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1章魔獣になりましょう
37話蜥蜴の暴走
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彼女は泣きながら、首を左右に振り、否定を示し、そして、弱々しい声で、精一杯の声で言った。
「家族が……いない……」
たどたどしい言葉と悲壮な表情に嘘偽りは感じられない。
それからずっと弱々しく泣き続けていた。
彼女の境遇は思っていたよりも想像を絶するものだったのだろう。
これ以上何かを聞くことは出来なかった。
玄奘も最初は苛立ちを示していたが、家族を失った境遇を共有する身としては、これ以上責め立てるのは良くないと思ったらしく、後はアタマカラに任せたと肩をパンパンと叩き笑みを零し、その場を離れた。
その行動の真意というのは今後の彼女をどうするかということも含まれているようだった。
このまま憔悴しきった彼女を家族のいない元へ解放させるのは危険なのは確かだ。
せめて、元気になってから解放をするのが最善ではないだろうかと思うに至った。
「少しの間一緒に来ませんか?」
その誘いに否定されるか、あるいは押し黙ると思ったが意外なことに一生懸命に頷き、涙を拭き、視線は相変わらず下を向き、たどたどしかったが、
「はい……宜しくお願いしま……す」
と彼女なりの真意が見えた。
だが、そこへ水を差すようにして、蜥蜴がパイプを吹かして、横柄な態度でやってきた。
切れ長の目で二人を睨み付ける。
「その羊女を奴隷にすると言ったらどうする?」
「何?」
「どうするって聞いてんだよ」
「俺がさせない」
やはり、この蜥蜴は悪党。
こんな悪党にいる団体に入団すること事態が間違いだった。
アタマカラの体から発する冷気がこの上なく帯び戦闘態勢を整え、羊女を庇う。
すると、そこへ、木の上で休んでいた玄奘が顔を出し、冷徹な目で敵を見下ろし、補足する。
「今……アタマカラと羊女はパーティー契約を結んだ……奴隷契約は無効になるはずや」
その時、蜥蜴がパイプを投げ捨て、全身から炎を湧かし、炎の柱を発生させる。
灼熱の炎がぐるぐると円柱を形成する姿は圧巻。
この魔力、殺気を鑑みるにこの三人だけでなく、森全体を焼き尽くすことさえ感じられる。
「果たしてテメェらでその羊女を守れるかぁぁぁぁぁ? うちはな鬼団15番隊長……炎の狩り獣だぞ?」
「家族が……いない……」
たどたどしい言葉と悲壮な表情に嘘偽りは感じられない。
それからずっと弱々しく泣き続けていた。
彼女の境遇は思っていたよりも想像を絶するものだったのだろう。
これ以上何かを聞くことは出来なかった。
玄奘も最初は苛立ちを示していたが、家族を失った境遇を共有する身としては、これ以上責め立てるのは良くないと思ったらしく、後はアタマカラに任せたと肩をパンパンと叩き笑みを零し、その場を離れた。
その行動の真意というのは今後の彼女をどうするかということも含まれているようだった。
このまま憔悴しきった彼女を家族のいない元へ解放させるのは危険なのは確かだ。
せめて、元気になってから解放をするのが最善ではないだろうかと思うに至った。
「少しの間一緒に来ませんか?」
その誘いに否定されるか、あるいは押し黙ると思ったが意外なことに一生懸命に頷き、涙を拭き、視線は相変わらず下を向き、たどたどしかったが、
「はい……宜しくお願いしま……す」
と彼女なりの真意が見えた。
だが、そこへ水を差すようにして、蜥蜴がパイプを吹かして、横柄な態度でやってきた。
切れ長の目で二人を睨み付ける。
「その羊女を奴隷にすると言ったらどうする?」
「何?」
「どうするって聞いてんだよ」
「俺がさせない」
やはり、この蜥蜴は悪党。
こんな悪党にいる団体に入団すること事態が間違いだった。
アタマカラの体から発する冷気がこの上なく帯び戦闘態勢を整え、羊女を庇う。
すると、そこへ、木の上で休んでいた玄奘が顔を出し、冷徹な目で敵を見下ろし、補足する。
「今……アタマカラと羊女はパーティー契約を結んだ……奴隷契約は無効になるはずや」
その時、蜥蜴がパイプを投げ捨て、全身から炎を湧かし、炎の柱を発生させる。
灼熱の炎がぐるぐると円柱を形成する姿は圧巻。
この魔力、殺気を鑑みるにこの三人だけでなく、森全体を焼き尽くすことさえ感じられる。
「果たしてテメェらでその羊女を守れるかぁぁぁぁぁ? うちはな鬼団15番隊長……炎の狩り獣だぞ?」
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