……。
 そんな弱音が過ぎる。
 油断した隙にルークが懐に入り込み、凄まじい天への追撃がアタマカラの喉元を襲い、吹き飛ばした。
 アタマカラは宙を回り、落下し、背を激しく打ち付けられる。
 立てない。
 気づくと、下に水溜まりがあり、それが脚の自由を奪っていた。
 数分で、完敗だ。
 分かる。
 このまま続けても、圧倒的な攻撃力の前に平伏すことになることを。
 ルークは勝利を感じたのか、唐突に英雄の道を教える。

「英雄は厳しい死の訓練によって、ここまでの魔力をものにした。貴様のような底辺でくすぶり、堕落した奴とは天と地程違うと分かっただろ? いかに己が思い上がった人物かとな」

「……」

 言い返せる力が無い。
 そこで、まだ、決闘の中止を諦め切れないイリスが息を切らせながら、言う。

「こんなの無謀よ……もういい」
 
 
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