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7章魔王軍団VS世界革命軍団
7章3話弱小魔王軍団は戦う
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ピロロ王国から少し離れた、外れのひっそりとした山奥に黄色のバナナのようなキノコ帽子を被った男が背に籠を背負い、全裸で、キノコ採りに勤しんでいた。
樹木に生えたキノコを見つけると、男は職人のキリッとした目つきとなり、この茶色と白色が調和したキノコはマツタケであることを瞬時に判断、慣れた手つきでサッと採り、籠へポイッと入れる。
その戦いという名の採集が終わると、額に溜まった汗を拭い、恍惚の表情を覚えた。
「はぁ。これで、今月の食糧は大丈夫や」
その時、山林がザザザと動く。
マツタケはミノタウロスかクマかと思い、焦るが、そこから出て来たのは切羽詰まった様子の白い雪のような綺麗な女だった。
「おぉっ!」
「糞キノコ、探したぞ!」
シラユキは眉間に皺を寄せ、相変わらず魔王以外には態度が大きい。
マツタケは一瞬、面食らうも、だいたい事態は飲み込んだようで、そっぽを向いた。
「魔王様が連れ去れた。今すぐ魔王様を助けに行くぞ」
「はぁ……誰に連れ去れたんや」
「ゴブミというゴブリンだ。いや、正確にはそのゴブミは魔王様の身体を乗っ取り、どこかの異空間に行ってしまった……」
威勢は徐々に弱まり、声を震わせていく。
マツタケは冷静な態度で、厳しい細い目つき対する。
「どこの異空間や」
「分からん」
「話にならんわ」
マツタケはお手上げと云った態度で、
「唯一の希望である魔王おらん。そして、世界革命軍はワイらを罪人として扱い、今血眼に探してるわ。最悪な状況や」
シラユキは頭で分かっているが、群青の両眼を潤ませ、睨むようにして、両手は悔しさを滲ませ、そこで、立ち尽くす。
「くそ……私が魔王様の異変をちゃんと気づいてあげれれば、こんなことにはならなかった」
「そんなこと言ったて、しゃーないわ。それに、憑依って言うんか? 呪いというんか? そもそも、その呪いを受けた魔王に責任あるんや」
「私はどうすれば……」
「とにかく、今は世界革命軍から逃げまくりながら、戦力を集めようや」
「……」
*
日は沈み、暗闇の山奥。
焚き火を囲う、魔王軍団のメンバー達。
マツタケが険しい表情で、全員のメンバーに視線を向けた後、深い溜め息を付いた。
「デュランダル、シラユキは主戦力になるが……」
哀れみの細い目で、のほほんとした美少女、白豚、小さな鼠を見る。
「あんたら帰っていいで……」
ポカーンとする雑魚三人組。
すると、白豚が両手に中華鍋とお玉をガチンと鳴らせ、興奮した様子で、
「屋台で三十年料理人をやってきた、腕と足腰に自信がある。それに二人がいなくなったなんて黙っていられねぇーよ。もう、アカリはうちの娘みたいなもんだし、魔王には屋台が火事で燃やされた時に世話になったしな」
「その心意気は嬉しいが」
「おれに任せろ!」
「……」
一方、ヒヨリとネズはひっそりと手を上げ、
「私達は後方支援に専念します」
「わわわたくしもでございます。治療が必要になりますから」
ネズの前戦で戦わなくてホッとした様子を見かねた、白豚が何かを思ったのか、マツタケに訴える。
「ネズは情報戦が得意です」
「ええ、ちちょっと待ってください。得意では無いです」
「お前さんも魔王に恩義があるんだろ! 返す時は今なんじゃないか!」
「別に恩義なんか……感じてませんけど。むしろ、恐怖ですよ」
白豚は熱弁を奮った途中で、何かをふと思い出す。
「そういえば、ネズは魔王の知り合いの蟻の奴を知っているって言ってたな」
急に慌て出すネズ。どうも後ろめたい話らしい。
マツタケは、前のめりになって、ネズに問い掛ける。
「そいつ戦力になるんか!」
仕方なしに答えるネズ。
「はぁ……どうでしょうね。魔王様……いや、クリムト時代に、蟻と対立があって、蟻は相当クリムトを怨んでいるようで、助けてくれるかどうか分かりませんよ」
「とにかく、頼んでみてくれや。もしかしたら、蟻もに主戦力なるかもしれん」
マツタケも、蟻に関しては思い当たる節があるようだ。
そして、ふとシラユキを見ると、まだ落ち込んでいた。
呼び掛けても、応答はない。
デュランダルはシラユキの威勢の悪さに少し拍子抜けしている様子。
「それにしても、アカリはどうする気だ? ゴブリンになり戻って来ないということはあちら側についてしまったのか?」
「分からん。とにかく、情報が欲しいんや。ワイとネズで、情報をかき集めるで」
*
ドラグロワは料理を運びにアカリの部屋へ戻ると、キングサイズのベットに眠っていたはずのアカリが突如、いなくなっていた。
