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1章魔獣になりましょう

6話叱責

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 ずっと無言のままだった監督が「んっ?」と顔を上げる。
 どうやら今まで静謐な音色を奏でいたのに、ノイズの不協和音が入った感覚なのだろうか。
 すると、監督が止めに入り、雲役からもう一回と指示をした。
 今度はボリュームを上げてみることにした。

「おれは……くも……だ」

 また、監督が首を捻る。
 どうやら滞りなく言葉にして欲しいらしい。
 今度こそ成功してやると思い。

「おれはくもだ!」

「違う!」

 監督は大声で俺を否定した。周囲は緊張感に包まれる。
 あまりの恐ろしさに足が震える。 

「雲はもっと若々しいもんだ!」

「すいません」

「もう一回」

「おれは雲だ!」

「違う」

「おれは雲だ」

「何回言わせれば気が済むんだ!!」

「すいません」

「はぁ……」

「ぁ……」

「ふざけてんのか? おい?」

「いえ」

「おれは雲だ」

「あ……はあ……こうさ……なんていうかさ……腹……腹から声を出せよ」

「はい」

 そして、あれからかれこれ一時間程俺は雲だの練習をさせられ、全て否定された。

 まったく練習が進まないことに苛立ち、周囲から溜め息や中傷が聞こえてくる。

 一方、監督は腕を組ながら凄い形相で俺を睨む。まるで身内を殺され敵を凝視する様。
 怖くてあわてて目を逸らし、台本で顔を隠す。
 監督はその行為が癪に触ったのか、左手を腰に当て、右手を指差して叱責する。

「お前今何歳だ!」
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