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3章魔王軍団編成前編
3章11話現状
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「……僕の頭……待ってくれ……あれ……お腹が痛い」
すると、骸骨の頭がどんどん転がっていき、右に曲がって、姿が見えなくなる。
先程の厳しい、武士のような男は一切無く、弱々しい姿になるデュランダル。
腹を抱え、随分顔や体調が悪くなっていた。
そして、デュランダルは弱々しい声で頭部を追い掛けていく。
「待ってくれ~」
そして、デュランダルの姿が見えなくなると、不敵の笑い声が聞こえてくる。
魔王の後ろからマツタケが細い両眼に笑みを浮かべやってきた。
「これでワイも含めて、部下が二人、魔王陣営に入った訳や……ところで、奥の部屋で、詳しい話聞かせてもらいまっか。何や城周辺でちょろちょろ動いてる仲間もいるようやしな」
そして、大きめなリビングルームに連れて行かれた。
大半の家具が黒と赤で埋められ、陰気な場所。
やや明るいシャンデリアが室内を照らす。
やがて、リビング内で、玄関にお客が来たことを知らせる鐘が鳴る。
ソファーで大胆に頭に肘を付け、するめイカを噛みながら、横になるマツタケ。
「クリ坊の客が来たんやないか……?」
「そうだろうな」
*
アカリはヒヨリが市場で購入した毒を治す薬で復帰する。
そして、魔王は配下達に命令を下す。
「白豚はこの邸宅で料理長を任命する」
「待ってくれ。お客様を相手にした商売がしたいんだ。ぶたやという店はここでも続けたいんだ」
中年白豚の最後の挑戦とも云うべき炎の意志が顔から感じられた。
ここで、意志を無視、強制すれば、後々変な遺恨を残すかもしれない。
「分かった。好きにしろ。では、ヒヨリは白豚の手伝いやこの家の家事全般を任せる」
「はい」
目を細め、穏やかな顔で、頷く茶髪の少女ヒヨリ。
そして、魔王は常に怯えた小さな鼠の獣に目を向ける。
「ネズはこの家の支配人を任せる」
「はははい……かしこまりました」
そこにマツタケが不躾に鼻をほじりながら、
「こんな広い家、女一人じゃ家事は無理やろ」
そこで、アカリが金髪を揺らし立ち上がる。
「私が手伝うわ」
「女一人、増えたところで変わらん。それに、家事って食事、炊事のことだけやないで。この家に侵入者が来た時、戦って守らなあかん。うちには奴隷の獣がいるとはいえ……いや、さっき死んだやったけ? 現状、ある程度力がある奴が二、三人はいないとあかんな」
「私だってそれなりの力はあるわ!」
「確かにあんたは強い。だが、防御よりも、前衛で攻撃するタイプやろ」
「あなた、私の戦い方をいつ見たのよ」
「はぁ……面倒臭い性格してるわ。長年人を見て来てるから、体格や迸る微力で、力量が分かるんや」
「めんどくさいですって!?」
失礼な態度や言葉に苛立ちを露わにするアカリ。
マツタケはうんざりしたように顔を逸らす。
すると、魔王が腕を組み、苛立つ。
「勝手に話を進めるな」
「でも!」
「そもそもお前を俺の配下にしたつもりはないんだが」
魔王はソファーに冷静な態度で座りながら、そう諭す。
アカリは感情が込み上げたのか、頬を赤らませ、言い返す。
「私だって! あなたの奴隷になったつもりはないわ」
「毒も消えたようだし、ここにいる必要もないだろう」
「それは、そうだけど。でも、私はいつもあなたに助けてもらった……そのお礼というか」
「さっさと帰れ」
「あぁ……そうですか。じゃ帰ります」
頬を含ませ、鼻を鳴らしながら、足早に帰ろうとするアカリ。
そこに、ヒヨリが優しげな、心配の声で呼び掛ける。
「待ってアカリ。魔王様にお願いを聞いて欲しいんじゃないの? そうだよね」
「違うわ。もういいの」
アカリは一度立ち止まりそう吐き捨てるも、やはり意地になって帰ろうとする。
魔王は溜め息をついて、
「その話は知っている。神英雄団を倒したいという話だろ」
アカリは魔王の尾を引くように、再び立ち止まり、振り返って怒った顔をする。
「魔王の手なんか借りないわ! 私一人だって倒せるんだからね」
「本当に可愛くない奴だな」
「アカリ……一人じゃ危険だよ」
ヒヨリは悲しげな顔で、そうつぶやく。
しかし、意地になってアカリはクリーム色の髪を興奮させ、首を振り、挑戦の紫眼をする。
「悪事に染める魔王の手は絶対に借りない。私は正義を勝ち取るために、悪の英雄を倒すのよ」
魔王は鼻で笑い、批判する。
「良く言うな……毒にやられ、瀕死になり、そこに助けたこの俺にそんな台詞を吐けるとは……恩知らずにも程がある……まあ、その点、俺はお前に恩や見返りは求めていないがな。どっちが悪魔かは分からんわ」
魔王は眉間に皺を寄せ、憎たらしい顔をする。。
アカリは右拳を作り、奥歯を噛み締める。
「私は……私は……」
すると、ヒヨリが再度魔王にお願いする。
「魔王様……どうかお力をお貸しください」
魔王は一瞬、冷徹にヒヨリを一瞥し、考慮した後。
「そうだな。可愛いヒヨリに免じて、力を貸そう。アカリよ、ヒヨリに一生感謝するんだな」
すると、骸骨の頭がどんどん転がっていき、右に曲がって、姿が見えなくなる。
先程の厳しい、武士のような男は一切無く、弱々しい姿になるデュランダル。
腹を抱え、随分顔や体調が悪くなっていた。
そして、デュランダルは弱々しい声で頭部を追い掛けていく。
「待ってくれ~」
そして、デュランダルの姿が見えなくなると、不敵の笑い声が聞こえてくる。
魔王の後ろからマツタケが細い両眼に笑みを浮かべやってきた。
「これでワイも含めて、部下が二人、魔王陣営に入った訳や……ところで、奥の部屋で、詳しい話聞かせてもらいまっか。何や城周辺でちょろちょろ動いてる仲間もいるようやしな」
そして、大きめなリビングルームに連れて行かれた。
大半の家具が黒と赤で埋められ、陰気な場所。
やや明るいシャンデリアが室内を照らす。
やがて、リビング内で、玄関にお客が来たことを知らせる鐘が鳴る。
ソファーで大胆に頭に肘を付け、するめイカを噛みながら、横になるマツタケ。
「クリ坊の客が来たんやないか……?」
「そうだろうな」
*
アカリはヒヨリが市場で購入した毒を治す薬で復帰する。
そして、魔王は配下達に命令を下す。
「白豚はこの邸宅で料理長を任命する」
「待ってくれ。お客様を相手にした商売がしたいんだ。ぶたやという店はここでも続けたいんだ」
中年白豚の最後の挑戦とも云うべき炎の意志が顔から感じられた。
ここで、意志を無視、強制すれば、後々変な遺恨を残すかもしれない。
「分かった。好きにしろ。では、ヒヨリは白豚の手伝いやこの家の家事全般を任せる」
「はい」
目を細め、穏やかな顔で、頷く茶髪の少女ヒヨリ。
そして、魔王は常に怯えた小さな鼠の獣に目を向ける。
「ネズはこの家の支配人を任せる」
「はははい……かしこまりました」
そこにマツタケが不躾に鼻をほじりながら、
「こんな広い家、女一人じゃ家事は無理やろ」
そこで、アカリが金髪を揺らし立ち上がる。
「私が手伝うわ」
「女一人、増えたところで変わらん。それに、家事って食事、炊事のことだけやないで。この家に侵入者が来た時、戦って守らなあかん。うちには奴隷の獣がいるとはいえ……いや、さっき死んだやったけ? 現状、ある程度力がある奴が二、三人はいないとあかんな」
「私だってそれなりの力はあるわ!」
「確かにあんたは強い。だが、防御よりも、前衛で攻撃するタイプやろ」
「あなた、私の戦い方をいつ見たのよ」
「はぁ……面倒臭い性格してるわ。長年人を見て来てるから、体格や迸る微力で、力量が分かるんや」
「めんどくさいですって!?」
失礼な態度や言葉に苛立ちを露わにするアカリ。
マツタケはうんざりしたように顔を逸らす。
すると、魔王が腕を組み、苛立つ。
「勝手に話を進めるな」
「でも!」
「そもそもお前を俺の配下にしたつもりはないんだが」
魔王はソファーに冷静な態度で座りながら、そう諭す。
アカリは感情が込み上げたのか、頬を赤らませ、言い返す。
「私だって! あなたの奴隷になったつもりはないわ」
「毒も消えたようだし、ここにいる必要もないだろう」
「それは、そうだけど。でも、私はいつもあなたに助けてもらった……そのお礼というか」
「さっさと帰れ」
「あぁ……そうですか。じゃ帰ります」
頬を含ませ、鼻を鳴らしながら、足早に帰ろうとするアカリ。
そこに、ヒヨリが優しげな、心配の声で呼び掛ける。
「待ってアカリ。魔王様にお願いを聞いて欲しいんじゃないの? そうだよね」
「違うわ。もういいの」
アカリは一度立ち止まりそう吐き捨てるも、やはり意地になって帰ろうとする。
魔王は溜め息をついて、
「その話は知っている。神英雄団を倒したいという話だろ」
アカリは魔王の尾を引くように、再び立ち止まり、振り返って怒った顔をする。
「魔王の手なんか借りないわ! 私一人だって倒せるんだからね」
「本当に可愛くない奴だな」
「アカリ……一人じゃ危険だよ」
ヒヨリは悲しげな顔で、そうつぶやく。
しかし、意地になってアカリはクリーム色の髪を興奮させ、首を振り、挑戦の紫眼をする。
「悪事に染める魔王の手は絶対に借りない。私は正義を勝ち取るために、悪の英雄を倒すのよ」
魔王は鼻で笑い、批判する。
「良く言うな……毒にやられ、瀕死になり、そこに助けたこの俺にそんな台詞を吐けるとは……恩知らずにも程がある……まあ、その点、俺はお前に恩や見返りは求めていないがな。どっちが悪魔かは分からんわ」
魔王は眉間に皺を寄せ、憎たらしい顔をする。。
アカリは右拳を作り、奥歯を噛み締める。
「私は……私は……」
すると、ヒヨリが再度魔王にお願いする。
「魔王様……どうかお力をお貸しください」
魔王は一瞬、冷徹にヒヨリを一瞥し、考慮した後。
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