上 下
43 / 177
1章魔獣になりましょう

43話恐怖

しおりを挟む
 生意気な鬼童子の顔とアタマカラの怒りの顔が初めて向き合う。
 鬼童子の色白な額から数本の皺が入り、なぜだ思った表情から、油断したなと嗤いに変わる。

「キサマ……オイラに話しかけたな? どうなるか分かってんのか?」

「さあな……それは置いとくとして……カイザーに何かしただろ?」

「ア? 馬鹿言え! なぜオイラが!」

「お前が俺の頭に乗ってる時に悪の感情がした……特殊能力かなんかで皆を操ったろ? 何でだろうな」

 鬼童子が驚愕と云った表情でガタガタと震える。 
 何故分かったと図星を当てられたような表情をする。

「キサマ……オイラがやったことが分かるのか!? 魔獣には見えないまだしも、感知など絶対に出来ない……キサマ……」

「そんなことはどうでもいい……今すぐ降りて……皆を解放しろ」

 すると、鬼童子が自らの能力で瞬間移動したのかアタマカラの目の前に立ち、不気味な表情で嗤い、両手を叩いた。

「正解! カイザーが生意気にオイラを邪険にしたからさ……少し意地悪したんだ」

「あの蜘蛛も……カイザーの部下も殺したのお前だろ?」

「へぇ……そこまで分かってたんだ……凄いね……貴様。オイラは罪悪《クライム》と呼ばれるスキルを使った。その者の記憶に悪や憎しみの感情があれば、その罪の意識でその者の精神を崩壊させ、殺すことも、感情を失わせて操ることもできる。神ランク級のスキルだよ……どうビビったかクソ雲?」

「言葉遣いには気おつけた方がいいぞ……子供だからって容赦しない……目一杯説教してやる」

「生意気ナ……死ねッッッッ!!」

「……何だ?」

「アレ……効かないだと……これならどうだ! 死ねッッッッ!!」

「何ともないが?」

「貴様ァァァァァ」

 威勢の良い言葉と挑戦的な態度をする鬼童子だが、内心はアタマカラの存在に脅威を感じた。
 異常事態《イレギュラー》だった。
 さっきからあれこれ物質干渉能力で精神を崩壊させようと試みてるけど脳内が怠惰で全て埋まっている。悪の感情が一つも無い。
 いや、あるのはあるのだが、怠惰が多すぎて、悪の感情を打ち消しているのだ。
 だが、精神を干渉するだけでなく、肉体すらも干渉出来る。
 つまり、戦闘で殺せばいい話だと、右手を向け、アタマカラの身体を宙に上げ、叩き落とす。
 しかし、アタマカラは瞬時に霧散して消える。苛立ち混じりに、消えた先へ手を向け、何度も何度も物質干渉能力を使用するが、秒速で消え去るためになかなか成功させることが出来ない。

「チッチッ……ナカナカヤルナ」

「どうした? 終わりか?」

 とはいえ、この物質干渉が遅いとはいえず、アタマカラの消えるスピードが極度に速いと言える。
 見る見るうちに鬼童子は息切れをし、体力が減ってきて、苦痛の表情をし、倒れた。
 その瞬間、アタマカラが鬼童子の前に立つ。
 鬼童子は殺されると覚悟し、手を向けるが、その力は当に尽き倒れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

婚約破棄を成立させた侯爵令嬢~自己陶酔の勘違い~

鷲原ほの
ファンタジー
侯爵令嬢マリアベル・フロージニス主催のお茶会に咲いた婚約破棄騒動。 浮気な婚約者が婚約破棄を突き付けるところから喜劇の物語は動き出す。 『完結』

転生したら死にそうな孤児だった

佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。 保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。 やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。 悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。 世界は、意外と優しいのです。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

いずれ最強の錬金術師?

小狐丸
ファンタジー
 テンプレのごとく勇者召喚に巻き込まれたアラフォーサラリーマン入間 巧。何の因果か、女神様に勇者とは別口で異世界へと送られる事になる。  女神様の過保護なサポートで若返り、外見も日本人とはかけ離れたイケメンとなって異世界へと降り立つ。  けれど男の希望は生産職を営みながらのスローライフ。それを許さない女神特性の身体と能力。  はたして巧は異世界で平穏な生活を送れるのか。 **************  本編終了しました。  只今、暇つぶしに蛇足をツラツラ書き殴っています。  お暇でしたらどうぞ。  書籍版一巻〜七巻発売中です。  コミック版一巻〜二巻発売中です。  よろしくお願いします。 **************

処理中です...