104 / 140
4章神英雄団討伐
4章2話突入
しおりを挟む
魔王は巨大な豪華客船で英雄海を渡り、英雄の国の船着き場へ密かに降り立っていた。
ここは英雄西海岸(ヒーローグリフノース)地区。
昔ながらの巨大な古城が向こうの頂上にあり、中世風の街並みの街道、多くの民家が広がる。
そして、魔王はやや勾配の坂を上り、一息入れ立ち止まり、振り返った。
「なぜお前までついて来る?」
そこにいたのは生意気な紫色の両眼をした金髪の女神。
「私はこの世界を平和にすると誓ったの、だから、私も悪の英雄を倒しに行く」
「お前に何ができる?」
「弱いけど、出来ることはあるはず。なぜなら、私は王神の臣下女神よ」
すると、アカリの隣にいる、先日魔王軍団に新しく入った銀髪の白い雪女シラユキが割って入る。
「娼婦奴め……魔王様に何という無礼な口を訊く」
「はぁ!? 誰が娼婦ですって!」
そこで、仲裁に入ったのが、なぜここにいるのか分からないが、先日予選大会にいた、古びた銀色の鎧を身に纏う老龍騎士。
「若いものよ、やめるのじゃ」
「触るな糞じじい!」
シラユキが冷徹の群青の両眼で、人睨みし、老龍騎士に手を振り解く。
「……それはすまん」
その一連のいざこざを冷徹な視線で、無視する魔王。
「そこの女神が付いてきた理由は分かるが……じじいは何故だ」
老龍騎士の仮面から表情は伺えないが、きっとよくぞ聞いてくれましたと笑みを浮かべているに違いない。
もったいぶった態度に苛立ちを覚えるのが早いのが、魔王ではなくシラユキ。
シラユキは老龍騎士の首を絞め、強引に言葉を吐かせようとする。
「早く言え糞爺!」
「ちょっと……ん……お嬢ちゃんやめてくれん……ごほん……やや」
「早く言え!」
そのシラユキの凶暴さに待ったを掛け、押し退けるアカリ。
「やめなさいよ!」
「何だブス女」
「あなた……お年寄りには優しくしなさいってお母さんお父さんに言われなかったの!」
「私に母や父はいない。魔王様だけだ」
アカリが怒りの視線を魔王に移す。
魔王は冷徹な表情で見た後、黒衣を翻し、再度老龍騎士に問う。
「あまり……騒ぎ立てるな、人の目も気になる。それで、どういうことだ?」
「神英雄団と刃を交えるならば、ワシも一役買える」
「そうか……邪魔だけはするな」
「分かっておる」
その時、周囲の家屋に強大な爆弾何発も空から放たれ、破壊され、周囲の民衆が叫び声を上げ、逃げて行く。
魔王は険しい表情をする。
「殺気が」
魔王が強烈な悪寒を感じ、一旦退こうした時、既に遅かった。
目の前で、アカリ、シラユキが心臓を貫かれ、前のめりになり、倒される瞬間を目撃する。
豪奢な装いをした英雄達が剣を抜き、そこから揺れる血飛沫が空を染める。
そして、アカリを拘束し、魔王に刃を向けた。
「なにこれ」
「魔王様!」
神英雄総勢五人は不敵な笑みを浮かべ、
「潔く女神を渡せ。要求が飲めないなら、貴様、貴様の家族や周辺の者は皆殺しだ」
「離して、離してよ」
アカリは傷口を押さえながら、暴れる。
魔王は冷徹な表情で、
「勝手にしろ。俺の物ではない」
「いい判断だ」
そして、神英雄達はアカリを抱えて、颯爽と去って行く。
アカリの必死に助けを求める視線を逸らす魔王。
「離してよぉぉぉぉ!!!!」
手負いながら、立ち上がるシラユキと老龍騎士。
「行かせて良いのですか?」
「魔王よ。見損なったぞ」
そして、魔王は空を見上げ、手を掲げ、雨粒を感じる。
「直に嵐が来るな。神の英雄との最終決戦に相応しい」
*
英雄の銅像の頂上には灰色の雲が絶え間なく流れ、稲妻、雨や風が吹き荒れる。
鉄の十字架に吊された、心臓を数十本の剣で貫かれながらも、治癒力で何とか生命を保つ金髪の女神アカリ。
その正面には白黒の髪の色をした無感情な顔した大神英雄シュトラウスがいた。
そこへ、魔王が闇のオーラを放ちながら、ゆっくり歩き、立ち止まる。
シュトラウスは不気味な笑顔で振り返り、
「良くここまでたどり着いたな。だが、意外だったすんなり女神を渡すとは」
「アカリを餌にここまで、たどり着いた。貴様の居場所が分からないし、英雄の結界を魔王が破るには相当苦労するのでな。それに、貴様にとってその女神は用済みなのだろ? 敗北者よ」
魔王の最後の言葉は何もかも知った上での、嘲笑いの顔だ。
その姿にシュトラウスは怒りを増幅させ、黒眼を飛び出し、狂った叫び声を上げる。
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!! オレ様は決して敗北者ではない。この世界の勝者だ! 正義を掲げ、世界を平和にしようとした英雄だぁぁぁぁぁぁぁ!」
