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1章魔獣になりましょう
14話恩人
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中鬼は体躯から想像もつかない程の力でアタマカラの胸倉を掴みかかる。
やれやれと周囲の喧嘩の声援が激しくなる。
アタマカラは不満を隠しながら降伏を示すが一向に怒りを静めてはくれない。
やはり気に入らないのか敵は赤い両眼の血管を浮き出せ、右拳を上げる。
だが、この強者達の中でも大きな大黒猿《コング》が野太い声で制止した。
声だけでなく、上半分に装着した銀色の鉄のマスクから覗かせる強い両眼で一睨みしただけでミノルと中鬼に強烈な心理的圧迫を掛け、ニ体は恐れるようにして、熱くなった怒りを静める。
どうやら、あいつがこのブロックにおいてボス格の一体らしい。
誰も寄せ付けず胡座をかいてどんと座った巌のような怪物は静かなる説教をする。
しかし、そこには愛の無い、相手に畏怖を抱かせる。
「今回は駆け出し冒険者を駆除する遠征……しかもただの遠征じゃない……上からの命令でモンスター大規模連合を組んでこうして団体で俺達はやってきてる……威勢の良いことは歓迎するがルールを守れねぇ奴は許さねぇ。仲間同士で殺し合いしたいならここの連合から出てやり合うって言うのが筋だ。ミノル、オガ分かったか?」
「ふんっ……分かァってるよ……」
「へぇ……すいませでぇした」
ミノルとオガは納得いかない様子で、睨みつけ、舌打ちして皆が集まっている場所に歩いていく。
アタマカラは安堵して、地べたに倒れ込み、大黒猿に礼を言った。
「助かりました」
「気をつけろ新人……ここは弱肉強食の世界だ」
「あの本当にありがとう……ございます」
「まあそのなんだ……頑張れよ」
強面の大黒猿は意外にも優しく肩を叩き、お礼を受け取ったら口下手のようにもごもごと言葉を詰まらせ、照れていた。
そして、閻魔の呼び出しで、本格的な会議が始まる。
自身の置かれてる現状が危機迫っていることは理解してるが、これからどうすれば良いのか分からず八方塞がりで、当分は時間の流れるままに行動していくことが生き方と納得して適当な場所を見つけ落ち着いた。
先程の悪目立ちした件もあり、今後自身に話しかけようとする魔獣は現れないだろうと思っていたが、同じような珍しい生き物が隣にいた。
この年になって類は友を呼ぶという言葉を使えるなんて思ってもみなかった。
その生物は貧弱な体躯、人間程の身長、青緑の皮膚、魚の鱗。
頭頂部は禿げ、縮れた長髪。
魚に近いがそうではなく河童《カッパ》という表現が相応しい。
黄色の両眼から陰気さを醸し出し、やる気の無い声が漏れる。
やれやれと周囲の喧嘩の声援が激しくなる。
アタマカラは不満を隠しながら降伏を示すが一向に怒りを静めてはくれない。
やはり気に入らないのか敵は赤い両眼の血管を浮き出せ、右拳を上げる。
だが、この強者達の中でも大きな大黒猿《コング》が野太い声で制止した。
声だけでなく、上半分に装着した銀色の鉄のマスクから覗かせる強い両眼で一睨みしただけでミノルと中鬼に強烈な心理的圧迫を掛け、ニ体は恐れるようにして、熱くなった怒りを静める。
どうやら、あいつがこのブロックにおいてボス格の一体らしい。
誰も寄せ付けず胡座をかいてどんと座った巌のような怪物は静かなる説教をする。
しかし、そこには愛の無い、相手に畏怖を抱かせる。
「今回は駆け出し冒険者を駆除する遠征……しかもただの遠征じゃない……上からの命令でモンスター大規模連合を組んでこうして団体で俺達はやってきてる……威勢の良いことは歓迎するがルールを守れねぇ奴は許さねぇ。仲間同士で殺し合いしたいならここの連合から出てやり合うって言うのが筋だ。ミノル、オガ分かったか?」
「ふんっ……分かァってるよ……」
「へぇ……すいませでぇした」
ミノルとオガは納得いかない様子で、睨みつけ、舌打ちして皆が集まっている場所に歩いていく。
アタマカラは安堵して、地べたに倒れ込み、大黒猿に礼を言った。
「助かりました」
「気をつけろ新人……ここは弱肉強食の世界だ」
「あの本当にありがとう……ございます」
「まあそのなんだ……頑張れよ」
強面の大黒猿は意外にも優しく肩を叩き、お礼を受け取ったら口下手のようにもごもごと言葉を詰まらせ、照れていた。
そして、閻魔の呼び出しで、本格的な会議が始まる。
自身の置かれてる現状が危機迫っていることは理解してるが、これからどうすれば良いのか分からず八方塞がりで、当分は時間の流れるままに行動していくことが生き方と納得して適当な場所を見つけ落ち着いた。
先程の悪目立ちした件もあり、今後自身に話しかけようとする魔獣は現れないだろうと思っていたが、同じような珍しい生き物が隣にいた。
この年になって類は友を呼ぶという言葉を使えるなんて思ってもみなかった。
その生物は貧弱な体躯、人間程の身長、青緑の皮膚、魚の鱗。
頭頂部は禿げ、縮れた長髪。
魚に近いがそうではなく河童《カッパ》という表現が相応しい。
黄色の両眼から陰気さを醸し出し、やる気の無い声が漏れる。
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