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1章辺鄙な領にて
20話母さん
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あ! 母さんの匂いだ! 母さんが来る!
赤ちゃんは嗅覚は既に備わっていて、匂いで母さんを感じとることができます
やはり、ユスアは謎の美少女従者と共に背中を支えながら、現れた。
特に興奮したのは、目を輝かし、頬を紅潮させたサリバンだ。
「あっ! 母様!」
ユスアは、美しいロングの桃髪をツインテールにし、白金のエプロン姿で、真っ白くて、露わになった細い腕にほんのりと汗を掻き、頬を紅潮させながら、陰鬱な紫眼を見せて、疲れた様子だった。
一方、その謎の従者とは16でありながら高身長、茶色のショート髪、青色の瞳、アホ毛の明るい、天然系美少女。装備はすらっとしたスタイルに銀色の鎧を纏い、黒い剣を携え、コンパクトな武装をしている。
アセドラ魔術騎士第一学院高等科に通う才女、高等生の身分でありながら、その才を認められ、ウゼルゲート魔術騎士団の警備部隊に所属し、ウゼルゲート家の屋敷の警護を担当している。
名はキングズ=ラバース=セルナ。名のあるキングズ騎士家の出身だ。
その時、スミスがまさしく鬼姑のような顔で、厳しく声を発する。
「ユスア、これはどういうことです! 赤子であるシウスをほったらかしにして、料理に興じるとはどういうことです! シウスに何かあったらどうするのですか!?」
「はい……お義理母(かあ)様……も、申し訳ありません」
すると、セルナが明るく和ませようと笑みを浮かべ、ユスアを庇うようにして前に出た。
「あははは、大奥様えーそんなに怒らなくても……だって、たった数分ですよー?」
「お黙り、なんて無礼な言葉遣い……従者の分際で主の母に向かってはその態度は何ですか!? 下がりなさい!」
「あっ……すいません!」
「下がれと言ってるのです? お分かりになりませんか?」
「はい……出過ぎた真似を致しま……た。申し訳ないです……」
セルナは頭に手を当て、やっちゃったと声を小さく漏らした。
突然の、あまりのスミスの静かなる怒りの気迫に、緊張が高まる。
「ウゼルゲート家は今が一番大事な時期なのに、家族を守るあなたがこのようなことでは困りますよ!」
何もなかったんだから、もういいじゃないか。
その時、サリバンが赤い両眼を涙ぐませながら、ユスアを守るようにして、両手を横に伸ばした。
「母様はわるくはないの!……シウスをいじめてしまったのは……わ、わたしよ……だ、だがら、があざま、いい……じめないで」
「サリバン……別にあなたが悪いと言っている訳じゃないの」
「が……があざま……を……い……いじめないで! があざまを……」
すると、ユスアが女神の微笑みで、後ろからサリバンを抱き締めた。
「……もう、いいのよ。母さんはもう大丈夫だから、泣かないの……ね? ほら、スマイルよ」
「があさまままぁぁぁあ!」
スミスはそのふたり悲哀に満ちた寄り添う姿を見て、目を伏せ、一言謝って、部屋を出て行った。
そして、部屋には穏やかな空気が戻りつつあった。
「母様、大丈夫?」
「……私がいけないの。シウスとサリバンをほったらかしにして、お菓子なんて作るんじやなかったわ……そうすれば、義理のお母さんを怒らすこともなかった」
「ううんん! そんなこと言わないで! 母様のケーキは世界一おいしかったわ」
「ありがとう、サリバン……あれ……うぅ」
「母様……?」
「久し振りに身体を使ったから、ちょっと目眩がしただけよ」
すると、セルナがユスアの背を支え、身を案じる。
「きっと、出産したばかりで身体が弱っているんじゃ? ベットで休んだ方が宜しいんじゃないですかー?」
「本当に少しだけだから、大丈夫よ」
「いけませんよー私セルナが今すぐ椅子をご用意致しますす!」
「そうね。でも、それより、まず、シウスを抱かせて」
そして、俺はユスアに抱かれ、いいこいいこと揺らされ、皆も椅子に座って、紅茶やミルクを飲みながら、一服する時間が訪れた。
窓から見えるのは中庭、暖かな太陽の光に照らされた大きな樹木が風によって揺れ、緑色の葉を舞い上がらせ、幾羽かの白い鳥もやってきて、ぐるぐると一緒になって遊んでいる。
すると、紅茶にはほとんど手を付けず、かしこまった状態で座っていたセルナが何かを思い出したかのような慌てて、携えたアイテム袋から新しい羊皮紙を出現させた。
【収納空間袋】
ランク D
品質 D
効能 アイテムを袋に保有することが出来る。
※1ヶ月、品質保証100% 2ヶ月以降は品質50%程度に低下 ただし、品物によって差がある
所有数 20/30
「先程、ユスア様のお母上の従者とお会いして、ユスア様にこの招待状を渡して欲しいとのことでした。これは来週の土曜日に行われるユスア様の父君上の生誕百周年パーティーの招待状でこざいます。ユスア様にはぜひ参加して欲しいとおっしゃっていました」
父上とはユスア、カペラの実の父親。デルトヘルム伯爵家の現当主デルトヘルム=ディアガルド。カペラはユスアの妹だ。
「そうだったわね。でも、シウスを連れて、行こうとは思っていたけど、ちょっと厳しいかもしれないわね……それに」
サリバンが何かを察したように、子犬のように心配そうな表情で、立ち上がった。
「母様……行って! わたしとシウスは大丈夫だから」
「でも……」
「わたしがシウスの面倒をみるっ。だって、シウスのお姉さんですもの」
