17 / 177
1章魔獣になりましょう
17話一目玉
しおりを挟む
そして、闘牛チームは連帯が取れていないまま、出発することになった。
事質、ミノルとオガは先へ行きどの道へ進んだかは不明なので、玄奘、アタマカラ、ゴブリン姉妹の計四名。
両脇の松明の炎を頼りに、マップと睨めっこしながら、黙々と歩き続ける。
丁度夕刻を回り、この異世界に来てから食事を摂取していないためお腹が減って仕方がない。
雲人間ならば、空気中の水蒸気で腹を満たすかと思ったらそうではないようだ。
とにかく食べ物が欲しい、このままでは倒れてしまう。
ところで、冒険者が狩猟帰りの時間なのだが、一向に冒険者に出逢う気配が無く、それどころか魔獣にすら会わない。
ただ、水滴の音が洞窟内に反響したり、何かいたと思ったら小さな蝙蝠が飛び回っているだけだった。
アタマカラは腹を押さえながら、口を開く。
「どのくらい歩いた?」
「一時間っちゅところや」
「他の連中の声とか聞こえてもいいはずだよな」
「ああ……確かにな……異様に静か過ぎる……この洞窟は広いと言ってもたかが知れてる。しかも、下から微かだが血の匂いがするわ」
その直後、前方の右側の通路から魔獣の絶叫が聞こえた。
アタマカラ達に緊張が走り、すぐさまその方角へ向かったのは正義感溢れるコブリン姉妹。
アタマカラ、玄奘もこの二人だけ任せて置くのは心配だと判断し、追従する。
その行った先の光景は予想を超える悲惨な光景だった。
皆が絶句し、硬直するのも無理もない。
十体程の魔獣達が首や脚を斬られ、大量の血を流し、死んでいた。
血の匂いは強烈で、さらに生暖かい空気が漂う、数十分程の前に犯行が行われたのは明らか。
どうやら一目玉《サイクロン》の集団で、Cブロックの増援組らしく、冒険者狩りの道中に加勢するつもりだったらしい。
「まさか冒険者にやられたのか……」
「いや、プレミア級に生息し、今勢いのあるサイクロンが駆け出し冒険者にやられるはずがねぇ」
「そうね……私も玄奘さんと同じ考えよ」
「お姉ちゃんの言う通り!」
「じゃ一体誰がこんなことをした?」
アタマカラの率直な疑問に誰一人として完璧な解答をする者はいない。
その沈黙をかき消すように、聞き覚えのある不敵な笑い声が聞こえきた。
暗闇からミノルが首を動かし、金棒を壁にぶつけて、獰猛な右目の巨眼をカッと開き、出鱈目な歯を見せ、笑い叫んだ。
それは静寂だった洞窟内に煩く反響し、今から殺す宣告を放ったのだとここにいる誰もが思った。
「フハァァァァァァァァァァ!!!!」
「……ミノルお前……」
初めて見るだろう玄奘の怒りの目は充血し、黒い縮れた毛は針金のような直毛へと変わり、緑の魔力を漂わせている。
察するにミノルと玄奘は遠征を何回か共にし、それ以前から何か因縁があるのだろうか。
「どうした? 何か言いたいことがあるか? 玄奘……それともその雲野郎かぁ?」
「正直に答えろ……これはミノルがやったんか!?」
「だったら何だ!? フハハハハハハ」
「てめぇ」
玄奘は今にも飛びかかろうかの戦闘態勢入り、ミノルも金棒を強引に引っこ抜き迎撃の準備。
しかし、玄奘を制止するのは意外に冷静なアタマカラ。
明らかに戦闘経験の差でこのままミノルと対決し、敗北するのは目に見え、仮に勝ったとしてもミノルは何か企んでいるに違いないことは確実。
だからこそ、この勝負を受ける訳にはいかない。RPGゲーム慣れしているからこそ分かる直感。
「離せアタマカラ」
「玄奘……どうしたんだ? 冷静になれ」
「何だと? こんな惨状を目の当たりにして冷静になる方がおかしいやろ!」
「それはそうだけど」
「フハハハハハハ……玄奘やめとけ……お前がこの俺様に勝てる訳がねぇ」
「!?」
「まあ顔馴染みのあるお前を殺すのは心が痛む……そこで提案だ……そこの雲野郎と俺様と勝負して俺様に勝ったらこの惨状の真犯人を教えてやるよ……」
「真犯人だと? ミノルがやったんやろ」
「フハハハハ……さてどうする雲野郎? 勝負を受けるか、あるいは受けずにここにいる全員皆殺しか選べ……フハハハハハ」
「アタマカラこんな勝負受ける必要はない! ミノルはワイが殺すんや」
やはり、ミノルが理不尽な要求をしてきたようだ。
さて、どうする。勝負を絶対受けないとは言ったたものの、状況は最悪。
ミノルは本気で全員を殺す気だろう。
すると、更なる女の子の悲鳴が真近に聞こえ、不意を付かれたと思った時には遅かった。
後ろから忍び寄ったオガがゴブリン妹の頭をわし掴みにし、鋭利な刃物を光らせる。
コブリン姉の怒りの表情で、斧で追い払おうとするが、ミノルの醜悪に満ちた一声で、その一死報いる反撃を断念せざる負えない。
「さぁぁぁぁぁぁ? どうする雲野郎!!??」
事質、ミノルとオガは先へ行きどの道へ進んだかは不明なので、玄奘、アタマカラ、ゴブリン姉妹の計四名。
両脇の松明の炎を頼りに、マップと睨めっこしながら、黙々と歩き続ける。
