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3章魔王軍団編成前編

3章5話ピロロタウン

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 ピロロタウン。
 ニ百年前、七魔神王アロンダイト・ピロロが建国した、魔獣と人間が棲む王国。
 当初、魔獣しかいなかったが、魔王が暗殺され逝去した機を境に、亜人や人間が棲むようになり、王国は急速に発展していき、経済、軍事、資源が豊富な世界有数の国家となり、超神国の一つとなった。
 その発展の原因として挙げられるのが、あの世界最悪の魔王が創造した街というのが一番になる。
 しかし、魔王が逝去したのを境に超大国に没落していく。
 また、魔王の権威、功績、怖れ故か、王族達はこの国の王座に着任しようとはしない。
 なぜなら、現在ピロロの有力なギルドや他超大国間で激しい抗争が勃発し、街は危機的状況になっていて、統一できない状況なのだ。
 ところで、ようやく、魔王は王国の入口へと足を踏み入れる。
 しかし、そこは広大な森林が生い茂るダンジョン。
 長い川や十メートル級の巨木が何千本と並び、濃霧が神秘さを際立せる深い森林。
 到底、この先に王国があるとは思えない。
 魔王は顰めっ面の表情で、巨大な白い門前で立ち止まる。

「……この王国か……記事で読んだことがあるぐらいの知識しかない。ルルよ、説明しろ」

「ピロロタウンはこの魔獣が棲む森林ダンジョンに囲まれ、更に東には広大な海があります」

「そうか」

「それと、一般市民は滅多に外には出ません。出入りするのはほとんどが外部の冒険者や亜人や魔獣の方が多い。この閉鎖的な立地のおかげで、神英雄団や他国からの侵略を防いでいる。それも、皆魔王が創造したおかげなのです」

    そして、やっと王国の最終門へと到着した。
 魔王は浮遊しながら、このピロロ王国の全貌を見下げる。
 南は現代的な街並み。
 また、北に連れて、闇のように暗く、古い巨塔や西洋風レンガの家々が多くなり、昔の趣が色濃く残っている。
 北と南の風景では明らかに異なっている。
 横に伸びた広大な敷地面積、一つの地区から別の地区に歩いて行くのに二、三時間はかかるらしい。

「ここが……新平和幕府団の直轄地の東平和地区、西平和地区の二地域を占領しています。この地域には一般市民や他国英雄が暮らしたり、寝泊まりをしています。ちなみに、この新平和幕府団は世界十聖鬼団の一つ。魔獣を排除し、人間のみ世界を創るをスローガンにし、あの神賢者で構成された最強軍団です。統一が成されていない混乱期にあるピロロ王国ですが、事実上統一しているのはこのギルドなのです」

 神賢者?

「叡智の頭脳と世界を滅ぼす力を持つ覇王の力を持った神賢者……もしかしたら、神英雄団を凌駕するかもしれません」

 面白い。

「で、その真ん中の一つの地区が鬼龍団の領域。主に、亜人が暮らしています。このギルドは幕府団とは良好な関係を保っていますが、魔王アロンダイト団とは激しい対立を深めています」

 ほう。
 魔王アロンダイト軍団?

「その後ろの二つの地区が……魔王が支配していた領域。 そこに魔王アロンダイト軍団があります……ですが、魔王亡き後、いくつもの派閥ギルドに別れ、抗争を繰り返しています」

「補足ですがヒヨリさんはアカリさんを連れて病院へ、ネズさんと白豚さんはアカリさん毒を治す薬草と食料の買い出しで、既に入国しています」

「そうか」


          *

 魔王は飛行加速をし、浮遊する我が根城へと到着した。
 アロンダイト地区は東と西に別れ、その中央に地面ごと空に浮かぶ黒い城こそが魔王の城。 
 地獄にある三巨塔として、恐れられる。
 暗い、深い霧が漂わせ、空を浮かぶその姿は恐怖を駆り立てる。
 魔王は何の戸惑いもなく、邸宅の全長三十メートルの巨大な門を開く。
 この巨大な門のせいで、先程見えていた根城は見えず、しかも、だんだんと下にまで降りてきて、暗い霧が濃くなってくる。
 抜けると、銀色の石畳のある巨大な広場へと到着する。
 全長何千メートルあろうかスペース。
 ここに魔獣の軍団でも率いて、行進やら決起集会でもするのだろう。
 その時、周囲に突如、悪の殺気を放つ魔獣が現れる。
 
 
 
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