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3章魔王軍団編成前編
3章1話経営者として
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そして、大会から途中離脱を果たし、アカリを魔力医療センター病院へ送った後、夕食も兼ねて、いつものぶたやに来ていた。
そして、きつねそばを寂しく、穏やかに食べる。
「ふっふっ……ずる……ふっ……ずるずる」
いつものようにあの白豚の店主が一段落を付いて、画面の貴族達に向かって、あーだこうだ言ってる。
魔王はまた金も払わず、不気味に笑って立ち上がり、そっと帰ろうとする。
「待って~」
その声はこのぶたやの看板娘である、茶髪のショートカットのアイドル級美少女のヒヨリ。
おっとり系の眠そうな顔ではあるが、お姉さんのような心配の目つきで。
「どうしたヒヨリ?」
「アカリは大丈夫なのでしょうか?」
「ああ。心配はない。これで」
「あー待ってください」
「なんだ?」
「この後時間空いてます……でしょうか?」
「まあ」
*
そして、夕日も沈み掛けた頃合い、ヒヨリに連れられたのはあの鼠の怪しげなピンク色のお店だった。
外観は赤白の竜宮城のモデルとなっており、中のピンク色の光が地面を照らす。
けれど、それにしても、いつもは格子状にいたあの魅惑的な女はおらず、しかも、客も通るがチラ見程度で、怯えたように去って行く。
「ここか」
確か、神英雄団が暴力によって危機に曝されていたのを偶然店内にいた俺が救った店。
そして、その経営権を獲得した店。
「それにしても」
先程は夕日で暗くて、あまり見えなかったが、近くで見ると、建物に小さな穴があったり、硝子が割れていたり、看板もぐらぐらとしていて、建物の劣化が激しいのか、不審な人物に嫌がらせを受けているか、どちらも考えられる。
穏やかな青光の店内に、客は一人もおらず、また他の従業員もいない。
目の前にいるのは、ヒヨリと黒服を身につけた小さな鼠のネズ。
魔王は怒りの青眼で、ネズを睨む。
ネズは出っ歯を震わせ、赤い鼻をひくひくさせ、全身に鳥肌が立つ。
「これは、どういうことだ?」
「いや……あの……その……えと」
「その……や……えとじゃ分からないだろ? なぜ従業員がいない!?」
「神英雄団の支配がなくなって、従業員はお店を辞めて行ってしまって」
魔王はガラスのテーブルを叩きつけ、大声を張り上げる。
「なぜ? 貴様は止めなかった!?」
「いや、あの……その。連絡途絶え、無断で辞めていくものでしたから」
「お前は……本当に……皆から馬鹿にされているのか……リーダー性の無い奴が」
「すいません。それで……なのですが? 僕もこのお店を辞めたいのですが?」
ネズは目を泳がせがながら、魔王を伺う。
魔王はその一言に更に怒りを燃やし、額に皺を寄せる。
「何だと?」
そこで、ヒヨリが小さな胸に右手を当て、懇願するようなブラウン瞳で訴える。
「皆が辞めて行ったのは近い内に……神英雄団のラグナロクが報復のために、この店諸共従業員全員殺しに行くと……そして、魔王様もその対象だって」
魔王は怒りを抑え、顎に手を当て、考える。
報復だと?
この魔王である俺に?
「……面白い」
*
夜刻、ホラホラ王国は中心街は灯りが明るいが、郊外は電灯はまばらにあるも、やや暗い。
高い建物の屋根の上に、怪しげな白布フードを被った謎の三人の集団がいた。
「さて、噂は本当なのか」
「ああ。我々が数年の間探し求めていた女神がこの王国に潜伏しているという噂が多数。そして、その女神が我々神英雄団とやり合い……こちらが敗北したとな」
「まさか、ミハイル様、スレイマン様がやられ、死を迎えるとはな。女神がそんなに強い奴だとは」
「……いや、どうやら違うらしい」
「どういうことだ?」
「女神に協力者がいるらしい」
「何? そんな情報は聞いてないぞ」
「こちらもな初耳だな。病院にいる女神を誘拐することが今回の任務のはずだ」
「その協力者は僕が直々に抹殺する。うちの可愛い部下がやられたんでな」
「失態は許されないぞ? 我々がここに集まっている時点で、事は急を要し、いずれ大神英様の耳にも入る」
「分かっている」
そして、きつねそばを寂しく、穏やかに食べる。
「ふっふっ……ずる……ふっ……ずるずる」
いつものようにあの白豚の店主が一段落を付いて、画面の貴族達に向かって、あーだこうだ言ってる。
魔王はまた金も払わず、不気味に笑って立ち上がり、そっと帰ろうとする。
「待って~」
その声はこのぶたやの看板娘である、茶髪のショートカットのアイドル級美少女のヒヨリ。
おっとり系の眠そうな顔ではあるが、お姉さんのような心配の目つきで。
「どうしたヒヨリ?」
「アカリは大丈夫なのでしょうか?」
「ああ。心配はない。これで」
「あー待ってください」
「なんだ?」
「この後時間空いてます……でしょうか?」
「まあ」
*
そして、夕日も沈み掛けた頃合い、ヒヨリに連れられたのはあの鼠の怪しげなピンク色のお店だった。
外観は赤白の竜宮城のモデルとなっており、中のピンク色の光が地面を照らす。
けれど、それにしても、いつもは格子状にいたあの魅惑的な女はおらず、しかも、客も通るがチラ見程度で、怯えたように去って行く。
「ここか」
確か、神英雄団が暴力によって危機に曝されていたのを偶然店内にいた俺が救った店。
そして、その経営権を獲得した店。
「それにしても」
先程は夕日で暗くて、あまり見えなかったが、近くで見ると、建物に小さな穴があったり、硝子が割れていたり、看板もぐらぐらとしていて、建物の劣化が激しいのか、不審な人物に嫌がらせを受けているか、どちらも考えられる。
穏やかな青光の店内に、客は一人もおらず、また他の従業員もいない。
目の前にいるのは、ヒヨリと黒服を身につけた小さな鼠のネズ。
魔王は怒りの青眼で、ネズを睨む。
ネズは出っ歯を震わせ、赤い鼻をひくひくさせ、全身に鳥肌が立つ。
「これは、どういうことだ?」
「いや……あの……その……えと」
「その……や……えとじゃ分からないだろ? なぜ従業員がいない!?」
「神英雄団の支配がなくなって、従業員はお店を辞めて行ってしまって」
魔王はガラスのテーブルを叩きつけ、大声を張り上げる。
「なぜ? 貴様は止めなかった!?」
「いや、あの……その。連絡途絶え、無断で辞めていくものでしたから」
「お前は……本当に……皆から馬鹿にされているのか……リーダー性の無い奴が」
「すいません。それで……なのですが? 僕もこのお店を辞めたいのですが?」
ネズは目を泳がせがながら、魔王を伺う。
魔王はその一言に更に怒りを燃やし、額に皺を寄せる。
「何だと?」
そこで、ヒヨリが小さな胸に右手を当て、懇願するようなブラウン瞳で訴える。
「皆が辞めて行ったのは近い内に……神英雄団のラグナロクが報復のために、この店諸共従業員全員殺しに行くと……そして、魔王様もその対象だって」
魔王は怒りを抑え、顎に手を当て、考える。
報復だと?
この魔王である俺に?
「……面白い」
*
夜刻、ホラホラ王国は中心街は灯りが明るいが、郊外は電灯はまばらにあるも、やや暗い。
高い建物の屋根の上に、怪しげな白布フードを被った謎の三人の集団がいた。
「さて、噂は本当なのか」
「ああ。我々が数年の間探し求めていた女神がこの王国に潜伏しているという噂が多数。そして、その女神が我々神英雄団とやり合い……こちらが敗北したとな」
「まさか、ミハイル様、スレイマン様がやられ、死を迎えるとはな。女神がそんなに強い奴だとは」
「……いや、どうやら違うらしい」
「どういうことだ?」
「女神に協力者がいるらしい」
「何? そんな情報は聞いてないぞ」
「こちらもな初耳だな。病院にいる女神を誘拐することが今回の任務のはずだ」
「その協力者は僕が直々に抹殺する。うちの可愛い部下がやられたんでな」
「失態は許されないぞ? 我々がここに集まっている時点で、事は急を要し、いずれ大神英様の耳にも入る」
「分かっている」
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