102 / 177
1章魔獣になりましょう
102話たわいもない話
しおりを挟む
「なぜ、あんな場所にいた? ハハハハ……まさか、あの橋から落ちたって言うんじゃないだろうな?」
「……まあ」
はっきりしないアタマカラ。
すると、銀髪の男はそのアタマカラを冷たい態度だと受け取りふてくされ、一升瓶の酒を豪快に口に入れ、頬を真っ赤にし、陽気な感情になっていく。
「グビグビグビ……プハァ……」
あまりの飲みっぷりに忠告するのは白いハットの帽子を被った男。
口でむにゃむにゃと食べ物を食べながら、両手を叩き、冷たい声を発する。
「ハイデンベルク殿……その辺りにしといた方が宜しいのでは」
ハイデンベルクは額を押さえ、しまったと後悔した表情をする。
白いハットの男は呆れ顔で、スープを啜る。
「しまったぜぇ。昨日禁酒したばっかなのによ……なんて俺は馬鹿なんだ」
「禁酒、禁酒と言ってますけど、毎日欠かすことなく飲んでるじゃないですか。あなたは」
「うるせぇぞ……クリムト……ひくっ。よっしゃ今夜は酒三昧だぁ! なぁ雲ちゃんも飲もうぜ! な?」
「はぁ」
ハイデンベルクの先程までの紳士的な男は一瞬で変わり、腹を叩いて、踊ったり、音痴な歌を披露し、アタマカラの唖然とした態度に大声で笑っていた。
次第に、強風と雨は止み、ずっと覆い尽くしてどす黒い雲も消え、煌めく星が顔を出し始めてきた。
ハイデンベルクは流れ星が見えたと子供のように騒ぎ立て、やがて、一升瓶を厚い胸板に抱き寄せ、いびきを立てながら眠ってしまった。
そして、クリムトが落ち着いた頃合いを見計り、咳を鳴らし、乱れの無い声で語り掛ける。
「お名前を聞いてなかったですな?」
「アタマカラです」
「アタマカラ君は魔獣ですか? 人間ですか?」
「傍から見れば魔獣だと思います」
アタマカラはその質問に疑問が生じたが、素直に答えた。
クリムトは表情は笑っていたが、あの細い目は警戒をしていた。
目を隠すように、ハットを下げる素振りをし、視線を逸らし、再度話し出す。
「けれど、あなたは人間ではないですか? 私の防具には観察眼という補助スキルが付いてます。このスキルがあれば、相手が魔獣か人間か分かるのです。魔獣のような雲の身体、だが精神は私達と同じ人間だ。何よりも、私達とこうやって意志疎通ができる」
「その通りだと思います」
アタマカラはそう答えるしかなかった。自分には人間の青雲太郎という心がある。けれど、肉体は雲という魔獣なのだ。
クリムトは人差し指を上げ、何か思いついたように視線を戻す。
「人間と魔獣が合わさった亜人なのかな?」
「たぶん」
この世界の事は分からないが、博識そうなクリムトが言うのだから、そうなのだろう。
アタマカラは話を繋き留めよう、弱々しい声を振り絞った。
「クリムトさんとハイデンベルクさんは何故ここに?」
「……まあ」
はっきりしないアタマカラ。
すると、銀髪の男はそのアタマカラを冷たい態度だと受け取りふてくされ、一升瓶の酒を豪快に口に入れ、頬を真っ赤にし、陽気な感情になっていく。
「グビグビグビ……プハァ……」
あまりの飲みっぷりに忠告するのは白いハットの帽子を被った男。
口でむにゃむにゃと食べ物を食べながら、両手を叩き、冷たい声を発する。
「ハイデンベルク殿……その辺りにしといた方が宜しいのでは」
ハイデンベルクは額を押さえ、しまったと後悔した表情をする。
白いハットの男は呆れ顔で、スープを啜る。
「しまったぜぇ。昨日禁酒したばっかなのによ……なんて俺は馬鹿なんだ」
「禁酒、禁酒と言ってますけど、毎日欠かすことなく飲んでるじゃないですか。あなたは」
「うるせぇぞ……クリムト……ひくっ。よっしゃ今夜は酒三昧だぁ! なぁ雲ちゃんも飲もうぜ! な?」
「はぁ」
ハイデンベルクの先程までの紳士的な男は一瞬で変わり、腹を叩いて、踊ったり、音痴な歌を披露し、アタマカラの唖然とした態度に大声で笑っていた。
次第に、強風と雨は止み、ずっと覆い尽くしてどす黒い雲も消え、煌めく星が顔を出し始めてきた。
ハイデンベルクは流れ星が見えたと子供のように騒ぎ立て、やがて、一升瓶を厚い胸板に抱き寄せ、いびきを立てながら眠ってしまった。
そして、クリムトが落ち着いた頃合いを見計り、咳を鳴らし、乱れの無い声で語り掛ける。
「お名前を聞いてなかったですな?」
「アタマカラです」
「アタマカラ君は魔獣ですか? 人間ですか?」
「傍から見れば魔獣だと思います」
アタマカラはその質問に疑問が生じたが、素直に答えた。
クリムトは表情は笑っていたが、あの細い目は警戒をしていた。
目を隠すように、ハットを下げる素振りをし、視線を逸らし、再度話し出す。
「けれど、あなたは人間ではないですか? 私の防具には観察眼という補助スキルが付いてます。このスキルがあれば、相手が魔獣か人間か分かるのです。魔獣のような雲の身体、だが精神は私達と同じ人間だ。何よりも、私達とこうやって意志疎通ができる」
「その通りだと思います」
アタマカラはそう答えるしかなかった。自分には人間の青雲太郎という心がある。けれど、肉体は雲という魔獣なのだ。
クリムトは人差し指を上げ、何か思いついたように視線を戻す。
「人間と魔獣が合わさった亜人なのかな?」
「たぶん」
この世界の事は分からないが、博識そうなクリムトが言うのだから、そうなのだろう。
アタマカラは話を繋き留めよう、弱々しい声を振り絞った。
「クリムトさんとハイデンベルクさんは何故ここに?」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
私のスキルが、クエストってどういうこと?