丁度夕刻を回り、この異世界に来てから食事を摂取していないためお腹が減って仕方がない。
雲人間ならば、空気中の水蒸気で腹を満たすかと思ったらそうではないようだ。
とにかく食べ物が欲しい、このままでは倒れてしまう。
ところで、冒険者が狩猟帰りの時間なのだが、一向に冒険者に出逢う気配が無く、それどころか魔獣にすら会わない。
ただ、水滴の音が洞窟内に反響したり、何かいたと思ったら小さな蝙蝠が飛び回っているだけだった。
アタマカラは腹を押さえながら、口を開く。
「どのくらい歩いた?」
「一時間っちゅところや」
「他の連中の声とか聞こえてもいいはずだよな」
「ああ……確かにな……異様に静か過ぎる……この洞窟は広いと言ってもたかが知れてる。しかも、下から微かだが血の匂いがするわ」
その直後、前方の右側の通路から魔獣の絶叫が聞こえた。
アタマカラ達に緊張が走り、すぐさまその方角へ向かったのは正義感溢れるコブリン姉妹。
アタマカラ、玄奘もこの二人だけ任せて置くのは心配だと判断し、追従する。
その行った先の光景は予想を超える悲惨な光景だった。
皆が絶句し、硬直するのも無理もない。
十体程の魔獣達が首や脚を斬られ、大量の血を流し、死んでいた。
血の匂いは強烈で、さらに生暖かい空気が漂う、数十分程の前に犯行が行われたのは明らか。
どうやら一目玉《サイクロン》の集団で、Cブロックの増援組らしく、冒険者狩りの道中に加勢するつもりだったらしい。
「まさか冒険者にやられたのか……」
「いや、プレミア級に生息し、今勢いのあるサイクロンが駆け出し冒険者にやられるはずがねぇ」
「そうね……私も玄奘さんと同じ考えよ」
「お姉ちゃんの言う通り!」
「じゃ一体誰がこんなことをした?」
アタマカラの率直な疑問に誰一人として完璧な解答をする者はいない。
その沈黙をかき消すように、聞き覚えのある不敵な笑い声が聞こえきた。
暗闇からミノルが首を動かし、金棒を壁にぶつけて、獰猛な右目の巨眼をカッと開き、出鱈目な歯を見せ、笑い叫んだ。
それは静寂だった洞窟内に煩く反響し、今から殺す宣告を放ったのだとここにいる誰もが思った。
「フハァァァァァァァァァァ!!!!」
「……ミノルお前……」
初めて見るだろう玄奘の怒りの目は充血し、黒い縮れた毛は針金のような直毛へと変わり、緑の魔力を漂わせている。
察するにミノルと玄奘は遠征を何回か共にし、それ以前から何か因縁があるのだろうか。
「どうした? 何か言いたいことがあるか? 玄奘……それともその雲野郎かぁ?」
「正直に答えろ……これはミノルがやったんか!?」
「だったら何だ!? フハハハハハハ」
「てめぇ」
玄奘は今にも飛びかかろうかの戦闘態勢入り、ミノルも金棒を強引に引っこ抜き迎撃の準備。
しかし、玄奘を制止するのは意外に冷静なアタマカラ。
明らかに戦闘経験の差でこのままミノルと対決し、敗北するのは目に見え、仮に勝ったとしてもミノルは何か企んでいるに違いないことは確実。
だからこそ、この勝負を受ける訳にはいかない。RPGゲーム慣れしているからこそ分かる直感。
「離せアタマカラ」
「玄奘……どうしたんだ? 冷静になれ」
「何だと? こんな惨状を目の当たりにして冷静になる方がおかしいやろ!」
「それはそうだけど」
「フハハハハハハ……玄奘やめとけ……お前がこの俺様に勝てる訳がねぇ」
「!?」
「まあ顔馴染みのあるお前を殺すのは心が痛む……そこで提案だ……そこの雲野郎と俺様と勝負して俺様に勝ったらこの惨状の真犯人を教えてやるよ……」
「真犯人だと? ミノルがやったんやろ」
「フハハハハ……さてどうする雲野郎? 勝負を受けるか、あるいは受けずにここにいる全員皆殺しか選べ……フハハハハハ」
「アタマカラこんな勝負受ける必要はない! ミノルはワイが殺すんや」
やはり、ミノルが理不尽な要求をしてきたようだ。
さて、どうする。勝負を絶対受けないとは言ったたものの、状況は最悪。
ミノルは本気で全員を殺す気だろう。
すると、更なる女の子の悲鳴が真近に聞こえ、不意を付かれたと思った時には遅かった。
後ろから忍び寄ったオガがゴブリン妹の頭をわし掴みにし、鋭利な刃物を光らせる。
コブリン姉の怒りの表情で、斧で追い払おうとするが、ミノルの醜悪に満ちた一声で、その一死報いる反撃を断念せざる負えない。
「さぁぁぁぁぁぁ? どうする雲野郎!!??」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
グーダラ王子の勘違い救国記~好き勝手にやっていたら世界を救っていたそうです~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日、ティルナグ王国の自堕落王子として有名なエルクは国王である父から辺境へ追放を言い渡される。
その後、準備もせずに木の上で昼寝をしていると、あやまって木から落ちてしまう。
