最強の魔王による転生令嬢を巻き込んだ異世界チート無双計画

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7章魔王軍団VS世界革命軍団

7章4話現れた救世主ゴブリンの英雄

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 そして、あれから数日が経過し、情報収集へ向かったネズやマツタケの連絡は無い。
 不安に駆られ、あらかじめ要塞として決めていた山奥のずっと深いところにある、不釣り合いな大きい施設にシラユキ達は移動した。
 元は高級ホテルだったが、不況の煽りを受け、潰れしまった。
 黒塗りのホテルで、全室の窓ガラスは割れ、周辺は雑草がぼうぼうと生えている。
 すぐにこの辺りに強力な結界を張り、防御を固める。
 外では、シラユキとデュランダルで守りを固め、ホテル内では白豚とヒヨリで得意な武器で警戒を固めた。
 すると、デュランダルが森林のざわめきを感じる。

「来る」
 
 その時、四方八方から鎧を纏ったゴブリン騎士達が飛び出し、張り巡らされた結界に一斉にツルハシで攻撃する。
 奇怪な発狂をしながら、出鱈目に打ちつける。

「ギャァ! ギャア! ギャァァァァアァ!!!」
 
 結界がやや削られた境に、ゴブリン騎士達は団結の頷きと、奇怪な叫び声を上げ、同時にツルハシで、その局所を打ちつけ、亀裂を生じさせた。
 デュランダルは黒刀を抜く準備、シラユキは氷の魔力を蓄える。
 だが、突如、一体の黄色のヘルメットを被り、金色の豪奢な鎧を纏ったゴブリンが現れた。
 明らかに他のゴブリン騎士とは違く、体格も恵まれている。
 そして、エメラルド色のドリル剣を華麗に取り出し、恐ろしい高速の走り、ゴブリン騎士達を切り裂きながら、ホテルを一周する。
 一分かからずに、ゴブリン騎士達の亡骸が周囲に横たわっていた。
 デュランダルとシラユキは驚愕と恐怖の目をし、立ち尽くす。
 その間にも、その突如現れた一体のゴブリンは存在擬態というスキルを発動し、透明になった体で、その結界を糸も簡単にすり抜け、中に入る。
 警戒の群青の両眼で、声を荒げるシラユキ。

「何者だ!?」
 
 そのゴブリンは黄色のヘルメットを被り直し、顔を露わにする。
 魔王にそっくりな青眼。
 エルフのような両耳。
 豪奢な黄金の鎧と180メートルはある逞しい体格。
 優しげな笑みを浮かべ、軽く会釈する。

「お久しぶりです。僕は魔王様からゴブリンの文明の発掘、管理、ゴブリンの世話を任されたゴブリンの英雄です。知らない方もおられるようですから、ちなみに、成長して、ゴブリン隊長からゴブリン騎士へ、そして、ゴブリンの英雄になりました」

 シラユキは咄嗟にこのゴブリンの英雄が魔王を殺そうとした記憶を思い出す、しかし、それは魔王様の過去改変で、無かったことにされていた。
 だが、こいつは魔王様を殺そうとした事実が私の中にある。
 許す訳にはいかない。
 シラユキは瞬時に氷の剣をを構築し、ゴブリンの英雄に襲いかかろうと走り出す。

「魔王様の怨みここで晴らさせてもらう」

 デュランダルが制止する声を上げるも、聞く耳を持たない。

「待て!」

 瞬間、シラユキが横に一閃した先は誰もいなかった。
 気づくと、背後には腕を組み防御すらしないゴブリンの英雄がいた。
 すぐさま、シラユキは氷の剣を首元に狙うが、結果は空を斬っただけだった。
 横にふらっと流れるゴブリンの英雄。
 ゴブリンの英雄は笑みを浮かべ、物腰の柔らかい声で、

「僕は戦いに来た訳ではありません。魔王様の力になりたくて参った次第なんです。どうしても、ご恩を返したくて」

「嘘を抜かせ!」

 氷の剣を突き出そうとするが、突如割って入ったデュランダルの一振りで振り上げられ、空中に飛んで、落下した。
 凄まじい緊迫の中、デュランダルがシラユキを諫める。

「内部で争ってる暇はない。本来、力を貸してくれと頭を下げるのがこちらだ。相手が力を貸してくれると言ったのだ。甘んじて受けよう」

「しかしっ……こいつは」

「責任はワシが取る」

「……絶対に認めない」

 目を潤ませ、デュランダルとゴブリンの英雄を睨んだ後、ホテルの後ろへと歩いて行く。
 ゴブリンの英雄は物腰柔らく、シラユキに頭を下げた。
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