地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。
十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。
スキルによって、今後の人生が決まる。
当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。
聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。
少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。
一話辺りは約三千文字前後にしております。
更新は、毎週日曜日の十六時予定です。
『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。
装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます
tera
ファンタジー
※まだまだまだまだ更新継続中!
※書籍の詳細はteraのツイッターまで!@tera_father
※第1巻〜7巻まで好評発売中!コミックス1巻も発売中!
※書影など、公開中!
ある日、秋野冬至は異世界召喚に巻き込まれてしまった。
勇者召喚に巻き込まれた結果、チートの恩恵は無しだった。
スキルも何もない秋野冬至は一般人として生きていくことになる。
途方に暮れていた秋野冬至だが、手に持っていたアイテムの詳細が見えたり、インベントリが使えたりすることに気づく。
なんと、召喚前にやっていたゲームシステムをそっくりそのまま持っていたのだった。
その世界で秋野冬至にだけドロップアイテムとして誰かが倒した魔物の素材が拾え、お金も拾え、さらに秋野冬至だけが自由に装備を強化したり、錬金したり、ゲームのいいとこ取りみたいな事をできてしまう。
【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~失われたギフト~
高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーの主人公は、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった!
主人公は、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく!
~失われたギフト~
旅を始めたララクは、国境近くの村でかつての仲間と出会うことに。
そして一緒に合同クエストを行うことになるが、そこで彼らは不測の事態におちいることに!
退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話
菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。
そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。
超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。
極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。
生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!?
これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。
毒素擬人化小説『ウミヘビのスープ』 〜十の賢者と百の猛毒が、寄生菌バイオハザード鎮圧を目指すSFファンタジー活劇〜
天海二色
SF
西暦2320年、世界は寄生菌『珊瑚』がもたらす不治の病、『珊瑚症』に蝕まれていた。
珊瑚症に罹患した者はステージの進行と共に異形となり凶暴化し、生物災害【バイオハザード】を各地で引き起こす。
その珊瑚症の感染者が引き起こす生物災害を鎮める切り札は、毒素を宿す有毒人種《ウミヘビ》。
彼らは一人につき一つの毒素を持つ。
医師モーズは、その《ウミヘビ》を管理する研究所に奇縁によって入所する事となった。
彼はそこで《ウミヘビ》の手を借り、生物災害鎮圧及び珊瑚症の治療薬を探究することになる。
これはモーズが、治療薬『テリアカ』を作るまでの物語である。
……そして個性豊か過ぎるウミヘビと、同僚となる癖の強いクスシに振り回される物語でもある。
※《ウミヘビ》は毒劇や危険物、元素を擬人化した男子になります
※研究所に所属している職員《クスシヘビ》は全員モデルとなる化学者がいます
※この小説は国家資格である『毒劇物取扱責任者』を覚える為に考えた話なので、日本の法律や規約を世界観に採用していたりします。
参考文献
松井奈美子 一発合格! 毒物劇物取扱者試験テキスト&問題集
船山信次 史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり
齋藤勝裕 毒の科学 身近にある毒から人間がつくりだした化学物質まで
鈴木勉 毒と薬 (大人のための図鑑)
特別展「毒」 公式図録
くられ、姫川たけお 毒物ずかん: キュートであぶない毒キャラの世界へ
ジェームス・M・ラッセル著 森 寛敏監修 118元素全百科
その他広辞苑、Wikipediaなど
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる