上 下
40 / 177
1章魔獣になりましょう

40話鬼童子

しおりを挟む
 翌朝、朝日もやっと立ち上り、霧がまだ濃い頃合いに草木を掻き分けてやってくる二体の高低差のある影が現れ、真近に迫った。
 一体は人間の子供のようにも見えるが、黒髪のおかっぱの頭頂部にニ角が生えている姿から魔獣らしい。
 裸一貫で、下はふんどしのみ。
 黒色のまん丸の目でアタマカラをじっと見つめ、鼻をほじり、侮蔑の目へと変わる。
 ちなみに10番隊隊長の座敷鬼童子。

【座敷鬼童子《ザシキオニドウジ》】

 レベル400。愛くるしい顔をしてるが、戦いとなると恐ろしいくらいに強い。
 趣味はよく人間を騙したり、殺したりする。
 そんな反面、人間と遊んだりするなど不可解な行動をする。
 しだがって、今は子供の故かそれ程強くはないが、潜在能力は桁外れであり、今後強くなる可能性を秘めている。
 戦闘は物質干渉能力《エスパー》魔力スキルを主に使用する。

 すると、鬼童子が口を引き千切れくらい吊り上げ、その上大量に口から血を垂れ流し、不可解な満面の笑顔、まるで少女のように甲高く笑い出す。

「ヨロシクナ……キサマラ……キャキャキャキャキャキャ」

「よろ……」

「しゃべるんじゃねぇぇぇぇ!!!!」
 
 カイザーは鬼気迫る叫び声を鬼童子に挨拶しようとするアタマカラに浴びせて、親交しようとする手を払いのけた。
 あまりの気迫に炎がじりじりと湧き出し、興奮を抑えようと必死。
 周囲は鬼童子を除いて、緊迫感に苛まれる。
 すると、もう一方の長い紫髪、大きな釣り目、知的な片側のみの丸眼鏡、赤い口紅をした派手な狼女が慌てた様子でやってきた。
 ちなみに14番隊隊長。
【狼】
 レベル350。攻撃力、敏捷力に優れる。
 バランスタイプ。
 月を見るとステータスが大幅に上昇する。

 すぐさま鬼童子を見て、はっと畏れの表情をする。凶器の怪物を見たかのようだ。
 そこへ、カイザーが怒りの表情で、狼女へと向かった。

「なぜあいつがここにいる!? 13番隊隊長蠍《サソリ》はどうした?」

「それはワタシの知らないことでありましたでザマス……鬼童子様が殺してしまったのでございます」

「何だと?」

「聞くところに寄ると蠍様が鬼童子様を知らなくて、うっかり質問に返答してしまいましたら……鬼童子様の鬼ごっこが始まりまして……それで蠍様は切り刻まれてしまい……あの世でございます」

「それで、なぜあいつがここに来る?」

「丁度鬼童子様が蠍様の依頼を耳にして、蠍がこんな風になっちゃったからボクが依頼受けるよと言って、ここにいらっしゃった次第です……」

「お前あいつが来たら……ここにいる全員が死ぬ……」

 すると、アタマカラ達に事の次第を話し、鬼童子から何を質問をされても返答しない、話し掛けないときつく言われた。
 もし、返答すれば死の鬼ごっこゲームが始まると。
 こんな緊張感のある中で、羊女ことシエラの様子が一段とおかしく、両手で身体を押さえ、震えていた。
 最初は奴隷の時や家族を失った後遺症かと思ったらそうではないらしい。
 おそらく鬼童子への恐怖に違いない。
 何とかこちらが冷静を保つようにと声を掛けたり、大丈夫だという態度で示し、少し落ち着き取り戻したかのように思えたが、突如として、か細く、視線を下に向けた、言葉を連ねる。

「鬼は鬼ヶ島で勇者と対決し、鬼が勝ち、鬼神となりました。そこで鬼神は邪魔になった勇者の亡骸を地中に埋めて、その勇者の亡骸の眠る場所で仲間達と祝杯を上げ、飲み明かしました。やがて、その亡骸の眠る場所からある人間の子供が生まれましたと。そして、鬼神はその子供を拾い大切に育てました……」

「よく知ってるな……シエラちゃん……その伝説を……」

「……?」

「鬼童子は鬼神が拾った子供だ……ちなみに鬼神は鬼団の創始者……そして、伝説に続きがある……鬼童子は人間だった……それはもしかしたら勇者の子供ではないかと……鬼神はそれを知って鬼童子が恐ろしくなり……鬼童子が好きで一緒に遊んでいた鬼ごっこというゲームの最中に殺そうと鬼神は決意した……しかし、殺されたのは鬼神だったという話だ」

