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2章英雄と龍魔王

英雄の自己紹介

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 そして、怒りを抑え込んだ紺髪の英雄が何食わぬ顔で、こちらにやってくる。
 乱れた前髪を上げ、平然を保ちながら、話掛ける。

「君、イリス様の知り合いかい?」

「ええ、まあというか。パーティーを組んだというか」

「……何」

 英雄は一瞬、絶句し、信じられないと云った表情をし、声を震わせる。

「へ……へぇ……そうか」

 明らかに動揺をしている。
 アタマカラは親しい仲ではないことは察するが、一応英雄との関係を知りたいためにイリスに耳打ち。

「その英雄さんと仲良いの?」

「知らない」

 どうやら、聞こえてるらしく、英雄はガクッと肩を落とす。
 
「一緒の英雄団に所属してるんだろ?」

「顔や名前……あんまり覚えられないから分からない」

「……そうか」

 イリスの人間嫌いというか、人間に対して興味の無さに唖然とするしかない。
 そして、英雄は居たたまれない状況を打開するべく、だいぶトーンダーンした笑いで、胸を張る。

「名家デューク族の長男であり、七英雄団の六英雄ルーク」
 
「帰るか」

「うん」

「あーあ。何か疲れちった。帰ろうぜ」

「話を聞けぇぇぇぇ!」

 お決まりの流れに、この上無く憤慨するルーク。
 頭に両手を乗せながら、だるそうな顔で、返答するフレッド。

「何さ……」

「とにかく、この中に入れるのは英雄であるイリス様だけだ。フンッ……底辺の豚商人……駆け出し冒険者、しかも、レベル0……誰がこの二人を通すというのだ! そんな奴が通したら、頭がおかしいとしか言いようがない」

 腐りきった思考から持たされる蔑みの言葉は三人を苛立させるも、これ以上交渉を続けても無意味だと分かり、帰宅することを決める。
 当初は頑なに進入すると言っていたフレッドも、面倒くなったのか、諦めを受け入れる。
 ルークがイリスに帰宅の龍車とこの先へ同行しようと持ち掛けるも、頑なに無視されて、終了した。
 ルークが地べたに肘を付き、砂利を掴み、悔しさを露わにする。
 そして、三人が馬車へ乗り込もうとしたその時、ルークの強烈な殺気と、冷徹な声で呼び止められた。

「待て……僕は大変な過ちを犯すところだった。英雄が魔獣を逃す? そんなことあってはならないんだよ」
 

 
 
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