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1章魔獣になりましょう
83話地蔵堂へ
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弱々しい地蔵はそう洩らす。
そこで、細い目で反論する銃羊。
「地蔵様はそんなことはとっくに理解している。虫女が口出すことではない」
「……私に随分な口の聞き方ね……あなた程度いつでも殺せるのよ」
「そうですか。ではこの際言わせてもらいます。虫女様は何を企んでいらっしゃいます?」
「どういう意味ですか? 銃羊さん」
虫女は妖艶な唇で小指を舐め回し、悪女のように首を傾げ、視線で銃羊を捉えた。
視線を頑なに逸らさず、針金のような長い髪の毛が揺らぎ、次の言動次第では死を覚悟しろという脅しでもあった。
銃羊もここで、怖じ気づいてはいけない。
カイザーの無念を晴らしたいという思いが彼に闘志の火をつけさせる。
その闘志の炎を内に秘め、紳士的な表情で対応する。
「なぜ、先程うちの部下であるアタマカラを庇ったのですか?」
「気紛れですよ」
「あなた程残忍で、裏切り者の御方が名も知らぬ部下を助けるはずがない……しかも、このアタマカラが僕の部下でないことは容易に分かったはずだ」
「ふふふ……思惑が分かったからと云って私と戦うつもりですか? 私はいいですよ、ここであなた達全員を殺してもね……」
「……やりますか」
「いい加減にしなさい」
その険悪な雰囲気に一喝する地蔵。
ここで、やり合っても仕方ないと訴える。
また、自らのせいで殺し合うのも納得がいかないのだ。
「とにかく進め……我なら大丈夫だ……ありたっけの魔力を使用してでも……我が子を救う」
やがて、地蔵堂の山の入口へとたどり着いた。
もう既に虎帝達の姿はどこにもない。
ただ、不気味な入り口であることは確かだ。
血の塗られた、書き殴りの看板。
自然の中に作られた有刺鉄線が入り口を封鎖して、ここからは立ち入り禁止であること分かる。
その有刺鉄線から微細な電気がパチパチと唸っているが、恐れるに足らない。
しかも、誰かが無理矢理侵入したと見られる円形の穴ができていて、管理が行き届いていない。
もしかしたら、虎帝達がこの穴を開けたのかと思ったが、体長2メートル台の虎がこのような小さな穴から侵入するのは考えにくだろう。
小さな後目ならば、行けるだろうが。
おそらく、跳躍力を生かして、この有刺鉄線を跳び越えたに違いない。
跳躍力の低そうな後目がどう跳び越えたかは定かではないが。
そこで、心配するなと豪語する地蔵が前へと出る。何か秘策の技でもあるのだろうか。
地蔵は自身の岩の身体に集中し、前へゆっくりと進み、両手に力を込め、その鉄線に穴を開けようと試みる。
だが、思った以上に鉄線の電気が強く、地蔵の全身に流れる。
「ウォォォォォォォォォォ!!!!」
そこで、細い目で反論する銃羊。
「地蔵様はそんなことはとっくに理解している。虫女が口出すことではない」
「……私に随分な口の聞き方ね……あなた程度いつでも殺せるのよ」
「そうですか。ではこの際言わせてもらいます。虫女様は何を企んでいらっしゃいます?」
「どういう意味ですか? 銃羊さん」
虫女は妖艶な唇で小指を舐め回し、悪女のように首を傾げ、視線で銃羊を捉えた。
視線を頑なに逸らさず、針金のような長い髪の毛が揺らぎ、次の言動次第では死を覚悟しろという脅しでもあった。
銃羊もここで、怖じ気づいてはいけない。
カイザーの無念を晴らしたいという思いが彼に闘志の火をつけさせる。
その闘志の炎を内に秘め、紳士的な表情で対応する。
「なぜ、先程うちの部下であるアタマカラを庇ったのですか?」
「気紛れですよ」
「あなた程残忍で、裏切り者の御方が名も知らぬ部下を助けるはずがない……しかも、このアタマカラが僕の部下でないことは容易に分かったはずだ」
「ふふふ……思惑が分かったからと云って私と戦うつもりですか? 私はいいですよ、ここであなた達全員を殺してもね……」
「……やりますか」
「いい加減にしなさい」
その険悪な雰囲気に一喝する地蔵。
ここで、やり合っても仕方ないと訴える。
また、自らのせいで殺し合うのも納得がいかないのだ。
「とにかく進め……我なら大丈夫だ……ありたっけの魔力を使用してでも……我が子を救う」
やがて、地蔵堂の山の入口へとたどり着いた。
もう既に虎帝達の姿はどこにもない。
ただ、不気味な入り口であることは確かだ。
血の塗られた、書き殴りの看板。
自然の中に作られた有刺鉄線が入り口を封鎖して、ここからは立ち入り禁止であること分かる。
その有刺鉄線から微細な電気がパチパチと唸っているが、恐れるに足らない。
しかも、誰かが無理矢理侵入したと見られる円形の穴ができていて、管理が行き届いていない。
もしかしたら、虎帝達がこの穴を開けたのかと思ったが、体長2メートル台の虎がこのような小さな穴から侵入するのは考えにくだろう。
小さな後目ならば、行けるだろうが。
おそらく、跳躍力を生かして、この有刺鉄線を跳び越えたに違いない。
跳躍力の低そうな後目がどう跳び越えたかは定かではないが。
そこで、心配するなと豪語する地蔵が前へと出る。何か秘策の技でもあるのだろうか。
地蔵は自身の岩の身体に集中し、前へゆっくりと進み、両手に力を込め、その鉄線に穴を開けようと試みる。
だが、思った以上に鉄線の電気が強く、地蔵の全身に流れる。
「ウォォォォォォォォォォ!!!!」
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