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6章愛憎渦巻くゴブリン文明
6章12話魔王とうとう病にかかる
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切り立った崖の上で、魔王は腰を下ろし、荒れ狂う波を見つめる。
天候は雨は降っておらず、強い風と直に降るだろう雨の匂いがする。
それにしても、魔王の後ろ姿は酷く丸まり、黒装束もボロボロで、包帯が散らかって飛び出し、どこか数年の間年を取ったようにも見える。
そこに、シラユキは悲しい群青の両眼と暗い顔を浮かべ、ゴブミを抱えながらやってきた。
そして、シラユキは重い口を開く。
「リアが死にました」
「ソウカ」
「そして、我を失ったドラグロワはゴブミちゃんを置いて、ボルザック山の祠に行くそうです」
「ソウカ。アイツハココロヲキメタンダナ」
シラユキは違和感を感じ、いつもの魔王ではないことを悟り、声を荒げる。
「貴様誰だ!?」
魔王は即座に顔を振り向けると、顔部分の包帯が引きちぎられ、ゴブリンの顔が露わになる。
緑色の坊主、目玉はピンク色のトンボのような両眼。
そして、変な、高い声を発する。
「ワタシハゴブミだよ。ウマレカワッテ……イッサイニナッタノ」
シラユキは絶句し、すぐさま抱きかかえられた本物のゴブミを見るが、存在が消えかかり、そして、魂のようなものが魔王の身体に移り、一つになった。
魔王は必死でゴブミに抵抗しようともがくこうとする。
「俺の中で俺が殺したゴブミの呪いが生きていた。ァァアアアアア。ユルサネェゾァ。過去のゴブミの魂と合わせることで、ゴブミの魂が出来上がり、俺に憑依した。ケッコンシテデェェェェェェウダ。ケッコンシロャァァァァァァァァァァァ。今すぐ、ここ逃げろ。直にこの文明は滅亡する」
魔王は懐にあった、時の石をシラユキに投げる。
更に、ありたっけのチート力を使用し、左手に黒い闇の線が何百回転もする。
「過去改変。これで、現在に戻ったらデュランダル達は生きているのことになる……うぅ……ああああああああ」
凄まじい闇の重力が世界と時は襲い、歪ませ、その反動力を失う魔王は倒れようとするが、一瞬で、全身の包帯と黒装束を破裂させ、ゴブリンの完全体となり、立ち続けた。
「ギャァ!」
緑色の皮膚、ピカピカの坊主、ピンク色の両眼、長身、全裸。
異様な姿だった。
シラユキは絶句し、茫然自失。
ゴブリン魔王は気味の悪い、一段と高い声を発する。
その声はゴブミであるのか、魔王であるかは分からない。
「ワタシ……イクワ。ゴブミト……ケッコンシテ……シアワセニクラスンダ」
左手を中空に差し出し、異空間転送を発動し、円形のブラックホールが出来上がり、そこへゴブリン魔王は入って行った。
シラユキは涙を流し、叫ぶ。
「魔王様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
*
ボルザック火山の頂上。
霧が立ち込め、激しい風が吹き荒れる。
最愛の恋人を失い、絶望の淵に落とされたドラグロワが向かった先は、何の変哲も無い古びた灰色の祠。
中の下段には黒い龍、赤の龍、白い龍の象の三体があり、上段には白い宇宙人型の像があった。
頭は坊主で、目だけが黒い人物像。
この象は古代宇宙飛行士(クルル)。
ドラグロワは虚ろの黄色の両眼で、その祠に話す。
「おれは物心ついた時からゴブリンが一番嫌いだ。だが、その嫌悪によって、愛する人を殺めてしまった。だから、これからは醜い、嫌われた、ゴブリンを愛することを誓う。そして、ゴブリンだけが幸せに暮らせる世界を創る。ただ、そこに人間はいない。しかし、諸悪の根源であるゴブリンキングがこのまま王として、文明の王座に座ることは許さない。あいつが王である限り世界は変わらない。だから、おれがあいつを殺す。そのためには力が必要だ。おれに龍の力を与えよ」
天候は雨は降っておらず、強い風と直に降るだろう雨の匂いがする。
それにしても、魔王の後ろ姿は酷く丸まり、黒装束もボロボロで、包帯が散らかって飛び出し、どこか数年の間年を取ったようにも見える。
そこに、シラユキは悲しい群青の両眼と暗い顔を浮かべ、ゴブミを抱えながらやってきた。
そして、シラユキは重い口を開く。
「リアが死にました」
「ソウカ」
「そして、我を失ったドラグロワはゴブミちゃんを置いて、ボルザック山の祠に行くそうです」
「ソウカ。アイツハココロヲキメタンダナ」
シラユキは違和感を感じ、いつもの魔王ではないことを悟り、声を荒げる。
「貴様誰だ!?」
魔王は即座に顔を振り向けると、顔部分の包帯が引きちぎられ、ゴブリンの顔が露わになる。
緑色の坊主、目玉はピンク色のトンボのような両眼。
そして、変な、高い声を発する。
「ワタシハゴブミだよ。ウマレカワッテ……イッサイニナッタノ」
シラユキは絶句し、すぐさま抱きかかえられた本物のゴブミを見るが、存在が消えかかり、そして、魂のようなものが魔王の身体に移り、一つになった。
魔王は必死でゴブミに抵抗しようともがくこうとする。
「俺の中で俺が殺したゴブミの呪いが生きていた。ァァアアアアア。ユルサネェゾァ。過去のゴブミの魂と合わせることで、ゴブミの魂が出来上がり、俺に憑依した。ケッコンシテデェェェェェェウダ。ケッコンシロャァァァァァァァァァァァ。今すぐ、ここ逃げろ。直にこの文明は滅亡する」
魔王は懐にあった、時の石をシラユキに投げる。
更に、ありたっけのチート力を使用し、左手に黒い闇の線が何百回転もする。
「過去改変。これで、現在に戻ったらデュランダル達は生きているのことになる……うぅ……ああああああああ」
凄まじい闇の重力が世界と時は襲い、歪ませ、その反動力を失う魔王は倒れようとするが、一瞬で、全身の包帯と黒装束を破裂させ、ゴブリンの完全体となり、立ち続けた。
「ギャァ!」
緑色の皮膚、ピカピカの坊主、ピンク色の両眼、長身、全裸。
異様な姿だった。
シラユキは絶句し、茫然自失。
ゴブリン魔王は気味の悪い、一段と高い声を発する。
その声はゴブミであるのか、魔王であるかは分からない。
「ワタシ……イクワ。ゴブミト……ケッコンシテ……シアワセニクラスンダ」
左手を中空に差し出し、異空間転送を発動し、円形のブラックホールが出来上がり、そこへゴブリン魔王は入って行った。
シラユキは涙を流し、叫ぶ。
「魔王様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
*
ボルザック火山の頂上。
霧が立ち込め、激しい風が吹き荒れる。
最愛の恋人を失い、絶望の淵に落とされたドラグロワが向かった先は、何の変哲も無い古びた灰色の祠。
中の下段には黒い龍、赤の龍、白い龍の象の三体があり、上段には白い宇宙人型の像があった。
頭は坊主で、目だけが黒い人物像。
この象は古代宇宙飛行士(クルル)。
ドラグロワは虚ろの黄色の両眼で、その祠に話す。
「おれは物心ついた時からゴブリンが一番嫌いだ。だが、その嫌悪によって、愛する人を殺めてしまった。だから、これからは醜い、嫌われた、ゴブリンを愛することを誓う。そして、ゴブリンだけが幸せに暮らせる世界を創る。ただ、そこに人間はいない。しかし、諸悪の根源であるゴブリンキングがこのまま王として、文明の王座に座ることは許さない。あいつが王である限り世界は変わらない。だから、おれがあいつを殺す。そのためには力が必要だ。おれに龍の力を与えよ」
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