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1章魔獣になりましょう

65話裏切り者

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 その後、アタマカラは恐熊を倒し、シエラを追った。
 森林の道の途中で、ミエと幼い仔羊達が木の陰で隠れていたのを見つけ、そこで、探しに来た羊村の男にその子達を任せた。
 前を更に進むと、女同士の言い争いの声が聞こえてきた。
 その先に、カエラは羊女スパイに銃を顔に突きつけられ、一方、シエラはどうにか救おうとナイフで対抗をしている。
 羊女の陰鬱な両眼、灰色髪、顔面のパーツが全て小さく、少し顎が歪み、その顎にはセクシーな黶、決して美しくはない顔だろう。
 笑うと見栄えの良くない歯が見える。

「きぇぇぇぇぇぇぇ……カエラ……お……おとなしくしてれば、殺さないから、静かにしてぇぇぇぇぇよ!!」

「やめて? 離して!」

「母さんを離せ!」

「なんなんのよ!! おとなしくして言ってるでしょょょ!!」

「母さん心配しないで、今すぐ助けるから」

「シエラ……来ては駄目よ……駄目」

 母親を奪還すべく様子を窺うシエラ。
 一方、挙動不審に、終始落ち着かない様子の羊女スパイ。
 その女は何かに怯え、それはまるで先程までのシエラと同様だった。
 彼女もおそらく奴隷契約を恐熊と交わしたのであろうか。
 ところが、その考えは突如現れたアタマカラによって否定される。
 強敵を倒し、生還した戦士の顔が映える。

「恐熊は死んだ。その人を捕らえる必要はないはずだ」

「アタマカラ……」
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