上 下
70 / 177
1章魔獣になりましょう

70話鬼団を潰せ

しおりを挟む
 森林を抜けると崖が見えてきて、そこに闇のように暗い奈落の底がある。
 命綱を引き受けるのが崖と崖を繋ぐ一本の簡素な橋。
 下から冷たい突風が吹き抜け、橋を左右に揺らし、一部分が壊れ、木材が奈落の底へと、叫び声を上げながら落下していく。
 その橋の入り口で待っていたのは、頬にそばかすのある、銃羊《スリーパー》。
 格好つけたように手を上げ、一度目を見張ったものの、軽く微笑む。
 似非紳士を演じているのだろうか。

「お別れは済んだかい?」

「ああ。言っとくがお前を信用した訳じゃないからな」

「それで良い。僕の望みは鬼団の壊滅だけだ」

「で? どうする?」

「これから廃墟の跡地へ行き、中層会議に参加する。この中層会議では5番隊から九番隊の隊長が一同に会する。その5番隊の隊長に四鬼との謁見を承諾させることだ」

「なぜその5番隊隊長なんだ?」

「どうやらこいつは三鬼と頻繁に接触図っているらしい、おそらく昇格絡みのことだろう。鬼団内部では昇格争いが激しい。なお、四鬼の選定となると、苛烈を極める。他から呼び込むことがあるからな」

「それは分かったが……お前の筋書きなんだ」

「もちろん、最終目標は鬼団の壊滅。そのためには四鬼全員を始末する必要がある」

「俺達二人でそれは可能なのか?」

「正直言って望みは薄いだろう。だが、あんたは恐熊を倒した程の実力がある。その実力があれば四鬼の内一人は倒せる。それでも鬼団に大打撃を与えることができる。そして、それは鬼団内部でも不信感を招き、反抗を示す者も現れ、内部分裂も避けられない。そうなれば、他の共食いや敵対する一族が鬼団に攻撃を仕掛けているのは確かだ」

「お前はそれを狙ってる訳か」

「到底僕達二人では出来ない。だから、念入りに準備はしているつもりだ」
 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

婚約破棄を成立させた侯爵令嬢~自己陶酔の勘違い~

鷲原ほの
ファンタジー
侯爵令嬢マリアベル・フロージニス主催のお茶会に咲いた婚約破棄騒動。 浮気な婚約者が婚約破棄を突き付けるところから喜劇の物語は動き出す。 『完結』

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

白の魔女の世界救済譚

月乃彰
ファンタジー
 ※当作品は「小説家になろう」と「カクヨム」にも投稿されています。  白の魔女、エスト。彼女はその六百年間、『欲望』を叶えるべく過ごしていた。  しかしある日、700年前、大陸の中央部の国々を滅ぼしたとされる黒の魔女が復活した報せを聞き、エストは自らの『欲望』のため、黒の魔女を打倒することを決意した。  そしてそんな時、ウェレール王国は異世界人の召喚を行おうとしていた。黒の魔女であれば、他者の支配など簡単ということを知らずに──。

最難関ダンジョンで裏切られ切り捨てられたが、スキル【神眼】によってすべてを視ることが出来るようになった冒険者はざまぁする

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【第15回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作】 僕のスキル【神眼】は隠しアイテムや隠し通路、隠しトラップを見破る力がある。 そんな元奴隷の僕をレオナルドたちは冒険者仲間に迎え入れてくれた。 でもダンジョン内でピンチになった時、彼らは僕を追放した。 死に追いやられた僕は世界樹の精に出会い、【神眼】のスキルを極限まで高めてもらう。 そして三年の修行を経て、僕は世界最強へと至るのだった。

処理中です...