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7章魔王軍団VS世界革命軍団
7章2話ゴブリンになったアカリ
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満月の光が窓の中に入り込み、広い部屋の中にあったキングサイズのベットを照らす。
そのベッドでは金髪の少女がシーツを握り締め、ぐちゃぐちゃにしながら、嗚咽を漏らし泣いていた。
両端の脇には炎が揺らめくランプと壁に貼り付けた異界に吸い込まれそうな楕円の鏡がある。
やがて、彼女は泣き疲れ、上半身を起こし、鏡の方を振り向き、自らの顔に絶句する。
暗闇だが、満月の光が差し込んで、映る怪物。
緑色の皮膚、ゴブリンの顔、ピンク色のトンボのような両眼。
金髪をした醜い緑色の怪物がギョロギョロとこっちを見る。
顔は歪み、その醜い顔を尖った両爪でガリガリと掻いたり、抓ったりして、自分の顔ではないことをひたすら願う。
そして、このゴブリンの顔は私だと改めて認識すると、女の美への渇望が心の中から膨れ上がり、狂ったように叫ぶ。
「ああああああああああ!!!!」
せめてもの救いは唯一自慢だったクリーム色の金髪。
しかし、鏡に映る化け物を見る度に私は発狂する。
耐えられない、何十回、何百回、この顔を見たが耐えられない。
同時に、顔も醜くく、心も醜くくなっているのを感じた。
私はゴブリンを卑下し、差別するような人間だったのかと。
今までどんなに顔は醜くくても、心が綺麗ならば、その人は美しいと思っていた。
でも、私が醜い顔のゴブリンになって初めて知った、そんな考えは綺麗事だ。間違っている。
結局は人は見た目で判断、評価する。
目には見えない心の美しさをどう評価するというのか。
出来る訳がない。
馬小屋に捨てられ、泣いていた少女が私の脳裏に浮かぶ。
彼女は自分の顔が醜いと泣いているのだ。
いつ何時も私は彼女の傍に寄り添い、首を振って、優しい笑顔であなたは綺麗だと口にするのだ。
嘘なのに……。
醜いのに、不細工なのに、綺麗だと私は高らかに言い張るのだ。
すると、彼女は純粋な心で醜い笑顔を見せてくれる。
そして、私は醜い顔の彼女を抱いて、優越感に浸るのだ。
私は彼女より綺麗だと、上だと、そんな醜い心を持ちながら綺麗な顔で嘲笑うのだ。
ゴブリンはゴブリン、醜いものは醜い。
美しい心を持っていて、顔が醜くければ、醜い。
醜い心を持っていても、美しい顔をしていれば、美しい。
美しいもの美しい、たとえ、醜くくなることがあろうかもしれないが、元々が醜いものよりはマシだ。
醜いものは醜いまま、一生美しくなることはできない。
「なんで私なの……死ね! 糞! 糞! 死ねぁぁああああ!!!!」
その一室に銀色の龍騎士ドラグロワがトレイにお茶碗を乗せてやってきた。
アカリは憎悪が沸き、脇にあったランプをドラグロワに投げつける。
「来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
が、予測した軌道がはずれ、お茶碗に直撃し、壁に飛ばし、バリンと硝子の割れる音が響く。
ドラグロワは動じる様子も無く、むしろ嘲笑った。
「どうやら、心まではゴブリアには取られてはいないようじゃ。運の良い奴め。たが、直に完全体となるじゃろう」
「黙れお前はぁあああああああああああ!!!!」
「どうじゃ思い知ったか糞女神! リアが、ゴブミがどんな思いで、醜いという屈辱を味わったか。 皆から、嫌われ、疎まれ、蔑まれ、ドブのような扱いを受けて来た苦しみを!!!! 生まれた時から美しい顔で、誰からもチヤホヤされ、金にも困らず何の不自由もなく、両親のたくさんの愛情を受けた貴様には分かるはすがなかっただろう。しかし、自身が醜い汚物のゴブリンになって初めてどう感じた? 死にたくなるだろう!?」
ドラグロワの黄金の両眼は飛び出し、狂っていた。
恐ろしいゴブリン顔のアカリは何とも言えない感情が込み上げ、ベットを何度となく叩き、泣き叫ぶ、醜い顔が更に歪んで醜くくなる。
「まだ、私にはやりたいことがたくさんあるのに…なんで……なんで……なんでその自由を奪うの!」
ドラグロワは腹を抱えて、両眼を飛び散らし、子供のように罵倒する。
「アハハハハハハハ。ざまぁみやがれ!」
「こんなじゃ恋も出来ない、外に出歩くことも出来ない、あいつに面と向かって話が出来ない。私が醜いから……」
「もうお前は誰からも愛されない!!!! 両親がお前の変わり果てたゴブリンの姿を見た時、恐怖に怯えた表情でこう言うだろう。こんな化け物は私の子ではないと。それは、お前が好意を寄せる魔王であっても例外ではない。いや、あいつこそ、非情で、非道な男じゃ。化け物のお前を必ずや殺す」
「ぁあああああああああああ。やめてぇぇぇぇぇぇ。私の顔を返してよ! 美しい顔を返してよ!」
「一生地獄の底で泣け、嘆け! フハハハハハハハハハ」
そのベッドでは金髪の少女がシーツを握り締め、ぐちゃぐちゃにしながら、嗚咽を漏らし泣いていた。
両端の脇には炎が揺らめくランプと壁に貼り付けた異界に吸い込まれそうな楕円の鏡がある。
やがて、彼女は泣き疲れ、上半身を起こし、鏡の方を振り向き、自らの顔に絶句する。
暗闇だが、満月の光が差し込んで、映る怪物。
緑色の皮膚、ゴブリンの顔、ピンク色のトンボのような両眼。
金髪をした醜い緑色の怪物がギョロギョロとこっちを見る。
顔は歪み、その醜い顔を尖った両爪でガリガリと掻いたり、抓ったりして、自分の顔ではないことをひたすら願う。
そして、このゴブリンの顔は私だと改めて認識すると、女の美への渇望が心の中から膨れ上がり、狂ったように叫ぶ。
「ああああああああああ!!!!」
せめてもの救いは唯一自慢だったクリーム色の金髪。
しかし、鏡に映る化け物を見る度に私は発狂する。
耐えられない、何十回、何百回、この顔を見たが耐えられない。
同時に、顔も醜くく、心も醜くくなっているのを感じた。
私はゴブリンを卑下し、差別するような人間だったのかと。
今までどんなに顔は醜くくても、心が綺麗ならば、その人は美しいと思っていた。
でも、私が醜い顔のゴブリンになって初めて知った、そんな考えは綺麗事だ。間違っている。
結局は人は見た目で判断、評価する。
目には見えない心の美しさをどう評価するというのか。
出来る訳がない。
馬小屋に捨てられ、泣いていた少女が私の脳裏に浮かぶ。
彼女は自分の顔が醜いと泣いているのだ。
いつ何時も私は彼女の傍に寄り添い、首を振って、優しい笑顔であなたは綺麗だと口にするのだ。
嘘なのに……。
醜いのに、不細工なのに、綺麗だと私は高らかに言い張るのだ。
すると、彼女は純粋な心で醜い笑顔を見せてくれる。
そして、私は醜い顔の彼女を抱いて、優越感に浸るのだ。
私は彼女より綺麗だと、上だと、そんな醜い心を持ちながら綺麗な顔で嘲笑うのだ。
ゴブリンはゴブリン、醜いものは醜い。
美しい心を持っていて、顔が醜くければ、醜い。
醜い心を持っていても、美しい顔をしていれば、美しい。
美しいもの美しい、たとえ、醜くくなることがあろうかもしれないが、元々が醜いものよりはマシだ。
醜いものは醜いまま、一生美しくなることはできない。
「なんで私なの……死ね! 糞! 糞! 死ねぁぁああああ!!!!」
その一室に銀色の龍騎士ドラグロワがトレイにお茶碗を乗せてやってきた。
アカリは憎悪が沸き、脇にあったランプをドラグロワに投げつける。
「来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
が、予測した軌道がはずれ、お茶碗に直撃し、壁に飛ばし、バリンと硝子の割れる音が響く。
ドラグロワは動じる様子も無く、むしろ嘲笑った。
「どうやら、心まではゴブリアには取られてはいないようじゃ。運の良い奴め。たが、直に完全体となるじゃろう」
「黙れお前はぁあああああああああああ!!!!」
「どうじゃ思い知ったか糞女神! リアが、ゴブミがどんな思いで、醜いという屈辱を味わったか。 皆から、嫌われ、疎まれ、蔑まれ、ドブのような扱いを受けて来た苦しみを!!!! 生まれた時から美しい顔で、誰からもチヤホヤされ、金にも困らず何の不自由もなく、両親のたくさんの愛情を受けた貴様には分かるはすがなかっただろう。しかし、自身が醜い汚物のゴブリンになって初めてどう感じた? 死にたくなるだろう!?」
ドラグロワの黄金の両眼は飛び出し、狂っていた。
恐ろしいゴブリン顔のアカリは何とも言えない感情が込み上げ、ベットを何度となく叩き、泣き叫ぶ、醜い顔が更に歪んで醜くくなる。
「まだ、私にはやりたいことがたくさんあるのに…なんで……なんで……なんでその自由を奪うの!」
ドラグロワは腹を抱えて、両眼を飛び散らし、子供のように罵倒する。
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「こんなじゃ恋も出来ない、外に出歩くことも出来ない、あいつに面と向かって話が出来ない。私が醜いから……」
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「ぁあああああああああああ。やめてぇぇぇぇぇぇ。私の顔を返してよ! 美しい顔を返してよ!」
「一生地獄の底で泣け、嘆け! フハハハハハハハハハ」
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