46 / 177
1章魔獣になりましょう
46話失態
しおりを挟む
「ふふふ……あなたがいけないのよ」
「どうして……どうして」
「あなたが人間の臭いを漂わせてるからよ」
「それは……」
アタマカラは激しい背中の痛みで言葉はおろか、意識すらはっきりしない。
一方、鬼童子は驚きはなく、ただ冷静に事の次第を収集に努めようとする。
「ヤハリ……キサマモ……クマイチゾクノスパイか……」
「……」
「アノトキ……コロシテオケバヨカッタ」
しかし、鬼童子には答えない。
百熊一族達も鬼童子の能力は熟知しているため、いないかのように扱っている。
そして、シエラが起き上がろうとするアタマカラの右手を踏み、再起を妨害する。
「あなたを殺さないと……私が殺されちゃうの」
「俺が……助け」
「気持ち悪い……人間になんて助けられたくないの!!」
シエラはしゃがみこみ、狂気の顔で訴え、ナイフでアタマカラの背中を何度も刺し、その傷口から苦しみの叫ぶ声を響かせた。
アタマカラが動こうとする度に何度も何度も、凶器のナイフを振り下ろして、血肉まで刺し、血飛沫を発生させる。
シエラの人間への恨みはどこまでも深く、アタマカラが知らない辛い過去なのだろう。
きっと、彼女は誰からも救われず今まで生きてきたのだろうか。
だとしたら、彼女を責めるのは違うだろう。
それはこのような彼女にさせてしまった奴に裁きを下すべきだ。
そんな彼女を救いたいと訴えるも、反発してその良心を打ち消すかのように続けられる異常な憎しみの斬撃。
右手を動かせば、右腕を。
左手を動かせば、左腕を。
あらゆる神経を駆逐し、器官を全て破壊しようと、目を背けたくなる程の殺戮。
「やっぱりあなた人間なのね!! フフフフ」
「あああああ!!……やめ……」
「痛い?」
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「フフフフフ」
「シエラ……」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
その時、その狂気に満ちた叫び声でやっとカイザーが目を覚ました。
今起きてる現状を確認しようとするが、頭が追いつかない。
一体何が起きたと必死の形相で叫ぶも、返答するのは金色を光らせる恐熊。
「……てめら15番隊はここで全滅することになったでやんす。もちろん鬼団の了承も得たでやんす」
「何だと」
「ハハハ……つまり売られたでやんす……てめぇらは……ハハハハ……残念隊長殿」
恐熊はカイザーの絶望の姿に腹を抱えて嗤い出す。
おかしくておかしくて仕方がないのだ。
追い討ちを掛けるようにして、鬼童子が厳しい目つきで付け足す。
「以前から鬼団上層部ではオマエの単独行動が問題視され……不要論が出ていた……カイザーは内部の情報を知り過ぎているため脱退させることはできなかった。そこで、危険因子として抹殺することが決定した。よってこの恐熊暗殺依頼を企てた……上層部は成功しない……無謀な依頼だと分かりきっていた……だからここでせめて功労者として称え、殉職という形で葬り去ってやろうと決めた……」
「どうしてだ……うちは鬼団のために……うぅうぅぅぅ……ああああああ」
「キサマハ……身勝手過ぎた……だから鬼団に裏切られた」
「どうして……どうして」
「あなたが人間の臭いを漂わせてるからよ」
「それは……」
アタマカラは激しい背中の痛みで言葉はおろか、意識すらはっきりしない。
一方、鬼童子は驚きはなく、ただ冷静に事の次第を収集に努めようとする。
「ヤハリ……キサマモ……クマイチゾクノスパイか……」
「……」
「アノトキ……コロシテオケバヨカッタ」
しかし、鬼童子には答えない。
百熊一族達も鬼童子の能力は熟知しているため、いないかのように扱っている。
そして、シエラが起き上がろうとするアタマカラの右手を踏み、再起を妨害する。
「あなたを殺さないと……私が殺されちゃうの」
「俺が……助け」
「気持ち悪い……人間になんて助けられたくないの!!」
シエラはしゃがみこみ、狂気の顔で訴え、ナイフでアタマカラの背中を何度も刺し、その傷口から苦しみの叫ぶ声を響かせた。
アタマカラが動こうとする度に何度も何度も、凶器のナイフを振り下ろして、血肉まで刺し、血飛沫を発生させる。
シエラの人間への恨みはどこまでも深く、アタマカラが知らない辛い過去なのだろう。
きっと、彼女は誰からも救われず今まで生きてきたのだろうか。
だとしたら、彼女を責めるのは違うだろう。
それはこのような彼女にさせてしまった奴に裁きを下すべきだ。
そんな彼女を救いたいと訴えるも、反発してその良心を打ち消すかのように続けられる異常な憎しみの斬撃。
右手を動かせば、右腕を。
左手を動かせば、左腕を。
あらゆる神経を駆逐し、器官を全て破壊しようと、目を背けたくなる程の殺戮。
「やっぱりあなた人間なのね!! フフフフ」
「あああああ!!……やめ……」
「痛い?」
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「フフフフフ」
「シエラ……」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
その時、その狂気に満ちた叫び声でやっとカイザーが目を覚ました。
今起きてる現状を確認しようとするが、頭が追いつかない。
一体何が起きたと必死の形相で叫ぶも、返答するのは金色を光らせる恐熊。
「……てめら15番隊はここで全滅することになったでやんす。もちろん鬼団の了承も得たでやんす」
