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1章魔獣になりましょう

102話たわいもない話

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「なぜ、あんな場所にいた? ハハハハ……まさか、あの橋から落ちたって言うんじゃないだろうな?」

「……まあ」
 
 はっきりしないアタマカラ。
 すると、銀髪の男はそのアタマカラを冷たい態度だと受け取りふてくされ、一升瓶の酒を豪快に口に入れ、頬を真っ赤にし、陽気な感情になっていく。

「グビグビグビ……プハァ……」

 あまりの飲みっぷりに忠告するのは白いハットの帽子を被った男。
 口でむにゃむにゃと食べ物を食べながら、両手を叩き、冷たい声を発する。

「ハイデンベルク殿……その辺りにしといた方が宜しいのでは」

 ハイデンベルクは額を押さえ、しまったと後悔した表情をする。
 白いハットの男は呆れ顔で、スープを啜る。
 
「しまったぜぇ。昨日禁酒したばっかなのによ……なんて俺は馬鹿なんだ」

「禁酒、禁酒と言ってますけど、毎日欠かすことなく飲んでるじゃないですか。あなたは」

「うるせぇぞ……クリムト……ひくっ。よっしゃ今夜は酒三昧だぁ! なぁ雲ちゃんも飲もうぜ! な?」

「はぁ」

 ハイデンベルクの先程までの紳士的な男は一瞬で変わり、腹を叩いて、踊ったり、音痴な歌を披露し、アタマカラの唖然とした態度に大声で笑っていた。
 次第に、強風と雨は止み、ずっと覆い尽くしてどす黒い雲も消え、煌めく星が顔を出し始めてきた。
 ハイデンベルクは流れ星が見えたと子供のように騒ぎ立て、やがて、一升瓶を厚い胸板に抱き寄せ、いびきを立てながら眠ってしまった。
 そして、クリムトが落ち着いた頃合いを見計り、咳を鳴らし、乱れの無い声で語り掛ける。

「お名前を聞いてなかったですな?」

「アタマカラです」

「アタマカラ君は魔獣ですか? 人間ですか?」

「傍から見れば魔獣だと思います」

 アタマカラはその質問に疑問が生じたが、素直に答えた。
 クリムトは表情は笑っていたが、あの細い目は警戒をしていた。
 目を隠すように、ハットを下げる素振りをし、視線を逸らし、再度話し出す。

「けれど、あなたは人間ではないですか? 私の防具には観察眼という補助スキルが付いてます。このスキルがあれば、相手が魔獣か人間か分かるのです。魔獣のような雲の身体、だが精神は私達と同じ人間だ。何よりも、私達とこうやって意志疎通ができる」

「その通りだと思います」

 アタマカラはそう答えるしかなかった。自分には人間の青雲太郎という心がある。けれど、肉体は雲という魔獣なのだ。
 クリムトは人差し指を上げ、何か思いついたように視線を戻す。

「人間と魔獣が合わさった亜人なのかな?」

「たぶん」

 この世界の事は分からないが、博識そうなクリムトが言うのだから、そうなのだろう。
 アタマカラは話を繋き留めよう、弱々しい声を振り絞った。

「クリムトさんとハイデンベルクさんは何故ここに?」
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