             ※
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪意か、善意か、破滅か

野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。 婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、 悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。 その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。

引きこもり令嬢はやり直しの人生で騎士を目指す

天瀬 澪
ファンタジー
アイラ・タルコットは、魔術師を数多く輩出している男爵家の令嬢である。 生まれ持った高い魔力で、魔術学校に首席合格し、魔術師を目指し充実した毎日を送っていたーーーはずだった。 いつの間にか歯車が狂い出し、アイラの人生が傾いていく。 周囲の悪意に心が折れ、自身の部屋に引きこもるようになってしまった。 そしてある日、部屋は炎に包まれる。 薄れゆく意識の中で、アイラに駆け寄る人物がいたが、はっきりと顔は見えずに、そのまま命を落としてしまう。 ーーーが。 アイラは再び目を覚ました。 「私…私はまだ、魔術学校に入学してはいない…?」 どうやら、三年前に戻ったらしい。 やり直しの機会を与えられたアイラは、魔術師となる道を選ぶことをやめた。 最期のとき、駆け寄ってくれた人物が、騎士の服を身に着けていたことを思い出す。 「決めたわ。私はーーー騎士を目指す」 強さを求めて、アイラは騎士となることを決めた。 やがて見習い騎士となるアイラには、様々な出会いと困難が待ち受けている。 周囲を巻き込み惹きつけながら、仲間と共に強く成長していく。 そして、燻っていた火種が燃え上がる。 アイラの命は最初から、ずっと誰かに狙われ続けていたのだ。 過去に向き合ったアイラは、一つの真実を知った。 「……あなたが、ずっと私を護っていてくれたのですね…」 やり直しの人生で、騎士として自らの運命と戦う少女の物語。

冷遇ですか?違います、厚遇すぎる程に義妹と婚約者に溺愛されてます!

ユウ
ファンタジー
トリアノン公爵令嬢のエリーゼは秀でた才能もなく凡庸な令嬢だった。 反対に次女のマリアンヌは社交界の華で、弟のハイネは公爵家の跡継ぎとして期待されていた。 嫁ぎ先も決まらず公爵家のお荷物と言われていた最中ようやく第一王子との婚約がまとまり、その後に妹のマリアンヌの婚約が決まるも、相手はスチュアート伯爵家からだった。 華麗なる一族とまで呼ばれる一族であるが相手は伯爵家。 マリアンヌは格下に嫁ぐなんて論外だと我儘を言い、エリーゼが身代わりに嫁ぐことになった。 しかしその数か月後、妹から婚約者を寝取り略奪した最低な姉という噂が流れだしてしまい、社交界では爪はじきに合うも。 伯爵家はエリーゼを溺愛していた。 その一方でこれまで姉を踏み台にしていたマリアンヌは何をしても上手く行かず義妹とも折り合いが悪く苛立ちを抱えていた。 なのに、伯爵家で大事にされている姉を見て激怒する。 「お姉様は不幸がお似合いよ…何で幸せそうにしているのよ!」 本性を露わにして姉の幸福を妬むのだが――。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか!  【第15回ファンタジー小説大賞の爽快バトル賞を受賞しました】 ここは異世界エールドラド。その中の国家の1つ⋯⋯グランドダイン帝国の首都シュバルツバイン。  主人公リックはグランドダイン帝国子爵家の次男であり、回復、支援を主とする補助魔法の使い手で勇者パーティーの一員だった。  そんな中グランドダイン帝国の第二皇子で勇者のハインツに公衆の面前で宣言される。 「リック⋯⋯お前は勇者パーティーから追放する」  その言葉にリックは絶望し地面に膝を着く。 「もう2度と俺達の前に現れるな」  そう言って勇者パーティーはリックの前から去っていった。  それを見ていた周囲の人達もリックに声をかけるわけでもなく、1人2人と消えていく。  そしてこの場に誰もいなくなった時リックは⋯⋯笑っていた。 「記憶が戻った今、あんなワガママ皇子には従っていられない。俺はこれからこの異世界を謳歌するぞ」  そう⋯⋯リックは以前生きていた前世の記憶があり、女神の力で異世界転生した者だった。  これは狙って勇者パーティーから追放され、前世の記憶と女神から貰った力を使って無双するリックのドタバタハーレム物語である。 *他サイトにも掲載しています。

処理中です...