「何だと」
「ハハハ……つまり売られたでやんす……てめぇらは……ハハハハ……残念隊長殿」
恐熊はカイザーの絶望の姿に腹を抱えて嗤い出す。
おかしくておかしくて仕方がないのだ。
追い討ちを掛けるようにして、鬼童子が厳しい目つきで付け足す。
「以前から鬼団上層部ではオマエの単独行動が問題視され……不要論が出ていた……カイザーは内部の情報を知り過ぎているため脱退させることはできなかった。そこで、危険因子として抹殺することが決定した。よってこの恐熊暗殺依頼を企てた……上層部は成功しない……無謀な依頼だと分かりきっていた……だからここでせめて功労者として称え、殉職という形で葬り去ってやろうと決めた……」
「どうしてだ……うちは鬼団のために……うぅうぅぅぅ……ああああああ」
「キサマハ……身勝手過ぎた……だから鬼団に裏切られた」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが当たり前になった世界。風間は平凡な会社員として日々を暮らしていたが、ある日見に覚えのないミスを犯し会社をクビになってしまう。その上親友だった男も彼女を奪われ婚約破棄までされてしまった。世の中が嫌になった風間は自暴自棄になり山に向かうがそこで誰からも見捨てられた放置ダンジョンを見つけてしまう。どことなく親近感を覚えた風間はダンジョンで暮らしてみることにするが、そこにはとても可愛らしいモンスターが隠れ住んでいた。ひょんなことでモンスターに懐かれた風間は様々なモンスターと暮らしダンジョン内でのスローライフを満喫していくことになるのだった。
【完結】幼馴染に婚約破棄されたので、別の人と結婚することにしました
鹿乃目めの
恋愛
セヴィリエ伯爵令嬢クララは、幼馴染であるノランサス伯爵子息アランと婚約していたが、アランの女遊びに悩まされてきた。
ある日、アランの浮気相手から「アランは私と結婚したいと言っている」と言われ、アランからの手紙を渡される。そこには婚約を破棄すると書かれていた。
失意のクララは、国一番の変わり者と言われているドラヴァレン辺境伯ロイドからの求婚を受けることにした。
主人公が本当の愛を手に入れる話。
独自設定のファンタジーです。実際の歴史や常識とは異なります。
さくっと読める短編です。
※完結しました。ありがとうございました。
閲覧・いいね・お気に入り・感想などありがとうございます。
(次作執筆に集中するため、現在感想の受付は停止しております。感想を下さった方々、ありがとうございました)
森に捨てられた俺、転生特典【重力】で世界最強~森を出て自由に世界を旅しよう! 貴族とか王族とか絡んでくるけど暴力、脅しで解決です!~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
事故で死んで異世界に転生した。
十年後に親によって俺、テオは奴隷商に売られた。
三年後、奴隷商で売れ残った俺は廃棄処分と称されて魔物がひしめく『魔の森』に捨てられてしまう。
強力な魔物が日夜縄張り争いをする中、俺も生き抜くために神様から貰った転生特典の【重力】を使って魔物を倒してレベルを上げる日々。
そして五年後、ラスボスらしき美女、エイシアスを仲間にして、レベルがカンスト俺たちは森を出ることに。
色々と不幸に遇った主人公が、自由気ままに世界を旅して貴族とか王族とか絡んでくるが暴力と脅しで解決してしまう!
「自由ってのは、力で手に入れるものだろ? だから俺は遠慮しない」
運命に裏切られた少年が、暴力と脅迫で世界をねじ伏せる! 不遇から始まる、最強無双の異世界冒険譚!
◇9/25 HOTランキング(男性向け)1位
◇9/26 ファンタジー4位
◇月間ファンタジー30位
普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜
セカイ
ファンタジー
いたって普通の女子高生・花園 アリス。彼女の平穏な日常は、魔法使いを名乗る二人組との邂逅によって破られた。
異世界からやって来たという魔法使いは、アリスを自国の『姫君』だと言い、強引に連れ去ろうとする。
心当たりがないアリスに魔の手が伸びた時、彼女を救いに現れたのは、魔女を名乗る少女だった。
未知のウィルスに感染したことで魔法を発症した『魔女』と、それを狩る正統な魔法の使い手の『魔法使い』。アリスはその戦いの鍵であるという。
わけもわからぬまま、生き残りをかけた戦いに巻き込まれるアリス。自分のために傷付く友達を守るため、平和な日常を取り戻すため、戦う事を決意した彼女の手に現れたのは、あらゆる魔法を打ち消す『真理の剣』だった。
守り守られ、どんな時でも友達を想い、心の繋がりを信じた少女の戦いの物語。
覚醒した時だけ最強!? お伽話の様な世界と現代が交錯する、バイオレンスなガールミーツガールのローファンタジー。
※非テンプレ。異世界転生・転移要素なし。
※GL要素はございません。 ※男性キャラクターも登場します。
※イラストがある話がございます。絵:時々様( @_to_u_to_ )/SSS様( @SSS_0n0 )
旧タイトル「《ドルミーレ》終末の眠り姫 〜私、魔女はじめました〜」
※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載中。
装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます
tera
ファンタジー
※まだまだまだまだ更新継続中!
