64 / 177
1章魔獣になりましょう
66話鬼団隊長銃羊
しおりを挟む
驚き、振り向くシエラ。
けれども、今は一刻の猶予もないのだ。
すぐに、視線は羊女スパイへ集まる。
恐怖の存在である恐熊はもう存在しないと告げたにも関わらず、羊女スパイの異常なまで恐怖の表情は変わらない。
しかも、より一層ガタガタと震えるばかりである。
不幸を告げられ、絶望の表情に変わっていた。
「恐熊が死んだらまずいの。まずいの。まずいのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「なせだ?」
「恐熊が死んだら、私達のきよかわ村に棲む羊族の支配権は鬼団が握ることになるわ……そんなこと絶対にあってはならないのよぉぉぉぉぉぉ! もし、そうなったら交渉せずに全員殺されるのぉぉぉぉ!! 今までも奴隷を何人か差し出して何とか一族が存続してきたのよ!! 話なんて通じる相手じゃないのよぉぉぉぉぉぉ!!」
狂乱に満ち、思わず羊女スパイは手を放し、カエラを放ってしまう。カエラはいち早く走り出す。
しかし、直ぐに羊女スパイは転がり落ちた銃を取り上げ、カエラ目が掛けて、銃を構える。
その瞬間、羊女スパイの異常な笑みが脳裏に焼き付き、引き金を引いて放った。
「パンッッッッ!!!!」
アタマカラは助けようとしたが、動けなかった。
先程の恐熊の戦闘で、ほとんどの体力は残っていなかった。
一方、シエラはカエラをいち早く抱き寄せようと迎えるも、後ろで向けられ、放たれた銃弾が顔をひきつらせる。
やめてと叫ぼうとする少女。
しかし、その願いは儚く散って、母親は哀しみの笑顔で、重く、前へ倒れた。
やがて、血が滲み出し、どろどろとした液へ変わっていく。
あっと言う間に血溜まりが出来る。
少女は唖然とし、首を傾げ、その場で崩れ落ちる。
「……あ…………」
一瞬の静寂の後、羊女スパイの狂乱した笑い声がこの場を震撼させる。
アタマカラは絶句し、この状況を理解出来ずに硬直する。
しかし、時は止まることを許さない。
その時、再度、耳の痛くなる発砲音が鳴った。
悪夢を再現するかのように、羊女スパイの右胸に銃弾が貫かれ、奇怪に笑いながら前へ倒れた。
その笑い声に合わせて、別の声の主の笑い声が後ろから聞こえる。
その声の主がその羊女スパイを撃ったのだろう。
後ろを振り返ると、そこには羊の男がいた。
頬に汚いそばかすがあり、耳は前へ垂れ、縮り毛の男。
見覚えのある顔だった。
目覚めた時に、カエラやミエの居場所を教えた羊族の男。
しかし、弱々しかったはずの表情はすっかり消え、強い隈が際立ち、悪徳な表情に変わる。
その者は右手に銃をカチッとセットし、アタマカラの額に向けた。
その瞬間、アタマカラは必死で叫ぶ。
「シエラァァァァァァァア!!」
シエラは呆然とした様子で血を流す母親を抱き寄せる。
母親の弱々しい表情、まだ息はある。
母はまだ助かる。
まだその一縷の希みあると思い、がっと涙が流れ出し、首を左右に振り、すぐさま母親を肩に乗せ、この場から立ち去る。
その様子をじっと黙認する羊男。気持ち悪い余裕な笑み。
「どうする気だ?」
「あの子達には用はない。あるのは君ですよ。アタマカラさんとおっしゃいましたか?」
「お前は一体誰で、何が目的なんだ!」
「申し遅れました……鬼団九番隊隊長銃羊《スリーパー》でこざいます」
けれども、今は一刻の猶予もないのだ。
すぐに、視線は羊女スパイへ集まる。
恐怖の存在である恐熊はもう存在しないと告げたにも関わらず、羊女スパイの異常なまで恐怖の表情は変わらない。
しかも、より一層ガタガタと震えるばかりである。
不幸を告げられ、絶望の表情に変わっていた。
「恐熊が死んだらまずいの。まずいの。まずいのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「なせだ?」
「恐熊が死んだら、私達のきよかわ村に棲む羊族の支配権は鬼団が握ることになるわ……そんなこと絶対にあってはならないのよぉぉぉぉぉぉ! もし、そうなったら交渉せずに全員殺されるのぉぉぉぉ!! 今までも奴隷を何人か差し出して何とか一族が存続してきたのよ!! 話なんて通じる相手じゃないのよぉぉぉぉぉぉ!!」
狂乱に満ち、思わず羊女スパイは手を放し、カエラを放ってしまう。カエラはいち早く走り出す。
しかし、直ぐに羊女スパイは転がり落ちた銃を取り上げ、カエラ目が掛けて、銃を構える。
その瞬間、羊女スパイの異常な笑みが脳裏に焼き付き、引き金を引いて放った。
「パンッッッッ!!!!」
アタマカラは助けようとしたが、動けなかった。
先程の恐熊の戦闘で、ほとんどの体力は残っていなかった。
一方、シエラはカエラをいち早く抱き寄せようと迎えるも、後ろで向けられ、放たれた銃弾が顔をひきつらせる。
やめてと叫ぼうとする少女。
しかし、その願いは儚く散って、母親は哀しみの笑顔で、重く、前へ倒れた。
