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1章ゴブミ脱走

1章11話憎しみ

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 夜が明け、気づくと日は昇り、待ち合わせ時間の午後2時の10時間前、つまり、午前4時に起床。
 藁という劣悪な環境でも慣れ故か、爆睡し、目をバッチリで、体調も良好だった。
 そして、朝一番で一目散に、昨日調べたゴミ捨て場へ行き、化粧品を漁り何個拾って、公衆トイレへ駆け込み、何とか簡単な口紅と白いファンデーションで化粧を顔に施した。

「うふふ」
 
 そして、ついでに拾った男用のコートに身を包んで変装をしながら、待ち合わせの噴水広場まで急いで向かった。
 賑やかな人混みの雑踏を掻き分けながら、噴水の前で男性を待つ。
 初めて男性から誘われて高まる好奇心。
 特徴は白金の洋装に身を包み、マッシュルームみたいな銀の髪型、切れ長のエメラルドの両眼、鼻の下に大きなほくろ、そんな風に目を追ってると、目の前にそのような思い描いた男性が誰かを探しながら現れた。
 まずまずね、そんな男。
 普段なら絶対私から声は掛けないが、久々で気持ちが高ぶってるせいか、私から声を掛けることにした。

「あの?」

 怪訝な表情をする男。

「え?」

 人違いかしら。
 私は声を詰まらせながらも、

「アストレア・スルガさんですか?」

 男の不安げな顔は明るくなり、近づいて、

「あれ、ゴブリアス・ゴブミさんですか?」

「はい」

「よろしくお願いします」

 スルガは手を差し出した。
 もちろん、私は期待を膨らませながら、握った。
 すると、スルガがまた怪訝な顔を一瞬したものの、何かに納得したのか。

「すごいヌメヌメしてるようだけど、暑いですか?」

 汗?
 汗なんて私掻いてないわ。
 何なのこの人失礼ね。
 すると、スルガはハンカチで手を拭きながら、急に思い詰めたような顔をする。

「今日はそんなに暑いかな。今は冬だし……まあ、でも、走ったら汗をかくこともあるよな」

「ええ、そうです」  

 私はそのスルガの思いついた解釈に頷いた。
 すると、スルガは改まった表情で、ポケットから小さな箱を取り出し、パカッと開き、その中にはダイヤモンドが輝く指輪だった。
 スルガはどこか固く、脚を震わして腰を落とし、けれど真剣な様子で、差し出した。

「ところで、会って早々なんですが僕と結婚して頂けませんか?」

 いきなりだった。
 私は初めてのことで、気が動転し、つい頷いて、受け取ってしまった。

「はい」

「はぁ……良かった」

 スルガはキノコの頭を掻きながら、気持ち悪い顔でほっと胸をなで下ろす。

「正直断られるかと思いました。良かった」

「はい」

 考えさせてと言うタイミングを逃してしまった。
 いくらなんでも、結婚は早いかもしれない。
 お互いのことよく知らないし。

「それより、ゴブミさん、顔を見せてくれませんか?」

 その要求に私は今更ながら、現実を突きつけられた。
 初めてに男性に誘われて、舞い上がってしまって会い、結婚の約束までしてしまった。
 そして、そんな私はゴブリンの醜い顔なのに、自分の顔もわきまえず、こんなことになってしまった。
 なんて、馬鹿なの。
 顔なんて見せられないわ。
 もう、逃げなくちゃ……。

「待ってよ! ゴブミさん」

 私は腕をスルガに掴まれ、逃げるため抵抗した。

「ちょっと離して! 離して!」

「あんたそれはないじゃないか。高額な結婚指輪受け取った癖に持ち逃げるなんて卑怯じゃないか! こっちは登録料の他に紹介料やらなんやら払ったんだぞ? ここまで来て逃げられた大損だ!」

 スルガは連れない態度に急に怒りを覚える。
 それでも、私は抵抗した。

「指輪は返しますから。やめてください」

「ふざけるな! 逃げるな!」  

「痛い、痛い、痛い」

「その顔を見せろっっって!」

「やめて!」

 スルガは必死に顔を隠そうとする私に腹が立ち、強引にフードを取ろうとする。
 次第に痴話喧嘩と勘違いした野次馬達が集まり始める。

「大丈夫かあいつら」

「何? 喧嘩?」

「こんな所で喧嘩、熱いね。ヒューヒューヒュー」

 こんな所でゴブリンの正体がバレたらまずい。
 それでも、スルガは強引にフードをを取ろうとする、そして、遂に掴んだ。
 その瞬間、スルガがニタリと笑う。

「や、やめて」

「ざまみやがれ」
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