そして目を覚ますと……前世の記憶を蘇らせていた。
これは自堕落に過ごしていた第二王子が、記憶を甦らせたことによって、様々な勘違いをされていく物語である。
その勘違いは種族間の蟠りを消していき、人々を幸せにしていくのだった。
退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話
菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。
そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。
超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。
極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。
生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!?
これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。
【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~失われたギフト~
高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーの主人公は、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった!
主人公は、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく!
~失われたギフト~
旅を始めたララクは、国境近くの村でかつての仲間と出会うことに。
そして一緒に合同クエストを行うことになるが、そこで彼らは不測の事態におちいることに!
装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます
tera
ファンタジー
※まだまだまだまだ更新継続中!
※書籍の詳細はteraのツイッターまで!@tera_father
※第1巻〜7巻まで好評発売中!コミックス1巻も発売中!
※書影など、公開中!
ある日、秋野冬至は異世界召喚に巻き込まれてしまった。
勇者召喚に巻き込まれた結果、チートの恩恵は無しだった。
スキルも何もない秋野冬至は一般人として生きていくことになる。
途方に暮れていた秋野冬至だが、手に持っていたアイテムの詳細が見えたり、インベントリが使えたりすることに気づく。
なんと、召喚前にやっていたゲームシステムをそっくりそのまま持っていたのだった。
その世界で秋野冬至にだけドロップアイテムとして誰かが倒した魔物の素材が拾え、お金も拾え、さらに秋野冬至だけが自由に装備を強化したり、錬金したり、ゲームのいいとこ取りみたいな事をできてしまう。
毒素擬人化小説『ウミヘビのスープ』 〜十の賢者と百の猛毒が、寄生菌バイオハザード鎮圧を目指すSFファンタジー活劇〜
天海二色
SF
西暦2320年、世界は寄生菌『珊瑚』がもたらす不治の病、『珊瑚症』に蝕まれていた。
珊瑚症に罹患した者はステージの進行と共に異形となり凶暴化し、生物災害【バイオハザード】を各地で引き起こす。
その珊瑚症の感染者が引き起こす生物災害を鎮める切り札は、毒素を宿す有毒人種《ウミヘビ》。
彼らは一人につき一つの毒素を持つ。
医師モーズは、その《ウミヘビ》を管理する研究所に奇縁によって入所する事となった。
彼はそこで《ウミヘビ》の手を借り、生物災害鎮圧及び珊瑚症の治療薬を探究することになる。
これはモーズが、治療薬『テリアカ』を作るまでの物語である。
……そして個性豊か過ぎるウミヘビと、同僚となる癖の強いクスシに振り回される物語でもある。
※《ウミヘビ》は毒劇や危険物、元素を擬人化した男子になります
※研究所に所属している職員《クスシヘビ》は全員モデルとなる化学者がいます
※この小説は国家資格である『毒劇物取扱責任者』を覚える為に考えた話なので、日本の法律や規約を世界観に採用していたりします。
参考文献
松井奈美子 一発合格! 毒物劇物取扱者試験テキスト&問題集
船山信次 史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり
齋藤勝裕 毒の科学 身近にある毒から人間がつくりだした化学物質まで
鈴木勉 毒と薬 (大人のための図鑑)
特別展「毒」 公式図録
くられ、姫川たけお 毒物ずかん: キュートであぶない毒キャラの世界へ
ジェームス・M・ラッセル著 森 寛敏監修 118元素全百科
その他広辞苑、Wikipediaなど
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる