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1章魔獣になりましょう

88話執念

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「螢の一匹は塵に等しく、無力な存在で、ただの汚い虫だわ。私も昔は嫌いだった。でも、たくさん集まれば、螢は怪物の力を発揮し、こんな風に美しくあることができるのよ」

 すると、銃羊はそれを無視し、面食らうアタマカラと地蔵に告げる。

「早く行けっ!」

「だが……」

 アタマカラはこのまま、銃羊を残したまま立ち去っていいのかという迷いの思考へと入り始める。
 しかし、何の躊躇もなく地蔵は頷き、進んだ。

「我は行く!」

 大地蔵の頭の中には大事な一族の地蔵達を救うことしか頭に無かった。
 それもそのはずだ。
 彼はそのためにここにやってきた、この場で迷い躊躇して、立ち止まっている場合ではない。
 時は一刻の猶予もない。
 たとえ、可愛がってる銃羊を失っても、一族には勝るものはない。
 けれども、アタマカラは未だに迷っていた。
 人間である彼は迷った。
 仮に、虫女とここで闘って、勝てるのか。
 勝てない。
 いや、分からないというのが現状。ひょっとしたら、勝てるかもしれない。
 そんな一抹の望みはある。
 だが、そんな望みを優しく拒否する銃羊。彼は紳士的な笑顔する。

「アタマカラ……何を迷うことがありますか……悪の魔獣なら屍を踏んで進みなさい。たとえ、仲間が……肉親が死のうとも……己の欲望を欲っするままに進め」

 最後は語気を強めた。
 せっかくこっちが何とかしようと思っているのに。
 だったら、なぜそんな悲しい顔をするんだよ。
 いっそのこと悪態をついてくれれば、後腐れがなく、一心不乱に進めていた。
 これじゃ、自責の念に駆られ、後悔しまくりだ。
 やはり、魔獣は相手を思いやる気持ちはないのかもしれない。
 そして、アタマカラは涙をこらし、進んだ。
 すると、銃羊は後悔した背中を見せるアタマカラに何かを察したのか、いつも通りの紳士さを取り戻し、発する。

「アタマカラ……あなたは馬鹿です。後ろめたいだなんて思わないでくれ。僕はカイザー先輩の無念を必ず晴すまで死なないと決めているんだ。この危機的を状況を逃れる策はいくつかあるんだ。なにせ、九番隊隊長だから」
 
 銃羊は己の復讐のためにここまでやってきた。
 それは地蔵だって、アタマカラだってそうなのだ。
 己の信念を貫くために、前へ進まなければならない。
  
 
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