やがて、血が滲み出し、どろどろとした液へ変わっていく。
あっと言う間に血溜まりが出来る。
少女は唖然とし、首を傾げ、その場で崩れ落ちる。
「……あ…………」
一瞬の静寂の後、羊女スパイの狂乱した笑い声がこの場を震撼させる。
アタマカラは絶句し、この状況を理解出来ずに硬直する。
しかし、時は止まることを許さない。
その時、再度、耳の痛くなる発砲音が鳴った。
悪夢を再現するかのように、羊女スパイの右胸に銃弾が貫かれ、奇怪に笑いながら前へ倒れた。
その笑い声に合わせて、別の声の主の笑い声が後ろから聞こえる。
その声の主がその羊女スパイを撃ったのだろう。
後ろを振り返ると、そこには羊の男がいた。
頬に汚いそばかすがあり、耳は前へ垂れ、縮り毛の男。
見覚えのある顔だった。
目覚めた時に、カエラやミエの居場所を教えた羊族の男。
しかし、弱々しかったはずの表情はすっかり消え、強い隈が際立ち、悪徳な表情に変わる。
その者は右手に銃をカチッとセットし、アタマカラの額に向けた。
その瞬間、アタマカラは必死で叫ぶ。
「シエラァァァァァァァア!!」
シエラは呆然とした様子で血を流す母親を抱き寄せる。
母親の弱々しい表情、まだ息はある。
母はまだ助かる。
まだその一縷の希みあると思い、がっと涙が流れ出し、首を左右に振り、すぐさま母親を肩に乗せ、この場から立ち去る。
その様子をじっと黙認する羊男。気持ち悪い余裕な笑み。
「どうする気だ?」
「あの子達には用はない。あるのは君ですよ。アタマカラさんとおっしゃいましたか?」
「お前は一体誰で、何が目的なんだ!」
「申し遅れました……鬼団九番隊隊長銃羊《スリーパー》でこざいます」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
黒猫な俺の異世界生活とおっさんな俺の現代生活が楽しくてたまらない!
TB
ファンタジー
奥田俊樹(42歳)バツイチ子供一人(親権は元嫁)
父が亡くなり、実家の倉庫を整理していると、見慣れない地下室があるのを発見した。
興味本位で降りてみると……
どうなる俺?
いつでも戻れる系ファンタジー作品です。
◇◆◇◆
この物語は、あくまでも作者の妄想作品ですので、現実と似た感じがしても架空のお話ですので、激しい突っ込みはご勘弁ください。
作中では推敲大事と言っておきながら、本作品はあまり推敲が為されておりません。
誤字脱字等ございましたら、報告よろしくお願いいたします。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜
蒼月丸
ファンタジー
「アークスレイヤー」という悪の組織が、次々と多くの次元を侵略し、滅ぼしていくという危機的な状況が発生。
全ての次元が彼らによって占拠される前に立ち向かうため、神々のリーダーであるカーンは8人の戦士を集める事を神々達に説明。彼等はそれぞれの選ばれし戦士達を探しに向かい出した。
そんな中、プロレスラーを目指すサラリーマンの東零夜は、夢の中で幼馴染のダンサーの春川ミミ、女優レスラーの藍原倫子、歌のお姉さんの国重ヒカリ、ワーウルフのエヴァ、エルフのアミリス、竜人のソニア、転生偉人のジャンヌ、そして女神メディアと出会う。彼等はアークスレイヤーに立ち向かい、次元を救うための壮大な冒険に旅立つのだった……
南総里見八犬伝を元にしたハイファンタジーバトル。神に選ばれた8人の戦士達が、様々な力を駆使しながら、仲間達と共にアークスレイヤーとの壮絶な戦いに挑む。
果たして彼らはアークスレイヤーを倒し、次元を救うことができるのか?エキサイティングなファンタジーアドベンチャー、開幕!
※なろう、Nolaノベルでも作品を投稿しましたので、宜しくお願いします!
宣伝用Twitter
https://twitter.com/@Souen_Gekka
捨てられた第四王女は母国には戻らない
風見ゆうみ
恋愛
フラル王国には一人の王子と四人の王女がいた。第四王女は王家にとって災厄か幸運のどちらかだと古くから伝えられていた。
災厄とみなされた第四王女のミーリルは、七歳の時に国境近くの森の中で置き去りにされてしまう。
何とか隣国にたどり着き、警備兵によって保護されたミーリルは、彼女の境遇を気の毒に思ったジャルヌ辺境伯家に、ミリルとして迎え入れられる。
そんな中、ミーリルを捨てた王家には不幸なことばかり起こるようになる。ミーリルが幸運をもたらす娘だったと気づいた王家は、秘密裏にミーリルを捜し始めるが見つけることはできなかった。
それから八年後、フラル王国の第三王女がジャルヌ辺境伯家の嫡男のリディアスに、ミーリルの婚約者である公爵令息が第三王女に恋をする。
リディアスに大事にされているミーリルを憎く思った第三王女は、実の妹とは知らずにミーリルに接触しようとするのだが……。
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる