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2章魔術師学院(閑話)

8話不穏

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「疑問があるんだが、なぜ俺が入学試験最下位だと知っている? 確か試験結果は公表されていないはずだが……」

「は? 本当あなたって馬鹿ね! 私はオルガネスト子爵家よ。それなりの情報の伝があるのよ。それに、Aクラスのほとんどは有力な貴族の出身で、それぐらいの情報が掴んでるのが当然なの」

「へぇ……そうか」 

「聞くまでもないけど、あなたは貴族なの?」

 この女は随分、家柄や順位で人の成りを決めるのか、好ましくない。

「平民だが?」

「ふふふ……やっぱりね。底辺の男って訳ね。ところで、さっきのことだけど、あなたが私の手首を掴んだせいで、怪我したんだけど? どうしてくれるの?」

 クロテアは包帯が巻かれた細い手首を魅せつけ、更に憎たらしい顔を近づける。
 強く掴んだ訳ではないのだが。

「先生に言ってもいいのよ? あなたにそういうことされたってね。そうしたら、あなた退学どころじゃ済まないわ」

「だったら、すれば良いんじゃないか?」

「ねぇ……ゼルフォード君、結構かっこい顔してるのね。まあ、私も鬼じゃないのよ、一応女なの。許してあげてもいいわ。そんな盗っ人なんか見限って、私の方に来ない? 良い思いをたっぷりさせてあげるわ」

 クロテアは胸元を大きく開け、ピンク色のブラジャーと柔らかそうな胸を魅せつける。
 誘惑か……。
 思わず、土下座してでも、甘い誘惑の香りを堪能したいんだが、フレスに背中をつねられていてそれは出来ない。

「なぜそこまでしてフレスを陥れたいんだ? 金が欲しいのか? やるぞ……いくらだ?」

「は?……何よその言い方……私を物乞いみたいに扱わないでくれる? そう……あなたはあんな子供っぽい女が好きなのね? モテないあんたにはお似合いそうね。今に見てなさい、二人とも潰してやるから」

 この女はいったい何がしたいんだ。

「ところで、一つ気になっていたんだが、お前、ハーフエルフか?」

 クロテアは目を見開いてはっとし動揺し、顔を真っ赤にし、声を荒げる。

「私がエルフの訳ないじゃない!」

「そうよ! いい加減にしろよ! ゼルフォード」

 禁句だったか。
 この世界にはエルフを嫌いな者が少なからずいる。エルフの忌避思想あるくらいだ。
 エルフは魔族に近い存在というのが理由らしい。
 まあ、世間体や家柄を考えたら、隠すのは当然か。
 
「エルフでもいいと思うが……俺は可愛いと思うが」
 
 クロテアはポッと赤くし、放心したが、一瞬で睨んだ表情を向ける。

「か……かわいい? ……私が? 馬鹿にすんな………」

 突如、30代ぐらいの兄ちゃんが空中から現れた。

「え?」

 金髪、よれよれのワイシャツとズボンを着込み、なぜだか下駄を履いてる。
 ダメなサラリーマンっぽい印象だ。
 不敵な目つきで、砂煙を舞い上がらせながらの登場。

「よぉ? みんな騒いでお楽しみの時間悪いな。あっ、そうだ、挨拶しないとな? Aクラスの諸君おはよう。担任のシルバラード=イルガ先生だ!」

 がやがやと会話していた生徒達が静まり返る。
 なんだこの担任。
 イルガは両手を叩き、笑みを浮かべる。

「では早速だが、みんなおたのしみの入学式初日の恒例行事、魔術小テスト始めるぞ!」
 

 
 
 
 
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