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3章魔王軍団編成前編
3章7話マツタケ
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そこは真っ白い湯煙の中だった。
ビチャビチャと駆ける足音が聞こえ、
「よっしゃ! 入るで!」
はしゃぐ青年の声がする。
脱衣場と思しき、灰色の岩石の正方形の部屋。
「浴場か」
そして、湯煙の発生源となってる方角へ、進んで見る。
そこは、岩石の造りの広い浴場。
天井から暖かな光は暗い風呂場を照らし、湯煙が漂うことによって、まるで雲の中に隠れる太陽のようだ。
湯煙の一部が消えた所に、黄色のバナナの被り物が見えた。
被っているのはこれといって特徴の無い人間の男。
細目はうとうとし、タオルを黄色のバナナが上に乗せ、欠伸をする。
すると、バナナ男は魔王に気づいたのか、馴れ馴れしい態度で、手招きする。
「何してるんや坊主……早よ、入れや」
何だこいつ。
まあ、でもこいつのおかげで助かったのだから、従っておくべきか。
バナナの男は魔王が来ると、荒々しく叫ぶ。
「何しとんねん! 服着たまま……風呂入る馬鹿がどこにいるんや」
「ああ、そうだったな」
「何をボケとんねん」
魔王はすぐさま、黒装束を消し、裸体へとなり、風呂へ浸かる。
魔王が礼を言う前に、バナナの男は話し出す。
「ワイはマツタケや。あんたは?」
ここは魔王と明かすべきなのか。
いや、様子を見るか。
「クリムトだ。それにしても、そのバナナの帽子はなんだ」
「何やと! これはバナナちゃうわ! しかも、帽子ちゃうぞ! 本物や」
「あっそうなのか。では何なんだそれは?」
「キノコや。キノコ族の松茸族や」
喋るキノコ珍しい。
それにしても、どう見たってバナナにしか見えないが。
マツタケは立ち上がり、顔を真っ赤にする。
「馬鹿にすんな!」
「ああ。悪い悪い」
マツタケは怒りを静め、湯船に深くまで浸かる。
バシャッンと湯が溢れ出し、どこかで桶がコーンと音を立てる。
それにしても、この湯船、とてもいい温度だ。
熱すぎる訳でもなく、冷たすぎる訳でもない。
そして、今までの疲れを全て回復してくれるような癒やしを感じるこの正体はなんだ。
「これは魔王様の我々臣下のために、創造した浴場や。もちろん、普通のとは違う。30分も疲れば、魔力と体力が中回復する、女神の湯と呼ばれるもんや」
「そうだったのか」
「それにしても、あんたさっきは危なかったな。もし、スケルトンに捕まれば、死者地獄の墓地に連れて行かれるところやったんぞ」
「死者地獄の墓地?」
「何やあんた知らんのか? まあ知ってもしゃないやろうが。関わらん方が懸命や。強いて言えば……スケルトン部隊を率いる……デュラハン族のデュランダルという男には気つけろ。今あいつは、この屋敷内にいるんや。ある物を探してな」
「そうか。で、そのデュランダルという男は魔王と何か関係があるのか?」
「あんた……そんなことも知らんのか? そいつはな……魔王アロンダイト軍団の忠実な隷や」
魔王軍団の奴らは確か、魔王が逝去した時に皆死んだなずではないか?
そこへ、ルルが頭の中で、囁く。
「はい! 魔王の側近、全部隊のリーダーは全滅しました。しかし、それぞれには息子や娘がおりまして、まだ生き残っているのです。恐らく、このマツタケという男も魔王軍団に近しい父親を持っているのでしょう」
そうか。
マツタケは顎を触りながら、自慢げに語る。
「デュランダル部隊は魔王軍でも、武闘派や、第一支部を任されている。そして、ワイは単独特殊部隊、第ニ支部や」
「単独特殊部隊?」
「ああ、主に暗殺や相手を攪乱させたり、大まかに言えばスパイ工作員みたいなもんや。正直、ワイしかできんと思うね。なんなら、あんたウチに入るか?」
「いや、遠慮しとく」
「何や相当ノリ悪いやないか?」
ビチャビチャと駆ける足音が聞こえ、
「よっしゃ! 入るで!」
はしゃぐ青年の声がする。
脱衣場と思しき、灰色の岩石の正方形の部屋。
「浴場か」
そして、湯煙の発生源となってる方角へ、進んで見る。
そこは、岩石の造りの広い浴場。
天井から暖かな光は暗い風呂場を照らし、湯煙が漂うことによって、まるで雲の中に隠れる太陽のようだ。
湯煙の一部が消えた所に、黄色のバナナの被り物が見えた。
被っているのはこれといって特徴の無い人間の男。
細目はうとうとし、タオルを黄色のバナナが上に乗せ、欠伸をする。
すると、バナナ男は魔王に気づいたのか、馴れ馴れしい態度で、手招きする。
「何してるんや坊主……早よ、入れや」
何だこいつ。
まあ、でもこいつのおかげで助かったのだから、従っておくべきか。
バナナの男は魔王が来ると、荒々しく叫ぶ。
「何しとんねん! 服着たまま……風呂入る馬鹿がどこにいるんや」
「ああ、そうだったな」
「何をボケとんねん」
魔王はすぐさま、黒装束を消し、裸体へとなり、風呂へ浸かる。
魔王が礼を言う前に、バナナの男は話し出す。
「ワイはマツタケや。あんたは?」
ここは魔王と明かすべきなのか。
いや、様子を見るか。
「クリムトだ。それにしても、そのバナナの帽子はなんだ」
「何やと! これはバナナちゃうわ! しかも、帽子ちゃうぞ! 本物や」
「あっそうなのか。では何なんだそれは?」
「キノコや。キノコ族の松茸族や」
喋るキノコ珍しい。
それにしても、どう見たってバナナにしか見えないが。
マツタケは立ち上がり、顔を真っ赤にする。
「馬鹿にすんな!」
「ああ。悪い悪い」
マツタケは怒りを静め、湯船に深くまで浸かる。
バシャッンと湯が溢れ出し、どこかで桶がコーンと音を立てる。
それにしても、この湯船、とてもいい温度だ。
熱すぎる訳でもなく、冷たすぎる訳でもない。
そして、今までの疲れを全て回復してくれるような癒やしを感じるこの正体はなんだ。
「これは魔王様の我々臣下のために、創造した浴場や。もちろん、普通のとは違う。30分も疲れば、魔力と体力が中回復する、女神の湯と呼ばれるもんや」
「そうだったのか」
「それにしても、あんたさっきは危なかったな。もし、スケルトンに捕まれば、死者地獄の墓地に連れて行かれるところやったんぞ」
「死者地獄の墓地?」
「何やあんた知らんのか? まあ知ってもしゃないやろうが。関わらん方が懸命や。強いて言えば……スケルトン部隊を率いる……デュラハン族のデュランダルという男には気つけろ。今あいつは、この屋敷内にいるんや。ある物を探してな」
「そうか。で、そのデュランダルという男は魔王と何か関係があるのか?」
「あんた……そんなことも知らんのか? そいつはな……魔王アロンダイト軍団の忠実な隷や」
魔王軍団の奴らは確か、魔王が逝去した時に皆死んだなずではないか?
そこへ、ルルが頭の中で、囁く。
「はい! 魔王の側近、全部隊のリーダーは全滅しました。しかし、それぞれには息子や娘がおりまして、まだ生き残っているのです。恐らく、このマツタケという男も魔王軍団に近しい父親を持っているのでしょう」
そうか。
マツタケは顎を触りながら、自慢げに語る。
「デュランダル部隊は魔王軍でも、武闘派や、第一支部を任されている。そして、ワイは単独特殊部隊、第ニ支部や」
「単独特殊部隊?」
「ああ、主に暗殺や相手を攪乱させたり、大まかに言えばスパイ工作員みたいなもんや。正直、ワイしかできんと思うね。なんなら、あんたウチに入るか?」
「いや、遠慮しとく」
「何や相当ノリ悪いやないか?」
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