時空魔術操縦士の冒険記

一色

文字の大きさ
上 下
52 / 175
2章ダンジョンへ向かおう

3話洞窟1

しおりを挟む
 マシュが「間違ってダンジョンに送ったんじゃないの?」

「まあいっか」

 突然「あああああああああ!!!!」という地獄の底から叫んでいるかのような声がする。
 ビクッとする。
 アイリスとリオラが抱き寄せ合って震えていた。

「怖いっ!」

「何ですか……ここは……」

 マシュも怖いのか分からないが先程の声に苛立ちを露わにしている。

「びっくりさせないでよ!! もう!!」  

 カバーニは周囲を睨み警戒している。  

「かかってこいや!!!!」

「あまり大声出すな! さっきのお前か?」

「さっき? 知らんがな……」

「まずは皆一回冷静になって……持ち物とか確認するべきだろ」

「うるせぇな! 前進のみやろ!!」

 声を荒げるカバーニ。本当に厄介な奴だ。  

「だから大声を出すな……」と囁く俺。

 マシュが俺に同調するように話をし始める。

「まず道具よ……回復薬、異常回復薬、脱出用道具《バルス》、発掘道具《ピッコロ》は全員持ってるわね?」

 皆頷く。一頭のハイエナだけが全然無視の様子。
 マシュはクエスト内容を【MC】で調べる。

「クエストは白亜河馬《ヒッポポタムス》のニ体の亡骸入手と討伐……ね」

「生息地は次の休憩所《セーブポイント》の行った先か……」

 俺は熟知をしている情報をさらけ出すも、カバーニが突然走り出した。

「お……」

 もうカバーニの姿は前方に見えなくなった。
 暗闇で余計に見えない。
 俺は皆に問い掛ける

「おい? カバーニはどこへ行った?」

「知らないわ……あの人と二度とパーティーを組みたくないわ」

 眉根を寄せるマシュ。

「全くあいつ何やってんだよ……単独行動の度が過ぎるぞ」
 
「アル以上にあの人は異常よ!」

「俺以上ってどういう意味だよ!!」

「大声出さないでよ」

「それはカバーニだろうが」

「あなたもよ」 

 何でマシュと喧嘩しなければいけないんだよ。
 全く全てカバーニのせいだ。

「まあまあ……早く追いつきましょう……カバーニ君に」

「そうだねっアイリスちゃんの言う通りだよ」

 そして、冷たい地面を歩いていき、歩く度に冷たい水が足に染みる。
 永遠に続く暗い直進の道。ただ松明が一定距離毎に置かれているだけだ。
 俺は先頭を行く。最後尾はマシュ。
 後ろから突然叫び声が聞こえる。

「きゃああああ!!!!」

 俺はビクッとし即座に後ろを向く。
 リオラ、アイリスも同時に振り向く。
 そこには大きな蛾を頭に乗せた黒髪の少女がいて、普段の冷たい表情は無く泣き崩れている。
 
「助けてぇぇぇぇ!!!!」

 子供のように泣くマシュ。
 皆マシュの表情に唖然とする。

「おい大丈夫か?」

「アル……頭の……早く取ってよ……ぐすん」

「蝶蛾《ヘビモス》くらい自分倒せよ」

「うっ……うっ……嫌いだから無理なの……取って」

「取ってくださいだろ?」 

「何? アルの分際で私にそんな口を訊いていいの?」

「じゃいいよ……取ってやんねーよ」

「え……酷い……分かった……取ってくださいお願いします」

 懇願するマシュ。
 俺は溜息をつきながら右手に直剣を取り出し、蝶蛾《ヘビモス》を一瞬で撃退。
 安堵し泣き止むマシュ。
 涙を拭うマシュはリオラとアイリスに抱えられて立ち上がる。