物々しい食器の割れる音が響き、ドラグロワの怒号が飛ぶ。
「ゴブリアが逃げ出したぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
樹木に生えたキノコを見つけると、男は職人のキリッとした目つきとなり、この茶色と白色が調和したキノコはマツタケであることを瞬時に判断、慣れた手つきでサッと採り、籠へポイッと入れる。
その戦いという名の採集が終わると、額に溜まった汗を拭い、恍惚の表情を覚えた。
「はぁ。これで、今月の食糧は大丈夫や」
その時、山林がザザザと動く。
マツタケはミノタウロスかクマかと思い、焦るが、そこから出て来たのは切羽詰まった様子の白い雪のような綺麗な女だった。
「おぉっ!」
「糞キノコ、探したぞ!」
シラユキは眉間に皺を寄せ、相変わらず魔王以外には態度が大きい。
マツタケは一瞬、面食らうも、だいたい事態は飲み込んだようで、そっぽを向いた。
「魔王様が連れ去れた。今すぐ魔王様を助けに行くぞ」
「はぁ……誰に連れ去れたんや」
「ゴブミというゴブリンだ。いや、正確にはそのゴブミは魔王様の身体を乗っ取り、どこかの異空間に行ってしまった……」
威勢は徐々に弱まり、声を震わせていく。
マツタケは冷静な態度で、厳しい細い目つき対する。
「どこの異空間や」
「分からん」
「話にならんわ」
マツタケはお手上げと云った態度で、
「唯一の希望である魔王おらん。そして、世界革命軍はワイらを罪人として扱い、今血眼に探してるわ。最悪な状況や」
シラユキは頭で分かっているが、群青の両眼を潤ませ、睨むようにして、両手は悔しさを滲ませ、そこで、立ち尽くす。
「くそ……私が魔王様の異変をちゃんと気づいてあげれれば、こんなことにはならなかった」
「そんなこと言ったて、しゃーないわ。それに、憑依って言うんか? 呪いというんか? そもそも、その呪いを受けた魔王に責任あるんや」
「私はどうすれば……」
「とにかく、今は世界革命軍から逃げまくりながら、戦力を集めようや」
「……」
*
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マツタケが険しい表情で、全員のメンバーに視線を向けた後、深い溜め息を付いた。
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哀れみの細い目で、のほほんとした美少女、白豚、小さな鼠を見る。
「あんたら帰っていいで……」
ポカーンとする雑魚三人組。
すると、白豚が両手に中華鍋とお玉をガチンと鳴らせ、興奮した様子で、
「屋台で三十年料理人をやってきた、腕と足腰に自信がある。それに二人がいなくなったなんて黙っていられねぇーよ。もう、アカリはうちの娘みたいなもんだし、魔王には屋台が火事で燃やされた時に世話になったしな」
「その心意気は嬉しいが」
「おれに任せろ!」
「……」
一方、ヒヨリとネズはひっそりと手を上げ、
「私達は後方支援に専念します」
「わわわたくしもでございます。治療が必要になりますから」
ネズの前戦で戦わなくてホッとした様子を見かねた、白豚が何かを思ったのか、マツタケに訴える。
「ネズは情報戦が得意です」
「ええ、ちちょっと待ってください。得意では無いです」
「お前さんも魔王に恩義があるんだろ! 返す時は今なんじゃないか!」
「別に恩義なんか……感じてませんけど。むしろ、恐怖ですよ」
白豚は熱弁を奮った途中で、何かをふと思い出す。
「そういえば、ネズは魔王の知り合いの蟻の奴を知っているって言ってたな」
急に慌て出すネズ。どうも後ろめたい話らしい。
マツタケは、前のめりになって、ネズに問い掛ける。
「そいつ戦力になるんか!」
仕方なしに答えるネズ。
「はぁ……どうでしょうね。魔王様……いや、クリムト時代に、蟻と対立があって、蟻は相当クリムトを怨んでいるようで、助けてくれるかどうか分かりませんよ」
「とにかく、頼んでみてくれや。もしかしたら、蟻もに主戦力なるかもしれん」
マツタケも、蟻に関しては思い当たる節があるようだ。
そして、ふとシラユキを見ると、まだ落ち込んでいた。
呼び掛けても、応答はない。
デュランダルはシラユキの威勢の悪さに少し拍子抜けしている様子。
「それにしても、アカリはどうする気だ? ゴブリンになり戻って来ないということはあちら側についてしまったのか?」
「分からん。とにかく、情報が欲しいんや。ワイとネズで、情報をかき集めるで」
*
ドラグロワは料理を運びにアカリの部屋へ戻ると、キングサイズのベットに眠っていたはずのアカリが突如、いなくなっていた。
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