最強の魔王による転生令嬢を巻き込んだ異世界チート無双計画

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5章呪われた魔王

5章5話偽りの魔王

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「……はぁ……はぁ」

「そいつは誰だ?」

 アラクネの問いに対して、デュランダルが答える。

「魔王と騙る偽者……クリムトという男だ」

 アラクネは嘲笑の血の両眼で、

「おいおい? まさか、お前らはこのミイラの男を魔王に仕立て、魔王が復活したんだぞと言い張るつもりだったのか? ハハハハハハハハ! 冗談はよしてくれよ!」

 魔王は包帯を巻いた状態で、隙間から見える飛び出した青眼、支離滅裂な叫び声を上げながら、虫を追い払う。
 でも、実際は虫などおらず、何かを祓うようにして怯えているようにも見えた。
 狂っている。

「虫きらぁい! あっちいけぇ! あっちいけぇってぇぇぇ!! このゴブリンがぁぁぁぁぁ! 俺は魔王じゃねぇ! 偽者やぁぁぁぁぁあ!!」

 シラユキはその変わり果てた姿に悲しくて、泣きながら、魔王の顔を懐に抱き寄せる。

「何をおっしゃってるんです? あなたは私にとって一人しかいない魔王様です」

「違うぅ、違うぅ、俺は魔王じゃなぁぁぁぁぁぁい」

「そんなことありません!」

「うるさぁぁぁぁぁい! 殺せ俺を!」

「大丈夫だから、大丈夫だから」

 狂ったように暴れる魔王を泣きながら抑えるシラユキ。
 すると、デュランダルが厳しい声で、

「シラユキ何とか小僧を抑えろ」

「あああああああああ……ああ!! ああ!! あああああ!!!!」

 蚊帳の外に置かれていたアラクネが痺れを切らし、勇ましい怒鳴り声を上げる。

「おい! てめらぁぁぁぁぁ?」

 デュランダルは間を置かず、不敵な笑みで、返答する。

「我々はこの小僧の元で、今一度アロンダイト軍団復活する」

「正気か? そんな発狂した奴を王にさせる気かよ。馬鹿にするのは止してくれよ。それに一筋縄ではいかね化け物がいっぱいいる軍団だぞ! 統一なんて不可能だろうがぁ!」

「ここで、アロンダイト軍団が一致団結しなければ、神賢者達に貴様の支配地が奪われるぞ。これは、貴様も危惧していたはずだ」

「っ……魔王の偽者に誰が従う。しかも、何のスキルももたない、ただのミイラで、発狂人じゃねーか。てめぇはまさか、こんな奴を認めたのか?」

「貴様がこの魔王に逆らうなら、ワシが相手になるぞ」

 デュランダルは本気の紅の炎が灯る。
 アラクネは歯軋りをし、納得していない様子。

「……正気かよ」

 同時に、怒りを共鳴した部下蜘蛛達はざわめき出す。
 アラクネの両手に黒い糸を合わせた球体が生じる。

「恐ろしいことになるぜ」

「貴様がその気なら、仕方ない」
 
 デュランダルから揺れる闇が倍増し、死神の怪物が現れる。
 鎌を持った闇の権化。死を食らう神。
 その時、アラクネは黒糸球体をデュランダルに向かって投げ入れた。
 一直線の軌道を描いたが、途中で、両端に別れ、林の方角へ逸れていく。
 その黒球体の威力は凄まじく、奥まで並ぶを木々をなぎ倒して行った。
 アラクネは鼻を鳴らし、背中を向け、こう吐き捨てる。

「ふんっ……やめだ。やめだ。てめぇと戦う程オイラは馬鹿じゃねーよ」
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