138 / 177
2章英雄と龍魔王
夕陽
しおりを挟む
アタマカラは目立った反応が無いことに、溜め息をついて、空を見上げた。
丁度、太陽が真ん中に登った頃合いだった。
手を掲げて、太陽を掴むということで、この休憩の一時を過ごすかと考える。
しばらくして、空を見るのに飽きると、だんだんと眠気が襲ってきた。
下に生い茂る草が暖かくて気持ち良いのだ。
そして、アタマカラはうとうとしながら、寝てないけないと思い頭の位置を変えたりするが、イリスの美しい姿態に目を奪われ、眠りについてしまう。
*
だが、その心地良い眠りは突如として、強烈な冷たさによって醒めてしまう。
アタマカラは声を張り上げ、物凄いスピードで起き上がる。
「冷たぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
アタマカラは眼を見開き、何があったのか理解できず放心状態。
両手から防具越しではあるが、この冷たさの正体は滝から湧き出るような冷水だと分かる。
すると、上品な、小さな少女のような笑い方をする声がした。
「ふふふっ」
見上げると、銀髪の女ことイリスが口を隠して笑っているのだ。
側には空になったバケツが捨てられている。
アタマカラは白い両眼をムッとさせ、怒鳴る。
「冷たいじゃないか?」
「ごめんなさい……なんか……すやすや寝てるもんだから……腹が立ったの」
アタマカラが怒鳴っているので、反省したイリスは捨てられた子犬のような両眼で、そう言った。
アタマカラは女の子を泣かしては悪いと思い、慌てて怒りを沈める。
イリスは心配な紅の両眼で、傾げる。
「冷たい?」
「そりゃあ冷たいさ……防具着ているのになんで……」
事態が呑み込めていない様子のアタマカラに再度、イリスは笑いを漏らす。
それは、生まれて初めて笑ったようにぎこちなかった。
けれど、彼女らしくていいと思った。
「ふふふ」
「何がおかしいんだ?」
「……それはね……その水はこの池から採集できる水……グラード王国の名水……寒水《かんすい》と呼ばれているわ……とても栄養が採れるの」
イリスはこの故郷を愛しているのか、とても、幸せそうに語ってくれる。
アタマカラはイリスの笑顔に癒やされたのか、自然に笑みが零れてきた。
※
アタマカラはだいぶ寝ていたのか、もう夕刻を回っていた。
地平線にはオレンジの夕陽が半分だけになり、必死で輝きを残そうとしていた。
そんな二人はとぼとぼ、歩き、少し話をしながら、帰宅の途に移っていた。
イリスは下を向いて、影のある場所を歩きながら、無言だ。
アタマカラはこのまま沈黙を続けても、別に構わないが、逆にイリスがきまずいのではと思い、
「そういえば……毒キノコの採集終わったのか?」
イリスは待ってましたとばかりに顔を上げるも、それは表情には出さない。
「うん。終わった。あなたの分の報酬はちゃんと振り込まれているはず」
「え? 俺寝ていただけで、何もしてないじゃないか? 報酬貰っていいのか?」
アタマカラは不安な態度を取る。
一方、イリスは無表情な顔をアタマカラに顔を向けて、クスッと笑う。
「面白かったから……別にいいよ」
「面白いとは思えないが……」
「さあ……帰ろう」
イリスは後ろの夕陽を振り返り、美しい、涼しい顔でそう言った。
丁度、太陽が真ん中に登った頃合いだった。
手を掲げて、太陽を掴むということで、この休憩の一時を過ごすかと考える。
しばらくして、空を見るのに飽きると、だんだんと眠気が襲ってきた。
下に生い茂る草が暖かくて気持ち良いのだ。
そして、アタマカラはうとうとしながら、寝てないけないと思い頭の位置を変えたりするが、イリスの美しい姿態に目を奪われ、眠りについてしまう。
*
だが、その心地良い眠りは突如として、強烈な冷たさによって醒めてしまう。
アタマカラは声を張り上げ、物凄いスピードで起き上がる。
「冷たぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
アタマカラは眼を見開き、何があったのか理解できず放心状態。
両手から防具越しではあるが、この冷たさの正体は滝から湧き出るような冷水だと分かる。
すると、上品な、小さな少女のような笑い方をする声がした。
「ふふふっ」
見上げると、銀髪の女ことイリスが口を隠して笑っているのだ。
側には空になったバケツが捨てられている。
アタマカラは白い両眼をムッとさせ、怒鳴る。
「冷たいじゃないか?」
「ごめんなさい……なんか……すやすや寝てるもんだから……腹が立ったの」
アタマカラが怒鳴っているので、反省したイリスは捨てられた子犬のような両眼で、そう言った。
アタマカラは女の子を泣かしては悪いと思い、慌てて怒りを沈める。
イリスは心配な紅の両眼で、傾げる。
「冷たい?」
「そりゃあ冷たいさ……防具着ているのになんで……」
事態が呑み込めていない様子のアタマカラに再度、イリスは笑いを漏らす。
それは、生まれて初めて笑ったようにぎこちなかった。
けれど、彼女らしくていいと思った。
「ふふふ」
「何がおかしいんだ?」
「……それはね……その水はこの池から採集できる水……グラード王国の名水……寒水《かんすい》と呼ばれているわ……とても栄養が採れるの」
イリスはこの故郷を愛しているのか、とても、幸せそうに語ってくれる。
アタマカラはイリスの笑顔に癒やされたのか、自然に笑みが零れてきた。
※
アタマカラはだいぶ寝ていたのか、もう夕刻を回っていた。
地平線にはオレンジの夕陽が半分だけになり、必死で輝きを残そうとしていた。
そんな二人はとぼとぼ、歩き、少し話をしながら、帰宅の途に移っていた。
イリスは下を向いて、影のある場所を歩きながら、無言だ。
アタマカラはこのまま沈黙を続けても、別に構わないが、逆にイリスがきまずいのではと思い、
「そういえば……毒キノコの採集終わったのか?」
イリスは待ってましたとばかりに顔を上げるも、それは表情には出さない。
「うん。終わった。あなたの分の報酬はちゃんと振り込まれているはず」
「え? 俺寝ていただけで、何もしてないじゃないか? 報酬貰っていいのか?」
アタマカラは不安な態度を取る。
一方、イリスは無表情な顔をアタマカラに顔を向けて、クスッと笑う。
「面白かったから……別にいいよ」
「面白いとは思えないが……」
「さあ……帰ろう」
イリスは後ろの夕陽を振り返り、美しい、涼しい顔でそう言った。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?
渡琉兎
ファンタジー
学生ながらバイトをして色々な国へ旅行をしていた少女、三葉廻(みつばめぐる)
外国から帰る飛行機が突如としてエンジン停止、瞬く間に墜落して命を落としてしまう。
次元の狭間で出会った神様から、他の乗客は輪廻転生の道を進んだが、何故か私だけ異世界でダンジョン経営をさせられる羽目に!
得られたギフトもお粗末過ぎて怒り爆発寸前な廻が努力と負けん気だけで奮闘するダンジョン経営物語!
※カクヨム、ノベルアップ+にて掲載しています。
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
ドロップキング 〜 平均的な才能の冒険者ですが、ドロップアイテムが異常です。 〜
出汁の素
ファンタジー
アレックスは、地方の騎士爵家の五男。食い扶持を得る為に13歳で冒険者学校に通い始めた、極々一般的な冒険者。
これと言った特技はなく、冒険者としては平凡な才能しか持たない戦士として、冒険者学校3か月の授業を終え、最低ランクHランクの認定を受け、実地研修としての初ダンジョンアタックを冒険者学校の同級生で組んだパーティーでで挑んだ。
そんなアレックスが、初めてモンスターを倒した時に手に入れたドロップアイテムが異常だった。
のちにドロップキングと呼ばれる冒険者と、仲間達の成長ストーリーここに開幕する。
第一章は、1カ月以内に2人で1000体のモンスターを倒せば一気にEランクに昇格出来る冒険者学校の最終試験ダンジョンアタック研修から、クラン設立までのお話。
第二章は、設立したクラン アクア。その本部となる街アクアを中心としたお話。
第三章は、クラン アクアのオーナーアリアの婚約破棄から始まる、ドタバタなお話。
第四章は、帝都での混乱から派生した戦いのお話(ざまぁ要素を含む)。
1章20話(除く閑話)予定です。
-------------------------------------------------------------
書いて出し状態で、1話2,000字~3,000字程度予定ですが、大きくぶれがあります。
全部書きあがってから、情景描写、戦闘描写、心理描写等を増やしていく予定です。
下手な文章で申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。
薄幸ヒロインが倍返しの指輪を手に入れました
佐崎咲
ファンタジー
義母と義妹に虐げられてきた伯爵家の長女スフィーナ。
ある日、亡くなった実母の遺品である指輪を見つけた。
それからというもの、義母にお茶をぶちまけられたら、今度は倍量のスープが義母に浴びせられる。
義妹に食事をとられると、義妹は強い空腹を感じ食べても満足できなくなる、というような倍返しが起きた。
指輪が入れられていた木箱には、実母が書いた紙きれが共に入っていた。
どうやら母は異世界から転移してきたものらしい。
異世界でも強く生きていけるようにと、女神の加護が宿った指輪を賜ったというのだ。
かくしてスフィーナは義母と義妹に意図せず倍返ししつつ、やがて母の死の真相と、父の長い間をかけた企みを知っていく。
(※黒幕については推理的な要素はありませんと小声で言っておきます)
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる