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6章愛憎渦巻くゴブリン文明
6章4話花嫁泥棒
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ドラグロワは魔王の肩を揺すり、鬼気迫る剣幕で訴える。
「君に頼みたいことがある。明日、結婚式でゴブミを誘拐してもらいたい。憎きゴブリンキングから」
「いや……」
「おれはゴブリンキングを何とかして、リアを必ず連れ戻す。その隙に君達はゴブミを誘拐し、この民衆街まで送ってもらうだけだ。頼む、あんたしか……信用できる奴はいないんだ……」
ドラグロワの濃いから顔からは想像出来ない程、かなり追い詰められ、酷い隈をし、両眼に涙を滲ませながら訴える。
シラユキが顔を左右に振り、否定を示すが。
魔王は弱く頷き、少し笑い、手を差し出した。
「このような包帯野郎で良いなら、出来る限り助けよう」
そこに固い握手がもたらされた。
*
夕刻、地下迷宮では数十人の側近や神官が集められた。
人間、ミノタウロス、ゴブリン騎士と様々な要人がドラグロワの呼び掛けで集まった。
ボワっと両端の松明の炎が火力が膨れ上がり、黄金の洞窟の岩肌に大きな影が出来る。
ドラグロワは強い黄金の眼差し、強い意を決したら眉で、台へと登る。
「皆の者、忙しい中、良く集まってくれた」
左目に眼帯をした、大柄なゴブリンが優しげなおじさんの笑みを浮かべる。
名はゴブス。
「そんなことはねぇーよ。お前にはいつも世話になってるからよ。お安いご用よ。なぁお前ら?」
周りの中も、拳や剣を掲げて、息を巻く。
「ぉおおお!!!!」
「なんたって英雄だからな!」
「さぁ! 宴しようぜ! 宴! 宴!」
すると、神官の男が手を上げる。
長い灰色の髪、切れ長の白眼、利発な顔、白の帽子を身につけた神官。
名はグリム。
「静かにせよ」
冷静な叱責で、皆を鎮める。
グリムもかなり影響がある立場故か、場も無言となる。
「ドラグロワ、話とは何だ?」
「ああ。な、皆! 今こそ、立ち上がらないか? 今こそゴブリンキングを倒す時ではないか!?今まで、皆はあいつに散々苦しめられてきた。たくさんの仲間、妻、子供を失った! 涙無しには語れない!」
グリムは感極まって、顔を伏せ頷く。
ゴブスに続き、皆も同調の頷き、声を上げる。
「本当だな! おいら達をまるで、道具のように扱いやがって」
「あいつ……マジでぶっ殺してやる」
「鬱憤が溜まってたから、いい機会だ」
ドラグロワは皆の感情の感触を確かめ、手応えのある頷きをし、
「よし、そこでだ。ゴブリンキングの結婚式が明日あるのは分かっているな? この結婚式はぶち壊す。皆、その日は暴れて場内を混乱させる。ゴブリンキングの首を狙え! その間はおれはリアを連れて逃げる」
「良い案だな」
「あれ? リアってドラグロワが好きな奴か?」
すると、ドラグロワは気が立っていたのか、声を荒げる。
「気安くリアと口にするな! おれの妻になる女だぞ!」
「あっ、すまねぇ」
「これだから、ゴブリンは……」
ドラグロワはどうしてもゴブリンが嫌いだ。
ゴブリンに対しては極度の差別や偏見があった。
ゴブリン差別主義者。
自身が人間ゆえか、同種ではないという思いもあり、また以前コブリンを下等種族として扱ってきた過去があるため、差別は仕方ないのかもしれない。
ゴブスは苦い笑いをして返したが、内心は腸が煮えくり返っていた。
そんな小さな不安を残し、グリムが先陣を切り立ち上がり、手を差し出した。
「友の頼み、我々の未来、力を貸そう! いいなみんな?」
「オオオオオオオオ!!!!」
場内に、一致団結の雄叫びが上がる。
グリムとドラグロワは仕組んだような笑みを浮かべ、固い握手をした
「ありがとう」
雄叫びと拍手喝采の中、ドラグロワはグリムに小さく耳打ちをする。
「後で話がある」
*
そして、ドラグロワとグリムは決起集会を途中で切り上げ、暗い通路で、二人だけで、明日の作戦を話していた。
ドラグロワは王剣をグリムに渡した。
「明日の結婚式、お前は護衛役としてゴブリンキングに付いてくれ」
「ああ」
「そして、おれが合図するかまたは隙を見て、あいつの背中に刺してくれ」
「ああ、もちろんだ」
*
グリムとドラグロワが去った後、ゴブスを中心として決起集会ならぬ宴が始まった。
ゴブスは怒りの両眼で、酒の瓶を振り回す。
「いい気になりやがって。あの偽善者が」
皆も打って変わって、ドラグロワの不満を漏らす。
「本当だぜ」
「何が立ち上がれだよ? ゴブリンキングを本当に倒せると思ってんのかよ」
「まあ、あいつ馬鹿だからな」
すると、ゴブスは酒を一気に飲み干し、
「あいつはおいらや民衆のために立ち上がろうとか言ってるが、それを利用して、片思いの女をゴブリンキングから奪いたいだけじゃねぇーか、結局、自らの醜い欲望よ。おいらたちのことなんて、何も心配してねぇ極悪人だよ、あいつはよ」
