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1章魔獣になりましょう
41話厄介な子供
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先程の濃い霧よりたいぶ薄くなり、視界良好となるが、大木が高すぎて太陽の光が地上へと入ってこず、夕方並みの暗さとなっていて、ずっと不気味なのは変わりない。
大森林に放り出され、道なき無き道を歩き続け、その上このミニュチュアになったような感覚から一体いつ抜け出せるのか不安で仕方がない。
もっとも、一人以外を除いて、ほとんど沈黙を続ける異様な状況から打開する手段を優先しなければならない。
すると、げらげらと鬼童子がアタマカラのお尻に何度となくパンチをしたり、挙げ句には穴に人差し指で突く悪戯を執拗にやってくる。
普段、温厚なアタマカラでも、このような辱めを受ければ、我慢の限界で、拳骨で泣かしてやろうかと何度となく実行しようとしたが、鬼童子の恐ろしさをよく知るシエラが背中を摘まんで、首を左右に振る。
少しばかり頬を赤くして、お淑やかに振る舞う彼女を見たら怒りがすぅーと沈んで、
「オイクモ……!」
「いたッ」
「キャハハハハ」
「クモナンカオモシロイ……コイトヤレヨ……ククッッ……ナア?」
「いたぁぁぁぁ!」
「キャハハハハハハ」
アタマカラは居ても立ってもどうすればよいか分からず、玄奘に助けを求め、涙の表情で見せる。
しかし、だるそうな目つきで、手で払うようにして近づくなの合図。
どうやらここまで培った友情は捨て、自らの生命を守ることを最優先としたらしく、そのまま先を急ぐ。
同様にカイザー、狼女もいつアタマカラを置き去りにして、逃げ出すか考えているのか、声を掛ければ睨みつけ、視線はずっと前へと向き知らん顔。
その間にも鬼童子の悪戯は続き、頭の上に顔を引っ張ったり、ボコボコと叩いたり、暴言中傷の連続、なすがままにされた。
もちろん、アタマカラは一切怒ることはせず、泣きながら前を急いだ。
その時、草がカサッカサッと擦過音が鳴り響き、全員が硬直し、立ち止まる。殺気ある敵は二、三体どころではない、十体と云った魔獣を感じる。
もう既に周辺は包囲され、薄気味悪い笑い声が聞こえ、赤黒の蜘蛛の集団が出現した。
一つの赤い目玉をぎょろぎょろと動かし、アーチ状の巨大な口から血の糸を吐き出し、獲物を見据えた。
【血蜘蛛《チグモ》】
レベル200。人や魔獣の血を吸いながら、生きている。言語や知能は発達しておらず、意志疎通は出来ない。もちろん、感情すらない。ただ、あるのは血を欲する欲のみである。
カイザーが舌打ちをし、パイプを投げ捨て、皆の制止をよそに前へと出る。
おそらくこの程度の魔獣達くらい、彼にとっては容易に倒せるのだろう。
それは狼女の安心したように頷いている表情から察することができる。
次の瞬間、一斉に血蜘蛛の血糸が四方八方から発射された。
その攻撃の意図はこの一体を蜘蛛の巣状にして獲物の動きを封じる腹積もりなのだろう。
しかし、カイザーの釣り目が更に増して、身体全身から炎が脇き出し、中間まで膨れ上がる頃には炎の化身が糸を一瞬で消し去った。これが、炎猛獣《イノケンティウス》。至高スキル。炎猛獣は必ず対象物を焼き尽くし、その黒焦げを喰らう。
蜘蛛はその絶対仕留めるつもりだった攻撃を刹那に消滅させられたこと、一旦後退るも、やはり、血の欲求が勝ったのか、興奮し、周囲の炎を飛び越える。
だが、炎猛獣が手掴みで焼き尽くす。安堵したと思ったが、一斉に隠れていた蜘蛛達が現れ、獲物目掛けて巨大な口で噛み砕き攻撃を仕掛ける。
大森林に放り出され、道なき無き道を歩き続け、その上このミニュチュアになったような感覚から一体いつ抜け出せるのか不安で仕方がない。
もっとも、一人以外を除いて、ほとんど沈黙を続ける異様な状況から打開する手段を優先しなければならない。
すると、げらげらと鬼童子がアタマカラのお尻に何度となくパンチをしたり、挙げ句には穴に人差し指で突く悪戯を執拗にやってくる。
普段、温厚なアタマカラでも、このような辱めを受ければ、我慢の限界で、拳骨で泣かしてやろうかと何度となく実行しようとしたが、鬼童子の恐ろしさをよく知るシエラが背中を摘まんで、首を左右に振る。
少しばかり頬を赤くして、お淑やかに振る舞う彼女を見たら怒りがすぅーと沈んで、
「オイクモ……!」
「いたッ」
「キャハハハハ」
「クモナンカオモシロイ……コイトヤレヨ……ククッッ……ナア?」
「いたぁぁぁぁ!」
「キャハハハハハハ」
アタマカラは居ても立ってもどうすればよいか分からず、玄奘に助けを求め、涙の表情で見せる。
しかし、だるそうな目つきで、手で払うようにして近づくなの合図。
どうやらここまで培った友情は捨て、自らの生命を守ることを最優先としたらしく、そのまま先を急ぐ。
同様にカイザー、狼女もいつアタマカラを置き去りにして、逃げ出すか考えているのか、声を掛ければ睨みつけ、視線はずっと前へと向き知らん顔。
その間にも鬼童子の悪戯は続き、頭の上に顔を引っ張ったり、ボコボコと叩いたり、暴言中傷の連続、なすがままにされた。
もちろん、アタマカラは一切怒ることはせず、泣きながら前を急いだ。
その時、草がカサッカサッと擦過音が鳴り響き、全員が硬直し、立ち止まる。殺気ある敵は二、三体どころではない、十体と云った魔獣を感じる。
もう既に周辺は包囲され、薄気味悪い笑い声が聞こえ、赤黒の蜘蛛の集団が出現した。
一つの赤い目玉をぎょろぎょろと動かし、アーチ状の巨大な口から血の糸を吐き出し、獲物を見据えた。
【血蜘蛛《チグモ》】
レベル200。人や魔獣の血を吸いながら、生きている。言語や知能は発達しておらず、意志疎通は出来ない。もちろん、感情すらない。ただ、あるのは血を欲する欲のみである。
カイザーが舌打ちをし、パイプを投げ捨て、皆の制止をよそに前へと出る。
おそらくこの程度の魔獣達くらい、彼にとっては容易に倒せるのだろう。
それは狼女の安心したように頷いている表情から察することができる。
次の瞬間、一斉に血蜘蛛の血糸が四方八方から発射された。
その攻撃の意図はこの一体を蜘蛛の巣状にして獲物の動きを封じる腹積もりなのだろう。
しかし、カイザーの釣り目が更に増して、身体全身から炎が脇き出し、中間まで膨れ上がる頃には炎の化身が糸を一瞬で消し去った。これが、炎猛獣《イノケンティウス》。至高スキル。炎猛獣は必ず対象物を焼き尽くし、その黒焦げを喰らう。
蜘蛛はその絶対仕留めるつもりだった攻撃を刹那に消滅させられたこと、一旦後退るも、やはり、血の欲求が勝ったのか、興奮し、周囲の炎を飛び越える。
だが、炎猛獣が手掴みで焼き尽くす。安堵したと思ったが、一斉に隠れていた蜘蛛達が現れ、獲物目掛けて巨大な口で噛み砕き攻撃を仕掛ける。
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