上 下
142 / 177
2章英雄と龍魔王

a

しおりを挟む
 そして、玄関に明かりが唐突に光り、ネコルンはアタマカラに入るように促す。
 重厚な白い扉が視界に入る。

「すいません」

 室内はびっくりするぐらい静かで、誰も住んでいないと思えるくらいだ。
 もしかしたら、家の人は寝ているのかもしれない。
 まず、西洋風の広めの玄関に迎えられ、天井のシャンデリアが悲しく光っている。
 右側の薄暗い螺旋階段を登っていく。
 階段は幅が大きく、赤い絨毯が敷き詰められ、一般の家にはまず無いだろうと思える。
 それは、真新しいとは感じず、幾年か経過していると見られる。
 また、大きな巨大な窓から暗闇の外が映し出しされ、遠くにある尖塔が不気味に光り、家々の電光が散らばっているのが見える。
 階段を上がり終わると、そこに艶やかな長い銀髪をしたロリ顔の美女が眠っていた。
 眠る妖精。いや、眠る天使のようだ。
 パジャマ姿と見られる白い衣服を来て、壁に寄りかかりながらずっと待っていたようだ。
 その姿に可愛いと思ったのはアタマカラだけではない。
 ネコルンも目を細め、静かに微笑する。

「夜遅くまで待っていたのね」

「あの子って確か、今日キノコ駆除を手伝ってくれた……イリス」

「そうよ。それで、この家主があの子よ」

「え? じゃああの子がただでこの家に泊めてくれるの?」

 ネコルンはピクッとし、ちょっと待ったのポーズ。

「条件があるんだけど」

 アタマカラは小さく苦笑混じりに、頷く。

「それも……そうか」

「泊める代わりにイリスと一緒に冒険に行って欲しいの」

「冒険?」

 疑問に思うアタマカラ。
 
「そう。あの子いつも一人だから……心配なの」

 ネコルンのイリスを見つめる黒い両眼は母親のような、とても悲しげで、心配する気持ちが伝わった。
 ネコルンは流れる髪を掻き分け、アタマカラに再度をお願いする。

「いいかな?」

「自分は行くところは無いですし、構いませんよ」
 
 でも、なぜ、ろくに支援できそうにない自身なのかと聞こうと思ったが、ネコルンは先に行ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白の魔女の世界救済譚

月乃彰
ファンタジー
 ※当作品は「小説家になろう」と「カクヨム」にも投稿されています。  白の魔女、エスト。彼女はその六百年間、『欲望』を叶えるべく過ごしていた。  しかしある日、700年前、大陸の中央部の国々を滅ぼしたとされる黒の魔女が復活した報せを聞き、エストは自らの『欲望』のため、黒の魔女を打倒することを決意した。  そしてそんな時、ウェレール王国は異世界人の召喚を行おうとしていた。黒の魔女であれば、他者の支配など簡単ということを知らずに──。

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

捨てられた第四王女は母国には戻らない

風見ゆうみ
恋愛
フラル王国には一人の王子と四人の王女がいた。第四王女は王家にとって災厄か幸運のどちらかだと古くから伝えられていた。 災厄とみなされた第四王女のミーリルは、七歳の時に国境近くの森の中で置き去りにされてしまう。 何とか隣国にたどり着き、警備兵によって保護されたミーリルは、彼女の境遇を気の毒に思ったジャルヌ辺境伯家に、ミリルとして迎え入れられる。 そんな中、ミーリルを捨てた王家には不幸なことばかり起こるようになる。ミーリルが幸運をもたらす娘だったと気づいた王家は、秘密裏にミーリルを捜し始めるが見つけることはできなかった。 それから八年後、フラル王国の第三王女がジャルヌ辺境伯家の嫡男のリディアスに、ミーリルの婚約者である公爵令息が第三王女に恋をする。 リディアスに大事にされているミーリルを憎く思った第三王女は、実の妹とは知らずにミーリルに接触しようとするのだが……。

高飛車フィルリーネ王女、職人を目指す。

MIRICO
ファンタジー
大国グングナルド王女フィルリーネは、16歳の誕生日に隣国の王弟ルヴィアーレと婚約予定だ。 婚約の儀式を行うためにグングナルドに滞在することになったルヴィアーレ。お相手のフィルリーネは歓迎する素振りはなく、初見から嫌味を言ってきた。 しかも、フィルリーネは美しく聡明で芸術に秀でた王女という噂だったが、その実、美しさはあっても頓珍漢な言動をし、すぐ不機嫌になって部屋に引き籠もる勘違い王女だった。 対して、ルヴィアーレは噂通り美青年で文武両道。魔導に長けた完璧な男。 二人の性格が合うはずがない。フィルリーネは会うたび偉そうにして、おかしな言動をしてくる。 しかし、そこに意味があるとは、ルヴィアーレも気付かなかった。 言うべきではない内情をペラペラと喋ってくれればありがたい。ルヴィアーレは気楽な相手だと思っていたが、フィルリーネの勘違いな行動がルヴィアーレに違和感を覚えさせる。 彼女は本当に愚かで、何もできない、王に従順な王女なのだろうか? 突然城に現れる魔獣。独裁者グングナルド王に粛清される者たち。 精霊の恩恵を受けているこの世界。大国グングナルドでは精霊が減り始めていた。その原因が独裁を敷いている王だと、誰が気付いているだろうか。 この国は異常だ。 そんな中、フィルリーネの引き籠もり部屋に入り込むことに成功し、ルヴィアーレは驚愕した。 この部屋は、なんだ? 念の為R15です。 更新不定期。修正は誤字脱字等です。小説家になろう様で連載中。

処理中です...