※書籍の詳細はteraのツイッターまで!@tera_father
※第1巻〜7巻まで好評発売中!コミックス1巻も発売中!
※書影など、公開中!
ある日、秋野冬至は異世界召喚に巻き込まれてしまった。
勇者召喚に巻き込まれた結果、チートの恩恵は無しだった。
スキルも何もない秋野冬至は一般人として生きていくことになる。
途方に暮れていた秋野冬至だが、手に持っていたアイテムの詳細が見えたり、インベントリが使えたりすることに気づく。
なんと、召喚前にやっていたゲームシステムをそっくりそのまま持っていたのだった。
その世界で秋野冬至にだけドロップアイテムとして誰かが倒した魔物の素材が拾え、お金も拾え、さらに秋野冬至だけが自由に装備を強化したり、錬金したり、ゲームのいいとこ取りみたいな事をできてしまう。
ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~
白黒 キリン
ファンタジー
前世で重度の病人だった少年が、普人と変わらないくらい貧弱な身体に生まれた竜人族の少年ヤーウェルトとして転生する。ひたすらにマイペースに前世で諦めていたささやかな幸せを噛み締め、面倒くさい奴に絡まれたら鋼の精神力と図太い神経と植物の力を借りて圧倒し、面倒事に巻き込まれたら頼れる家族や仲間と植物の力を借りて撃破して、時に周囲を振り回しながら生きていく。
タイトルロゴは美風慶伍 様作で副題無し版です。
小説家になろうでも公開しています。
https://ncode.syosetu.com/n5715cb/
カクヨムでも公開してします。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887026500
●現状あれこれ
・2021/02/21 完結
・2020/12/16 累計1000000ポイント達成
・2020/12/15 300話達成
・2020/10/05 お気に入り700達成
・2020/09/02 累計ポイント900000達成
・2020/04/26 累計ポイント800000達成
・2019/11/16 累計ポイント700000達成
・2019/10/12 200話達成
・2019/08/25 お気に入り登録者数600達成
・2019/06/08 累計ポイント600000達成
・2019/04/20 累計ポイント550000達成
・2019/02/14 累計ポイント500000達成
・2019/02/04 ブックマーク500達成
神様お願い!~神様のトバッチリで異世界に転生したので心穏やかにスローライフを送りたい~
きのこのこ
ファンタジー
旧題:神様お願い!〜神様のトバッチリを受けた定年おっさんは異世界に転生して心穏やかにスローライフを送りたい〜
突然白い発光体の強い光を浴びせられ異世界転移?した俺事、石原那由多(55)は安住の地を求めて異世界を冒険する…?
え?謎の子供の体?謎の都市?魔法?剣?魔獣??何それ美味しいの??
俺は心穏やかに過ごしたいだけなんだ!
____________________________________________
突然謎の白い発光体の強い光を浴びせられ強制的に魂だけで異世界転移した石原那由多(55)は、よちよち捨て子幼児の身体に入っちゃった!
那由多は左眼に居座っている神様のカケラのツクヨミを頼りに異世界で生きていく。
しかし左眼の相棒、ツクヨミの暴走を阻止できず、チート?な棲家を得て、チート?能力を次々開花させ異世界をイージーモードで過ごす那由多。「こいつ《ツクヨミ》は勝手に俺の記憶を見るプライバシークラッシャーな奴なんだ!」
そんな異世界は優しさで満ち溢れていた(え?本当に?)
呪われてもっふもふになっちゃったママン(産みの親)と御親戚一行様(やっとこ呪いがどうにか出来そう?!)に、異世界のめくるめくグルメ(やっと片鱗が見えて作者も安心)でも突然真夜中に食べたくなっちゃう日本食も完全完備(どこに?!)!異世界日本発福利厚生は完璧(ばっちり)です!(うまい話ほど裏がある!)
謎のアイテム御朱印帳を胸に(え?)今日も平穏?無事に那由多は異世界で日々を暮らします。
※一つの目的にどんどん事を突っ込むのでスローな展開が大丈夫な方向けです。
⭐︎第16回ファンタジー小説大賞にて奨励賞受賞を頂きました!読んで投票して下さった読者様、並びに選考してくださったスタッフ様に御礼申し上げますm(_ _)m今後とも宜しくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる