最強の魔王による転生令嬢を巻き込んだ異世界チート無双計画

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3章魔王軍団編成前編

3章10話恐怖の男

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 頭部が元の位置に戻ったこの骸骨人間こそがデュラハン族の【デュランダル】。
 アロンダイト軍団第一支部隊長の地獄の案内人の異名を持つ。
 頭部の両眼に精気が戻った紅の両眼。
 赤いマントを翻し、長身の体躯が存在感を際立ただし、携えた黒刀は闇が騒ぎ立てる。
 そして、デュランダルは頭部を取り戻した瞬間、表情が一変し、声も低くなる。
 冷血。魔王の血を継ぐ者。

「マツタケ……覚悟は出来ているな? ワシの頭部を盗んで、ここのままではすまんぞ? 指やら、貴様のマツタケ全て切り刻む」

 マツタケはキノコの頭を掻きながら、苦笑いをし、魔王の後ろへと隠れ、震えながら主張する。

「ワワワイは悪くないんや……この男にやれって脅されたんや」

 どうやら、全て俺に責任をなすりつけるようだ。
 不本意だが、この魔王軍を統一する身、臣下との争いは避けては通れないかもしれない。
 デュランダルは睨んだ紅の両眼で、見下げる。

「貴様は誰だ?」

 マツタケは声を上げ、

「おっそうだデュランダル! 喜べ、この男は魔王様だ! あのアロンダイト・ピロロ様が遂に帰還したんだぞ!」

 デュランダルは驚愕の両眼で、一瞬泳ぐが、激しく否定する。

「魔王様は不幸な死を遂げられ、天国へと召された。嘘抜かすんじゃねぇぞ! マツタケコラァァ!」

「良く見てみろって? この恐ろしい青眼、不適な笑い、暗闇を纏った身体、この麗しい坊主姿……どう見たって魔王様やろ」

「どう見たって違うわぁ」

 マツタケは不躾に魔王の顔を触り、頭をポンポンと叩く。
 このマツタケという男、魔王に対して何の敬意を払ってない気がする。
 だが、ここで、怒ってる場合ではない。
 その時、デュランダルは突如、大声を張り上げ、黒刀を抜き、全身から闇を放出し、再生し、立ち上がろうとするスケルトン達を一掃する。

「そうか……死にたいようだな。魔王の偽物が偉大なる魔王様を騙るとは何たる悪の所業! 許せん! 不届き者よ今すぐ戦え。ワシが地獄に葬り去ってやる!!」

 デュランダルは瞬時に、黒刀を伸ばし、正面突破で走り出し、魔王の全身に殺戮の乱撃を放つ。
 魔王は黒影で、乱撃を躱わしながら、後ろへ回避する。
 一方、マツタケは風呂場へ逃げ込み、戦線離脱。

「クリ坊? ガンバや! 後はクリ坊に任せるで」

「あっ……お前」 

 廊下は殺戮の乱撃によって、黒煙と無残な状況になる。

「本気で行くぞ? 小僧」

 そして、険悪な空気となり、紅の両眼と青眼が火花を散らせ、更に互いに手の弾丸と闇の乱斬りが放たれ、衝突する。
 黒煙が周囲に渡り、切り裂かれたのを機に、デュランダルが魔王の喉元に剣先を差し出す。

「遅いぞ。小僧」

「何ッ」

 その瞬間、闇の軌跡が斜め上に走り、血飛沫が飛んだ。
 そして、デュランダルは驚きの紅の両眼で、硬直する。
 完全に相手の喉元を突き刺し、逃れる間ではない。
 闇の軌跡には一段と濃い魔王の黒影も含まれていた。
 デュランダルの後ろには手の弾丸を今にも放とうとする魔王。
 デュランダルは動揺を現すかのように、奥歯を震わせる。

「何だ……そのスピードは……」

 黒影の空間移動スキルを使用したのは理解したが、明らかにその移動の速さが異常過ぎる。
 それは神技スキルの瞬間移動スキルに匹敵する。
 魔王はデュランダルの後頭部に左拳ですれすれに触れる。  
 でも、魔王の頬には一筋の血の傷。
 脅迫と勝者の青眼。
 
「お前……の負けだ。配下になれ」

「……まあ、魔王を名乗るだけの力はあるが、しかし」

 その刹那、歪に空間は歪み、魔王が気づいた時にはデュランダルが背後で、剣先を放っていた。
 魔王は目を見開き、動揺を現す。

「なぜ……お前が後ろに……先程は目の前にいたはず」

「……時を制する者は世界を制する……知ってるか?」

 次の瞬間、デュランダルの剣先は魔王の頭部ごと突き刺した。
 しかし、突き刺した魔王の傷は不死身の力によって、修復していく。
 デュランダルはその様を異様なものを見るような紅の両眼で目撃し、目を瞑り、刃を下ろした。

「なぜだ?」

 再び、対峙する魔王とデュランダル。
 魔王は不敵に笑い、右手を差し出し、次の攻撃へ。

「勝負はこれからだ」

「なかなか骨のある奴だ……まさか、ワシが本気を出したのはいつ以来だったか。認めてやろう。本物の魔王様が復活するまで、魔王の役務を務めるのはこちらとしては悪い話ではない」

 デュランダルは剣を懐に終い、立ち去っていく。
 だが、直線に軌道を描く、円形の風呂桶が回転しながら、デュランダルの骸骨の頭部に直撃し、ポロポロと廊下に転がり落ちる。

「へ?」
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