「確かに」
「うざかったな。偽善者が」
「それに、今の暮らしに不満はねぇよ。確かにあの怪物は怖いが、食や女に困ることはねぇしな。逆にこの裕福を壊すドラグロワが敵だ」
「君に頼みたいことがある。明日、結婚式でゴブミを誘拐してもらいたい。憎きゴブリンキングから」
「いや……」
「おれはゴブリンキングを何とかして、リアを必ず連れ戻す。その隙に君達はゴブミを誘拐し、この民衆街まで送ってもらうだけだ。頼む、あんたしか……信用できる奴はいないんだ……」
ドラグロワの濃いから顔からは想像出来ない程、かなり追い詰められ、酷い隈をし、両眼に涙を滲ませながら訴える。
シラユキが顔を左右に振り、否定を示すが。
魔王は弱く頷き、少し笑い、手を差し出した。
「このような包帯野郎で良いなら、出来る限り助けよう」
そこに固い握手がもたらされた。
*
夕刻、地下迷宮では数十人の側近や神官が集められた。
人間、ミノタウロス、ゴブリン騎士と様々な要人がドラグロワの呼び掛けで集まった。
ボワっと両端の松明の炎が火力が膨れ上がり、黄金の洞窟の岩肌に大きな影が出来る。
ドラグロワは強い黄金の眼差し、強い意を決したら眉で、台へと登る。
「皆の者、忙しい中、良く集まってくれた」
左目に眼帯をした、大柄なゴブリンが優しげなおじさんの笑みを浮かべる。
名はゴブス。
「そんなことはねぇーよ。お前にはいつも世話になってるからよ。お安いご用よ。なぁお前ら?」
周りの中も、拳や剣を掲げて、息を巻く。
「ぉおおお!!!!」
「なんたって英雄だからな!」
「さぁ! 宴しようぜ! 宴! 宴!」
すると、神官の男が手を上げる。
長い灰色の髪、切れ長の白眼、利発な顔、白の帽子を身につけた神官。
名はグリム。
「静かにせよ」
冷静な叱責で、皆を鎮める。
グリムもかなり影響がある立場故か、場も無言となる。
「ドラグロワ、話とは何だ?」
「ああ。な、皆! 今こそ、立ち上がらないか? 今こそゴブリンキングを倒す時ではないか!?今まで、皆はあいつに散々苦しめられてきた。たくさんの仲間、妻、子供を失った! 涙無しには語れない!」
グリムは感極まって、顔を伏せ頷く。
ゴブスに続き、皆も同調の頷き、声を上げる。
「本当だな! おいら達をまるで、道具のように扱いやがって」
「あいつ……マジでぶっ殺してやる」
「鬱憤が溜まってたから、いい機会だ」
ドラグロワは皆の感情の感触を確かめ、手応えのある頷きをし、
「よし、そこでだ。ゴブリンキングの結婚式が明日あるのは分かっているな? この結婚式はぶち壊す。皆、その日は暴れて場内を混乱させる。ゴブリンキングの首を狙え! その間はおれはリアを連れて逃げる」
「良い案だな」
「あれ? リアってドラグロワが好きな奴か?」
すると、ドラグロワは気が立っていたのか、声を荒げる。
「気安くリアと口にするな! おれの妻になる女だぞ!」
「あっ、すまねぇ」
「これだから、ゴブリンは……」
ドラグロワはどうしてもゴブリンが嫌いだ。
ゴブリンに対しては極度の差別や偏見があった。
ゴブリン差別主義者。
自身が人間ゆえか、同種ではないという思いもあり、また以前コブリンを下等種族として扱ってきた過去があるため、差別は仕方ないのかもしれない。
ゴブスは苦い笑いをして返したが、内心は腸が煮えくり返っていた。
そんな小さな不安を残し、グリムが先陣を切り立ち上がり、手を差し出した。
「友の頼み、我々の未来、力を貸そう! いいなみんな?」
「オオオオオオオオ!!!!」
場内に、一致団結の雄叫びが上がる。
グリムとドラグロワは仕組んだような笑みを浮かべ、固い握手をした
「ありがとう」
雄叫びと拍手喝采の中、ドラグロワはグリムに小さく耳打ちをする。
「後で話がある」
*
そして、ドラグロワとグリムは決起集会を途中で切り上げ、暗い通路で、二人だけで、明日の作戦を話していた。
ドラグロワは王剣をグリムに渡した。
「明日の結婚式、お前は護衛役としてゴブリンキングに付いてくれ」
「ああ」
「そして、おれが合図するかまたは隙を見て、あいつの背中に刺してくれ」
「ああ、もちろんだ」
*
グリムとドラグロワが去った後、ゴブスを中心として決起集会ならぬ宴が始まった。
ゴブスは怒りの両眼で、酒の瓶を振り回す。
「いい気になりやがって。あの偽善者が」
皆も打って変わって、ドラグロワの不満を漏らす。
「本当だぜ」
「何が立ち上がれだよ? ゴブリンキングを本当に倒せると思ってんのかよ」
「まあ、あいつ馬鹿だからな」
すると、ゴブスは酒を一気に飲み干し、
「あいつはおいらや民衆のために立ち上がろうとか言ってるが、それを利用して、片思いの女をゴブリンキングから奪いたいだけじゃねぇーか、結局、自らの醜い欲望よ。おいらたちのことなんて、何も心配してねぇ極悪人だよ、あいつはよ」
「確かに」
「うざかったな。偽善者が」
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