 「行くぞ」

 そして、歩いて進んで行くと二つの別れ道があった。
 これはどちらに行くべきか。
 俺は皆を見る。皆右側を指差す。
 そして、右側へ進んで行く。
 風景変わらずにただ暗い洞窟が続き、だんだんと道幅が大きくなり、微かに獣の臭いがする。
 次第に鼓動が音を立て、暗闇に潜む赤いセンサー。
    赤い光芒をした双眼が待ち受け、更に赤い光芒が増える。
 俺達は戦闘態勢の構えを取り、すると次第に獣の姿がよく見えるようになる。
 十匹ぐらいの中型犬が待ち構えていた。
 獰猛な目と鋭い牙、大きな体躯。
 体長3メートル、全身に鉄の鎧を纏っている。
 茶と黒が混じった色。肉食。
【噛番犬《ガブ》】
 レベル50。
 口から唾液を垂れ流し、息を荒くこちらを睨みつける。  

「フンッフンッフンッ……ヒィヒィヒィヒィ」

 皆は魔戦を人型サイズに具現化し、右手に直剣を振り回し噛番犬《ガブ》の群衆へ突っ込む。

「行くぞ!!!!」

 噛番犬《ガブ》の群衆は俊敏性を活かして回避し、一斉にシルバディウス全身に噛み付く。 

「ガルル!! ガルル!! ガルル!!」

 涎《よだれ》と鋭い牙が機体を自由を奪う。
 俺は高速回転し、何とか追い払う。
 追い払っても再度噛みついてくる噛番犬《ガブ》を直剣で何度となく追い払っていくも、どんどん魔力が減っていく。

「ガルル!! ガルル!! ガルル!!」

「ちっ!! はぁ!! 散れ!!」
 
 アイリスが「援護します!!」
 が両手の銃で乱射していく。
 変幻自在に弾丸が飛ばしていく。
 噛番犬《ガブ》らに命中し、「ガァァァァ!!!!」と痛みで叫び声を上げる。
 それでも噛み付く攻撃は治まらない。
 そして、マシュも参戦し、右手に杖を振り回し、「雷電《サンダーブラスト》!!!!」を放つ。
 蒼幻影は杖から電撃を放射していく。
 雷は自由自在な動きで、噛番犬《ガブ》らに攻撃が命中し、丸焦げになり、その場に横たわる。
 だが、俺と数体の噛番犬《ガブ》は応戦中。
 しかし、斬って斬ってもきりがないな。
 そこへ白金を基調にした細長い妖艶な装甲が現れる。
 その装甲に乗るのはリオラ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

もうダメだ。俺の人生詰んでいる。

静馬⭐︎GTR
SF
 『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。     (アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)

俺は異端児生活を楽しめているのか(日常からの脱出)

SF
学園ラブコメ?異端児の物語です。書くの初めてですが頑張って書いていきます。SFとラブコメが混ざった感じの小説になっております。 主人公☆は人の気持ちが分かり、青春出来ない体質になってしまった、 それを治すために色々な人が関わって異能に目覚めたり青春を出来るのか?が醍醐味な小説です。

幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ

黒陽 光
SF
 その日、1973年のある日。空から降りてきたのは神の祝福などではなく、終わりのない戦いをもたらす招かれざる来訪者だった。  現れた地球外の不明生命体、"幻魔"と名付けられた異形の怪異たちは地球上の六ヶ所へ巣を落着させ、幻基巣と呼ばれるそこから無尽蔵に湧き出て地球人類に対しての侵略行動を開始した。コミュニケーションを取ることすら叶わぬ異形を相手に、人類は嘗てない絶滅戦争へと否応なく突入していくこととなる。  そんな中、人類は全高8mの人型機動兵器、T.A.M.S(タムス)の開発に成功。遂に人類は幻魔と対等に渡り合えるようにはなったものの、しかし戦いは膠着状態に陥り。四十年あまりの長きに渡り続く戦いは、しかし未だにその終わりが見えないでいた。  ――――これは、絶望に抗う少年少女たちの物語。多くの犠牲を払い、それでも生きて。いなくなってしまった愛しい者たちの遺した想いを道標とし、抗い続ける少年少女たちの物語だ。 表紙は頂き物です、ありがとうございます。 ※カクヨムさんでも重複掲載始めました。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

地球防衛チームテレストリアルガードの都合!? 9章

のどか
SF
読んでいただけたら幸いです

処理中です...