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2章英雄と龍魔王

思わぬ人

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 店内に入ったきた人物は黒服に身を包んだ猫顔の女だった。
 茶色のカールがかかった髪を揺らし、額には大量の汗が滴り落ちていた。
 閉店間際に全力疾走で駆け込んできたのだろうか。
 いや、この顔どこかで見覚えがあるとアタマカラは目を細める。
 すると、先に反応したのはレイナだった。
 驚いた様子で、声を張り上げる。

「ネコルンさんそんなに急いでどうしたんですか!」

 先程の怒りの形相とは打って変わり、レイナは優しい顔で心配の情を向ける。
 ネコルンはレイナに顔を向けるかと思いきや、アタマカラに向け、乱れた呼吸を整え、大人のお姉さんと云った声を発する。

「宿屋ありますよ」

「え?」

 思わぬ発言に、アタマカラとレイナは固まって驚き、顔を見合わせる。
 すると、業を煮やしたネコルンは両手に拳を作り、再度はっきりと言った。

「だから私が宿屋手配します!」

「はい……ありがとうこざいますう!」

 アタマカラはようやく状況を飲み込んだのか、興奮して、ネコルンのふわふわの両手を握り締めてしまう。
 すかさず、レイナが目の前にあった竹刀をアタマカラに突きつけ、

「貧乏人……何どさくにまぎれて……女性の手を触ってる!」  

「えっ!」

 アタマカラは殺されるかと思い、慌てて離した。
 レイナは顰めっ面で、睨んだ姿はとても、女とは思えない。

「は? いま何か言った?」

「いや、何でもないです」

          *
 白い満月が暗闇に潜む城を照らし、その城下街の家々は明かりを消して、寝静まる頃合い。
 そんな中、白い巨兵と茶髪の猫女はようやく、門から北を進むと、三階建のレンガ造りの屋敷があった。
 割としっかりとした宿らしい。
 邸宅の左側には逆L字型の庭がある。
 しっかりと、手入れは行き届いており、短い草が綺麗に生えている。
 奥までは暗くては見えないが、大きな木の葉が揺れている。
 広いことは確かだろう。
 
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