ここは英雄西海岸(ヒーローグリフノース)地区。
昔ながらの巨大な古城が向こうの頂上にあり、中世風の街並みの街道、多くの民家が広がる。
そして、魔王はやや勾配の坂を上り、一息入れ立ち止まり、振り返った。
「なぜお前までついて来る?」
そこにいたのは生意気な紫色の両眼をした金髪の女神。
「私はこの世界を平和にすると誓ったの、だから、私も悪の英雄を倒しに行く」
「お前に何ができる?」
「弱いけど、出来ることはあるはず。なぜなら、私は王神の臣下女神よ」
すると、アカリの隣にいる、先日魔王軍団に新しく入った銀髪の白い雪女シラユキが割って入る。
「娼婦奴め……魔王様に何という無礼な口を訊く」
「はぁ!? 誰が娼婦ですって!」
そこで、仲裁に入ったのが、なぜここにいるのか分からないが、先日予選大会にいた、古びた銀色の鎧を身に纏う老龍騎士。
「若いものよ、やめるのじゃ」
「触るな糞じじい!」
シラユキが冷徹の群青の両眼で、人睨みし、老龍騎士に手を振り解く。
「……それはすまん」
その一連のいざこざを冷徹な視線で、無視する魔王。
「そこの女神が付いてきた理由は分かるが……じじいは何故だ」
老龍騎士の仮面から表情は伺えないが、きっとよくぞ聞いてくれましたと笑みを浮かべているに違いない。
もったいぶった態度に苛立ちを覚えるのが早いのが、魔王ではなくシラユキ。
シラユキは老龍騎士の首を絞め、強引に言葉を吐かせようとする。
「早く言え糞爺!」
「ちょっと……ん……お嬢ちゃんやめてくれん……ごほん……やや」
「早く言え!」
そのシラユキの凶暴さに待ったを掛け、押し退けるアカリ。
「やめなさいよ!」
「何だブス女」
「あなた……お年寄りには優しくしなさいってお母さんお父さんに言われなかったの!」
「私に母や父はいない。魔王様だけだ」
アカリが怒りの視線を魔王に移す。
魔王は冷徹な表情で見た後、黒衣を翻し、再度老龍騎士に問う。
「あまり……騒ぎ立てるな、人の目も気になる。それで、どういうことだ?」
「神英雄団と刃を交えるならば、ワシも一役買える」
「そうか……邪魔だけはするな」
「分かっておる」
その時、周囲の家屋に強大な爆弾何発も空から放たれ、破壊され、周囲の民衆が叫び声を上げ、逃げて行く。
魔王は険しい表情をする。
「殺気が」
魔王が強烈な悪寒を感じ、一旦退こうした時、既に遅かった。
目の前で、アカリ、シラユキが心臓を貫かれ、前のめりになり、倒される瞬間を目撃する。
豪奢な装いをした英雄達が剣を抜き、そこから揺れる血飛沫が空を染める。
そして、アカリを拘束し、魔王に刃を向けた。
「なにこれ」
「魔王様!」
神英雄総勢五人は不敵な笑みを浮かべ、
「潔く女神を渡せ。要求が飲めないなら、貴様、貴様の家族や周辺の者は皆殺しだ」
「離して、離してよ」
アカリは傷口を押さえながら、暴れる。
魔王は冷徹な表情で、
「勝手にしろ。俺の物ではない」
「いい判断だ」
そして、神英雄達はアカリを抱えて、颯爽と去って行く。
アカリの必死に助けを求める視線を逸らす魔王。
「離してよぉぉぉぉ!!!!」
手負いながら、立ち上がるシラユキと老龍騎士。
「行かせて良いのですか?」
「魔王よ。見損なったぞ」
そして、魔王は空を見上げ、手を掲げ、雨粒を感じる。
「直に嵐が来るな。神の英雄との最終決戦に相応しい」
*
英雄の銅像の頂上には灰色の雲が絶え間なく流れ、稲妻、雨や風が吹き荒れる。
鉄の十字架に吊された、心臓を数十本の剣で貫かれながらも、治癒力で何とか生命を保つ金髪の女神アカリ。
その正面には白黒の髪の色をした無感情な顔した大神英雄シュトラウスがいた。
そこへ、魔王が闇のオーラを放ちながら、ゆっくり歩き、立ち止まる。
シュトラウスは不気味な笑顔で振り返り、
「良くここまでたどり着いたな。だが、意外だったすんなり女神を渡すとは」
「アカリを餌にここまで、たどり着いた。貴様の居場所が分からないし、英雄の結界を魔王が破るには相当苦労するのでな。それに、貴様にとってその女神は用済みなのだろ? 敗北者よ」
魔王の最後の言葉は何もかも知った上での、嘲笑いの顔だ。
その姿にシュトラウスは怒りを増幅させ、黒眼を飛び出し、狂った叫び声を上げる。
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!! オレ様は決して敗北者ではない。この世界の勝者だ! 正義を掲げ、世界を平和にしようとした英雄だぁぁぁぁぁぁぁ!」
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる