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1章魔獣になりましょう

15話仲間

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「アホか」

「すいません」

「はぁ……種族は河魚。玄奘《げんじょう》というちゃんとした名があるんや。あんたは?」

「えーと青雲じゃなくて……アタマカラです」

「変な名前やな。それからどっから来たんや?」

「この辺りです」

「ふぅーん」

 【河魚《かわさかな》】プレミア級ダンジョンに生息。
 低位種。一時は多数いたが、ある時期を境に絶滅したと云われる。level40。

 玄奘はアタマカラから敵意を感じられないことを悟ると、ポケットから煙管を取り出し、口に咥えて、一服する。
 それにしても、この魔獣達は連合を組んでる割には警戒心や敵意が消えていないのはなぜなのだろうか。
 
「簡単なことだろうよ。第一に元々はこいつらは縄張り争いで殺し合いやら裏切りらを繰り返してきた連中……仲良くなんかできる訳がねぇよ……それが上からの命令でもな……第ニに最近ダンジョン区域で共食いが頻繁してるんや」

「共食い?」

「魔獣が魔獣を殺すのさ……本来冒険者が魔獣を殺すのが通説だが、最近になって共喰いが増えて、魔獣同士でも警戒心を怠らないようにしなければいけないんや」
 
「だから……えーと玄奘は俺を警戒してた訳か」

「そういうことや」

「分からないことがあるんだが、上からって誰のこと?」

「本当に何も知らねーのなアタマカラはーよ」

「悪かったな」
 現在ダンジョンにいる全ての魔獣を統制している団体を死帝教会《シテイキョウカイ》と呼ぶ。
 その構成員は全て魔獣とされている。主な活動は冒険者狩りモンスター大連合を組み、遠征と称して下級や上級ダンジョンに行き、冒険者を狩っていき、食らったり、所持品を奪い取る。
 ただ、その活動の本当の真意は不明。
 ちなみに死帝教会が主神として崇め奉る死皇帝《シコウテイ》に関してだが詳細は明らかにはされていない。
 また、古い文献を参照すると通説では魔獣や人間を創造したのは人神《イシュラ》とされているのが一般的であるが、別説において世界の大罪獣の一体とされ、悪魔の創造主の異名を持ったこの死皇帝《シコウテイ》が魔獣を生み出したのではないかと云われている。
 噂では死帝は七英雄の激怒によって既に死亡している。

「要するにこのダンジョンには敵だらけって訳や。悪いことは言わねーこの遠征が終わったらすぐ自領域に戻るのが得策やで。それにあんたはミノルに目を付けられてるから気いつけや」

 そんな雑談をしてる内に、モンスター会議が始まった。
 今回の遠征はモンスター大連合をAからHにそれぞれブロック毎に別れ、上級冒険者が通過する道を回避することに留意し、各ブロックでも更に細分化しチームを構成し、それぞれ駆け出し冒険者を一人残らず狩っていく計画。
 当のCブロックはゴブリンロードの洞窟を担当することになる。ゴブリンロードの洞窟は全域が巨大な洞窟に覆われ、いくつも枝分かれになり迷宮となっている。 
 さらにCブロックを分けると、閻魔チーム、大黒猿チーム、闘牛チーム、巨大植物チームとなり、不運なことにアタマカラは闘牛チームに入れられた。 
 そして、冒険者狩りは他ブロックでは既に実行され、Cブロックの魔獣達もそれに感化し、チームに別れ、広い洞窟ホールから枝分かれの道へと向かって行った。
 

 
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