最強の魔王による転生令嬢を巻き込んだ異世界チート無双計画

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6章愛憎渦巻くゴブリン文明

6章10話神経衰弱

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 風雨の中、切り立った崖に到着する。
 見えるのは激しい雨と灰色の曇で視界不良、海の荒れ狂う波、十メートル超える波が平気で何度となく、襲い、岸に停泊してる巨大船から小型船まで揺らし、破壊する。
 そして、魔王はすやすやと眠る、安らかなゴブミを海へ捨てようとする。
 しかし、思うように手が動かない。
 頭の中は悪魔なのに、身体がそれを拒否しようとする。
 こんな時、ルルなら何と言っていただろう。
 きっと、俺を叱り、止めてくれたはずだ。
 だが、ルルの声は力を奪われた日から何も聞こえなくなった。
 やはり、ゴブミの呪いのせいなんだ!
 魔王はコブミを海に投げ捨てた。

「死ねぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

         *
 そして、元へ戻って来る頃には、先程までの嵐が嘘のように、晴れ、水溜まりを少し残している。
 魔王はシラユキを見た瞬間、取り繕っていた笑顔が歪み、脚が震え、後ろへ崩れ落ちた。

「な、なぜ、お前がここにいる」
 
 抱っこしていたのは緑の薄い毛を生やした赤ん坊。
 魔王は怖い顔で即座に、シラユキの肩を激しく揺する。

「この赤ん坊は誰だ!」

「え……え、魔王様? 何を言ってるんですか? この子はゴブミちゃんですよ。ほら、目がくりくりしてて、リアさんにそっくり!」

 魔王はシラユキを突き飛ばし、ゴブミを強引に奪い取る。

「邪魔だぁぁぁ! 寄越せ!」

「魔王様どうしたのですか? そんな血相を変えて」

「うるさいっ!」

 ゴブミを殺して、俺に掛けられた呪いを解くんだ。
 そうしなければ、愛するアカリ、世界を救えないんだ。
 幼い赤ん坊を殺す行為は、非道な、許されざる行為であることは知っている。だから、なんだ。
 この行為で、多くの命が救われ、何より俺自身が救われるんだ。
 これは、正義だ、不可抗力だ。
 魔王はゴブミを抱えて、意味不明な言動を口走りながら、去っていく。

「ふはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ! はぁぁぁあぁぁぁあ!!」


          *
 そして、それから何度となく、ゴブミを殺そうとしたが、いつの間にか消えて、平然とシラユキの元へ戻って、すやすや眠る顔を見せるのだ。
 何だこの見えない妨害のようなものは。
 魔王は息切れをし、茫然自失で、その場で立ち尽くす。
 眉間に皺を少し寄せ、潤ませる青眼、困惑した顔のシラユキ。

「大丈夫ですか?」

 そして、また魔王はゴブミを奪い、抱え、立ち去ろうとする。
 明らかにおかしい、異常な魔王に対して、シラユキは心配をかなり募らせ、涙を滴らせながら、追い掛けるも、

「お待ちを!」

「うるさい! 黙れ! 俺の言う通りにしてれば良いんだよお前は。なんで分かんないんだよお前は……分かれよ。はぁぁぁぁぁん。どいつこいつも……ああああ!!!!」

「魔王様……」

       *
 私は魔王様に冷たく突き放された。
 そんな風に心を痛めるシラユキ。
 そして、魔王と入れ替わるようにして、とぼとぼと一人歩くドラグロワがいた。
 勇ましかった体格は酷く小さく見え、輝かしい勇姿が込められた黄色の両眼も虚ろで、一重瞼は二重瞼になり、酷くげっそりしていた。
 
「ドラグロワさん?」

 ドラグロワはゴブミを目にすると、パッと希望の光が見えたような顔で、走り出す。

「ゴブミ!!!!」
 
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