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1章魔獣になりましょう
22話洞窟の巣穴
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しかしながら、更なる緊張事態が起こり、帰還が難航してるらしい。
それはアタマカラ達も同様のことらしい。
ちなみに、その緊急事態というのはこのゴブリンロードの全体が強力な地形変動スキルによって、本来のゴブリンロードの地形が大幅に変わったということ。
つまり、携帯したゴブリンロードの地図では役に立たず、事実上の迷路の中を脱出しなければならないということ。
でも、幸いなことにゴブリン姉妹が休憩所探知《オアシス》スキルがあるため、それを使用して、先を進むと大烏山に抜ける。
冒険者が滅多に来なく、比較的温厚な魔獣が生息するため、そこを目指すことになった。
けれども、玄奘においては、このまま共食いを見逃す訳にはいかないという強い意があって、このままこの洞窟に残り、共食いを始末するということだ。
そうは言っても共食いと立ち向かうには一人では危険過ぎるということで、丁度良く近くを見回っていた大黒猿《コング》の集団と落ち会い、一緒に共食いを倒そうという算段ということになった。
「早く行けや」
けだるそうな河童が手で追い払うような仕草をするが、目頭に少し涙が溜まっていた。
いや、それは見間違いかもしれない。
しかしながら、それを隠すように、目を逸らす。
やはり、一時とはいえ、アタマカラ、ゴブリン姉妹とチームを組んだ仲間、それは人間においても、魔獣においても共通してある友情なのだ。
このまま何もせずに帰るのは卑怯だと感じたアタマカラ。
この男もこの異世界ダンジョンに転生して、何か変わろうとしているのかもしれない。
それは初めてできた仲間に対して何かしてあげたいという友情から来るものか。
あるいは、ミノルに大敗北を喫し、己の力不足を知り、この仲間の窮地に再び立ち上がろうとするが、またしてもこの何も出来ない悔しさなのか。
どちらにせよ、だからこそ何か自身が出来ることはないかと模索した結果がこれしかなかった。
「大黒猿《コング》さんが来るまで見送りくらいさせてくれ。これぐらいしか出来ないからさ」
玄奘も何かを悟ったかのように含んだ笑みで頷いた。
同じく、ゴブリン姉妹も見送りたいという気持ちは一緒だった。
そして、冒険者や共食いに警戒しながら、合流組を待つことにした。
けれども、一時間経過しても、一向に誰かが来る気配ない。やっと動きがあったと思ったら、苦しみの魔獣の絶叫と強烈な血の臭いだった。警戒しながら、立ち上がる。
同時に洞穴を守っていた岩壁が横へと切り裂かれ、そこから亀裂が次々に生じ、岩が砕け落ちていき、その一帯に広めのスペースが出来る。
対面に土煙を強引に掻き消す黒き野獣がそこにいた。
玄奘達は顰めっ面をし、一瞬安堵を見せたが、驚愕の表情になっていく。
なぜなら、黒大猿の両手、全身が血まみれだったからだ。何があったのかと問おうとする。
しかし、鎧の顔面から覗く眼力のある両眼に返答する意志は無く、まるで当然の如く、両手に装備された五枚刃を伸ばし、右へ左へと切り裂いた。
間一髪の所で、玄奘達は退避する。
「黒大猿さんどういうことや!」
その悲しげな問い掛けに応じる事もなく、煌めく刃が襲ってくる。
回避すればするほど、どうしてという気持ちが強くなる。
お遊びは終わったとでも言いたげな黒野獣は侮蔑な両眼で見据え、口を開いた。
「お前達はここで死んでもらうことにした」
それはアタマカラ達も同様のことらしい。
ちなみに、その緊急事態というのはこのゴブリンロードの全体が強力な地形変動スキルによって、本来のゴブリンロードの地形が大幅に変わったということ。
つまり、携帯したゴブリンロードの地図では役に立たず、事実上の迷路の中を脱出しなければならないということ。
でも、幸いなことにゴブリン姉妹が休憩所探知《オアシス》スキルがあるため、それを使用して、先を進むと大烏山に抜ける。
冒険者が滅多に来なく、比較的温厚な魔獣が生息するため、そこを目指すことになった。
けれども、玄奘においては、このまま共食いを見逃す訳にはいかないという強い意があって、このままこの洞窟に残り、共食いを始末するということだ。
そうは言っても共食いと立ち向かうには一人では危険過ぎるということで、丁度良く近くを見回っていた大黒猿《コング》の集団と落ち会い、一緒に共食いを倒そうという算段ということになった。
「早く行けや」
けだるそうな河童が手で追い払うような仕草をするが、目頭に少し涙が溜まっていた。
いや、それは見間違いかもしれない。
しかしながら、それを隠すように、目を逸らす。
やはり、一時とはいえ、アタマカラ、ゴブリン姉妹とチームを組んだ仲間、それは人間においても、魔獣においても共通してある友情なのだ。
このまま何もせずに帰るのは卑怯だと感じたアタマカラ。
この男もこの異世界ダンジョンに転生して、何か変わろうとしているのかもしれない。
それは初めてできた仲間に対して何かしてあげたいという友情から来るものか。
あるいは、ミノルに大敗北を喫し、己の力不足を知り、この仲間の窮地に再び立ち上がろうとするが、またしてもこの何も出来ない悔しさなのか。
どちらにせよ、だからこそ何か自身が出来ることはないかと模索した結果がこれしかなかった。
「大黒猿《コング》さんが来るまで見送りくらいさせてくれ。これぐらいしか出来ないからさ」
玄奘も何かを悟ったかのように含んだ笑みで頷いた。
同じく、ゴブリン姉妹も見送りたいという気持ちは一緒だった。
そして、冒険者や共食いに警戒しながら、合流組を待つことにした。
けれども、一時間経過しても、一向に誰かが来る気配ない。やっと動きがあったと思ったら、苦しみの魔獣の絶叫と強烈な血の臭いだった。警戒しながら、立ち上がる。
同時に洞穴を守っていた岩壁が横へと切り裂かれ、そこから亀裂が次々に生じ、岩が砕け落ちていき、その一帯に広めのスペースが出来る。
対面に土煙を強引に掻き消す黒き野獣がそこにいた。
玄奘達は顰めっ面をし、一瞬安堵を見せたが、驚愕の表情になっていく。
なぜなら、黒大猿の両手、全身が血まみれだったからだ。何があったのかと問おうとする。
しかし、鎧の顔面から覗く眼力のある両眼に返答する意志は無く、まるで当然の如く、両手に装備された五枚刃を伸ばし、右へ左へと切り裂いた。
間一髪の所で、玄奘達は退避する。
「黒大猿さんどういうことや!」
その悲しげな問い掛けに応じる事もなく、煌めく刃が襲ってくる。
回避すればするほど、どうしてという気持ちが強くなる。
お遊びは終わったとでも言いたげな黒野獣は侮蔑な両眼で見据え、口を開いた。
「お前達はここで死んでもらうことにした」
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