「サリバン……そ、そうね、もうお姉ちゃんになったものね。なら、シウスの面倒はサリバンにお願いするわね」
「うん!」
「ふふふ」
赤ちゃんは嗅覚は既に備わっていて、匂いで母さんを感じとることができます
やはり、ユスアは謎の美少女従者と共に背中を支えながら、現れた。
特に興奮したのは、目を輝かし、頬を紅潮させたサリバンだ。
「あっ! 母様!」
ユスアは、美しいロングの桃髪をツインテールにし、白金のエプロン姿で、真っ白くて、露わになった細い腕にほんのりと汗を掻き、頬を紅潮させながら、陰鬱な紫眼を見せて、疲れた様子だった。
一方、その謎の従者とは16でありながら高身長、茶色のショート髪、青色の瞳、アホ毛の明るい、天然系美少女。装備はすらっとしたスタイルに銀色の鎧を纏い、黒い剣を携え、コンパクトな武装をしている。
アセドラ魔術騎士第一学院高等科に通う才女、高等生の身分でありながら、その才を認められ、ウゼルゲート魔術騎士団の警備部隊に所属し、ウゼルゲート家の屋敷の警護を担当している。
名はキングズ=ラバース=セルナ。名のあるキングズ騎士家の出身だ。
その時、スミスがまさしく鬼姑のような顔で、厳しく声を発する。
「ユスア、これはどういうことです! 赤子であるシウスをほったらかしにして、料理に興じるとはどういうことです! シウスに何かあったらどうするのですか!?」
「はい……お義理母(かあ)様……も、申し訳ありません」
すると、セルナが明るく和ませようと笑みを浮かべ、ユスアを庇うようにして前に出た。
「あははは、大奥様えーそんなに怒らなくても……だって、たった数分ですよー?」
「お黙り、なんて無礼な言葉遣い……従者の分際で主の母に向かってはその態度は何ですか!? 下がりなさい!」
「あっ……すいません!」
「下がれと言ってるのです? お分かりになりませんか?」
「はい……出過ぎた真似を致しま……た。申し訳ないです……」
セルナは頭に手を当て、やっちゃったと声を小さく漏らした。
突然の、あまりのスミスの静かなる怒りの気迫に、緊張が高まる。
「ウゼルゲート家は今が一番大事な時期なのに、家族を守るあなたがこのようなことでは困りますよ!」
何もなかったんだから、もういいじゃないか。
その時、サリバンが赤い両眼を涙ぐませながら、ユスアを守るようにして、両手を横に伸ばした。
「母様はわるくはないの!……シウスをいじめてしまったのは……わ、わたしよ……だ、だがら、があざま、いい……じめないで」
「サリバン……別にあなたが悪いと言っている訳じゃないの」
「が……があざま……を……い……いじめないで! があざまを……」
すると、ユスアが女神の微笑みで、後ろからサリバンを抱き締めた。
「……もう、いいのよ。母さんはもう大丈夫だから、泣かないの……ね? ほら、スマイルよ」
「があさまままぁぁぁあ!」
スミスはそのふたり悲哀に満ちた寄り添う姿を見て、目を伏せ、一言謝って、部屋を出て行った。
そして、部屋には穏やかな空気が戻りつつあった。
「母様、大丈夫?」
「……私がいけないの。シウスとサリバンをほったらかしにして、お菓子なんて作るんじやなかったわ……そうすれば、義理のお母さんを怒らすこともなかった」
「ううんん! そんなこと言わないで! 母様のケーキは世界一おいしかったわ」
「ありがとう、サリバン……あれ……うぅ」
「母様……?」
「久し振りに身体を使ったから、ちょっと目眩がしただけよ」
すると、セルナがユスアの背を支え、身を案じる。
「きっと、出産したばかりで身体が弱っているんじゃ? ベットで休んだ方が宜しいんじゃないですかー?」
「本当に少しだけだから、大丈夫よ」
「いけませんよー私セルナが今すぐ椅子をご用意致しますす!」
「そうね。でも、それより、まず、シウスを抱かせて」
そして、俺はユスアに抱かれ、いいこいいこと揺らされ、皆も椅子に座って、紅茶やミルクを飲みながら、一服する時間が訪れた。
窓から見えるのは中庭、暖かな太陽の光に照らされた大きな樹木が風によって揺れ、緑色の葉を舞い上がらせ、幾羽かの白い鳥もやってきて、ぐるぐると一緒になって遊んでいる。
すると、紅茶にはほとんど手を付けず、かしこまった状態で座っていたセルナが何かを思い出したかのような慌てて、携えたアイテム袋から新しい羊皮紙を出現させた。
【収納空間袋】
ランク D
品質 D
効能 アイテムを袋に保有することが出来る。
※1ヶ月、品質保証100% 2ヶ月以降は品質50%程度に低下 ただし、品物によって差がある
所有数 20/30
「先程、ユスア様のお母上の従者とお会いして、ユスア様にこの招待状を渡して欲しいとのことでした。これは来週の土曜日に行われるユスア様の父君上の生誕百周年パーティーの招待状でこざいます。ユスア様にはぜひ参加して欲しいとおっしゃっていました」
父上とはユスア、カペラの実の父親。デルトヘルム伯爵家の現当主デルトヘルム=ディアガルド。カペラはユスアの妹だ。
「そうだったわね。でも、シウスを連れて、行こうとは思っていたけど、ちょっと厳しいかもしれないわね……それに」
サリバンが何かを察したように、子犬のように心配そうな表情で、立ち上がった。
「母様……行って! わたしとシウスは大丈夫だから」
「でも……」
「わたしがシウスの面倒をみるっ。だって、シウスのお姉さんですもの」
「サリバン……そ、そうね、もうお姉ちゃんになったものね。なら、シウスの面倒はサリバンにお願いするわね」
「うん!」
「ふふふ」
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