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3章魔王軍団編成前編
3章4話白豚の悲しい姿
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しかし、大将は恐ろしい形相で怒鳴り、激しく首を振る。
「何度言ったはずだ。無理なのものは……無理だ!」
「大将……」
ヒヨリの天真爛漫な笑顔でも為すすべなしか。
ならば、こういうときは金だ。
そして、魔王は再度提案をする。
「店の購入資金やその他諸々は俺が出す……何だったら祝い金も提供しよう」
だが、金の誘惑は逆効果だった。
白豚の大将は顔を真っ赤にし、細い両目を釣り上げ、再度怒鳴る。
「金問題じゃない! もう帰ってくれ!」
失敗か。
しかし、絶対にこの店は俺の手中に治めるさ。
白豚よ。この魔王の力を思い知るがいい。
クックックックッ……。
魔王は不気味な笑みを浮かべたまま、店を後にした。
*
翌朝、ぶたやの屋台は焼け焦げた残骸になっていた。
昨日まで民衆の食卓として賑わっていた場所が一夜にして、こんな姿になると誰が想像しただろうか。
白豚の大将は地面に膝を付き、泣きながら、地面に拳で殴り続ける。
「うちの店がぁぁぁぁぁぁぁ! ぁああああ! ああぁぁぁぁぁ!」
深夜、何者かの放火に見舞われ、屋台ごと全ての調理器具が燃やされたのだった。
その白豚が泣き叫ぶ姿を後ろの物陰で、不敵に笑う魔王。
すると、ルルが頭の中で、子供のように魔王を非難する。
「魔王様……酷いです!」
「何が酷いんだ? この前も街を燃やして、お前も喜んでいただろ?」
「それはそうですが。やり過ぎればいつか天罰がくだりますよ! ルルは魔王様の心配を……」
「お前の小言はもういい! 少し黙ってろ!」
「魔王様! ルルは魔王様を心配して……もうこうなったらブーブーブーですよ!」
全くガキが、魔王に対して喚くな。
魔王はルルを無視し、進み、白豚の悲しい肩をポンポンと優しく叩く。
「大将……どうした?」
優しげな青眼で声を掛ける魔王。
一方、白豚は涙を見せないように、隠し、平然を装う。
「いや、何でも無い」
魔王は初めてみたかのような顔で、その無残な姿の屋台に絶句する。
「な……なんだこれははは……」
「うちの店が燃えたんだ……」
「なんて極悪非道な奴だ……代々受け継がれた店を……大将が命懸けで守ってきた店を燃やすなんて……許せない。俺を今すぐやった犯人を叩き出してやる!」
「……おいらが悪いんだ。屋台車を家に持ち帰れば……こんなことにはならなかった」
「大将よ……あんたは悪くはない。この屋台に炎を放った犯人が悪いんだ。この俺が亭主の仇を討つ」
「もういい……屋台や調理器具の全てが燃えてしまった。これじゃ商売なんて……できはしない」
魔王はしゃがみこみ、白豚を揺らし、挑発するかのように強く訴える。
「白豚よ……貴様の料理人魂はそんなものなのか!?」
「おいらは……もう」
「これで涙拭け……白豚よ」
黒紙を渡された白豚はぐしゃくじゃにしながら、顔を拭く。
「あああああ」
「……なぁ? 俺と新たな道を歩かないか? 世界がお前を待ってる」
魔王は白豚に手を差し出した。
白豚は額に手を抱え、悩むも、ようやく手に取った。
「すまねぇ」
「もうこれ以上泣くな! これからもっと忙しくなる。前に進まないと始まらない。さあ、立て、そして、共に行くぞ!」
「何度言ったはずだ。無理なのものは……無理だ!」
「大将……」
ヒヨリの天真爛漫な笑顔でも為すすべなしか。
ならば、こういうときは金だ。
そして、魔王は再度提案をする。
「店の購入資金やその他諸々は俺が出す……何だったら祝い金も提供しよう」
だが、金の誘惑は逆効果だった。
白豚の大将は顔を真っ赤にし、細い両目を釣り上げ、再度怒鳴る。
「金問題じゃない! もう帰ってくれ!」
失敗か。
しかし、絶対にこの店は俺の手中に治めるさ。
白豚よ。この魔王の力を思い知るがいい。
クックックックッ……。
魔王は不気味な笑みを浮かべたまま、店を後にした。
*
翌朝、ぶたやの屋台は焼け焦げた残骸になっていた。
昨日まで民衆の食卓として賑わっていた場所が一夜にして、こんな姿になると誰が想像しただろうか。
白豚の大将は地面に膝を付き、泣きながら、地面に拳で殴り続ける。
「うちの店がぁぁぁぁぁぁぁ! ぁああああ! ああぁぁぁぁぁ!」
深夜、何者かの放火に見舞われ、屋台ごと全ての調理器具が燃やされたのだった。
その白豚が泣き叫ぶ姿を後ろの物陰で、不敵に笑う魔王。
すると、ルルが頭の中で、子供のように魔王を非難する。
「魔王様……酷いです!」
「何が酷いんだ? この前も街を燃やして、お前も喜んでいただろ?」
「それはそうですが。やり過ぎればいつか天罰がくだりますよ! ルルは魔王様の心配を……」
「お前の小言はもういい! 少し黙ってろ!」
「魔王様! ルルは魔王様を心配して……もうこうなったらブーブーブーですよ!」
全くガキが、魔王に対して喚くな。
魔王はルルを無視し、進み、白豚の悲しい肩をポンポンと優しく叩く。
「大将……どうした?」
優しげな青眼で声を掛ける魔王。
一方、白豚は涙を見せないように、隠し、平然を装う。
「いや、何でも無い」
魔王は初めてみたかのような顔で、その無残な姿の屋台に絶句する。
「な……なんだこれははは……」
「うちの店が燃えたんだ……」
「なんて極悪非道な奴だ……代々受け継がれた店を……大将が命懸けで守ってきた店を燃やすなんて……許せない。俺を今すぐやった犯人を叩き出してやる!」
「……おいらが悪いんだ。屋台車を家に持ち帰れば……こんなことにはならなかった」
「大将よ……あんたは悪くはない。この屋台に炎を放った犯人が悪いんだ。この俺が亭主の仇を討つ」
「もういい……屋台や調理器具の全てが燃えてしまった。これじゃ商売なんて……できはしない」
魔王はしゃがみこみ、白豚を揺らし、挑発するかのように強く訴える。
「白豚よ……貴様の料理人魂はそんなものなのか!?」
「おいらは……もう」
「これで涙拭け……白豚よ」
黒紙を渡された白豚はぐしゃくじゃにしながら、顔を拭く。
「あああああ」
「……なぁ? 俺と新たな道を歩かないか? 世界がお前を待ってる」
魔王は白豚に手を差し出した。
白豚は額に手を抱え、悩むも、ようやく手に取った。
「すまねぇ」
「もうこれ以上泣くな! これからもっと忙しくなる。前に進まないと始まらない。さあ、立て、そして、共に行くぞ!」
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