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1章魔獣になりましょう
94話酒呑鬼
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何が起きたとアタマカラは目を見張り、周囲を見上げ、狭く見渡す。
背後には、右手の拳銃で撃ち込んだ銃羊がいた。
けれども様子がおかしい。
目がうつらうつらとして、意識朦朧としている。
立つのもやっとなはずだということが想像に難くない。
それもそのはず、左腕がなかった。
引きちぎられたような状態で、血で侵食された肩だけ何とか生き残っていた。
アタマカラは目を逸らし、瞑ろうとするが、そうしている場合ではない。
虎帝が一瞬、よろめきながら、更なる痛みを殺し、発狂する。
口泡を撒き散らし、目の血管を異常に浮き出させ、目玉を飛び出すぐらいまで剥き出し、叫んだのだ。
周囲の木々はまるごと無くなって驚いた鳥や虫が更なる恐怖に目を剥き出して、死んだ。
虎の咆哮が並の魔獣が耳にしたならば、虎一強時代に虐げられた記憶が脳裏に蘇り、あまりの苦しさで死んでしまう。
それ程虎に脅えて日々を生きてきたのだろう。
「ガァァァァァァァァァァァァ!!!!」
銃羊はガッと目を剥き、小さく笑う。
驚きと共に称賛した表情。
「さすが……猛獣だ」
だが、その称賛は悲しいことに虎には届かない。
目は白く、我を失い、気絶したまま咆哮しているから、殊更恐怖でしかない。
これが、虎のもう一つの特性である。
【猛獣】
我を忘れ、全ての制限を解放し、また未知なる潜在能力でさえも解放してしまう危険な特性。その代わり、全ての能力値が恐ろしい値を示す。
言うまでもなく、寿命が縮み、多様すれば死ぬ。
殺戮のみに全力を注ぐ。このスキルによって、虎一強時代が続いたのも頷ける。
そして、猛獣は怒りの形相で、銃羊を見据えた瞬間、風の如しスピードで、荒れた山道を躍動する。
銃羊は銃で三撃目を放とうするが、無情にも、風の如し爪の斬り上げで、銃は空を舞い、落下した。
目の前で唸る猛獣は涎を垂らし、紳士の羊を舐めまわすように見た。
銃羊はガッと皺を寄せ、アタマカラに言い放つ。
「アタマカラ立て! 早く地蔵堂へ行け!」
アタマカラは痛みにこらえながら、立ち上がった、無言の頷きをし、前へ進んだ。
銃羊は納得して笑みを浮かべた。
だが、この状況で笑み浮かべるのはおかしいだろう。
楽しいと言える状況ではないはずだ。
まさか、この猛獣を倒せるとっておきの必殺技を隠し持っている笑みか。
それとも、死期を悟り、もう思い残すことはないという笑みなのか。
それは分からない。
ただ、猛獣となった虎に生きて帰ってこられた魔獣はこの領域一帯ではいないということ。
その笑みで見上げることは猛獣の逆鱗に触れた。
口から緑の閃光を吐き、音もなく視界は明滅し、瞬く間に一線が銃羊の頭丸ごとを粉砕した。
静寂が訪れた後、猛獣の凶器の絶叫が山の中に響いた。
強烈な光とその声を背に感じたアタマカラ。
銃羊が死んだと直感した。
いや、即座に否定した。
背後には、右手の拳銃で撃ち込んだ銃羊がいた。
けれども様子がおかしい。
目がうつらうつらとして、意識朦朧としている。
立つのもやっとなはずだということが想像に難くない。
それもそのはず、左腕がなかった。
引きちぎられたような状態で、血で侵食された肩だけ何とか生き残っていた。
アタマカラは目を逸らし、瞑ろうとするが、そうしている場合ではない。
虎帝が一瞬、よろめきながら、更なる痛みを殺し、発狂する。
口泡を撒き散らし、目の血管を異常に浮き出させ、目玉を飛び出すぐらいまで剥き出し、叫んだのだ。
周囲の木々はまるごと無くなって驚いた鳥や虫が更なる恐怖に目を剥き出して、死んだ。
虎の咆哮が並の魔獣が耳にしたならば、虎一強時代に虐げられた記憶が脳裏に蘇り、あまりの苦しさで死んでしまう。
それ程虎に脅えて日々を生きてきたのだろう。
「ガァァァァァァァァァァァァ!!!!」
銃羊はガッと目を剥き、小さく笑う。
驚きと共に称賛した表情。
「さすが……猛獣だ」
だが、その称賛は悲しいことに虎には届かない。
目は白く、我を失い、気絶したまま咆哮しているから、殊更恐怖でしかない。
これが、虎のもう一つの特性である。
【猛獣】
我を忘れ、全ての制限を解放し、また未知なる潜在能力でさえも解放してしまう危険な特性。その代わり、全ての能力値が恐ろしい値を示す。
言うまでもなく、寿命が縮み、多様すれば死ぬ。
殺戮のみに全力を注ぐ。このスキルによって、虎一強時代が続いたのも頷ける。
そして、猛獣は怒りの形相で、銃羊を見据えた瞬間、風の如しスピードで、荒れた山道を躍動する。
銃羊は銃で三撃目を放とうするが、無情にも、風の如し爪の斬り上げで、銃は空を舞い、落下した。
目の前で唸る猛獣は涎を垂らし、紳士の羊を舐めまわすように見た。
銃羊はガッと皺を寄せ、アタマカラに言い放つ。
「アタマカラ立て! 早く地蔵堂へ行け!」
アタマカラは痛みにこらえながら、立ち上がった、無言の頷きをし、前へ進んだ。
銃羊は納得して笑みを浮かべた。
だが、この状況で笑み浮かべるのはおかしいだろう。
楽しいと言える状況ではないはずだ。
まさか、この猛獣を倒せるとっておきの必殺技を隠し持っている笑みか。
それとも、死期を悟り、もう思い残すことはないという笑みなのか。
それは分からない。
ただ、猛獣となった虎に生きて帰ってこられた魔獣はこの領域一帯ではいないということ。
その笑みで見上げることは猛獣の逆鱗に触れた。
口から緑の閃光を吐き、音もなく視界は明滅し、瞬く間に一線が銃羊の頭丸ごとを粉砕した。
静寂が訪れた後、猛獣の凶器の絶叫が山の中に響いた。
強烈な光とその声を背に感じたアタマカラ。
銃羊が死んだと直感した。
いや、即座に否定した。
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