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2章英雄闘拳地区予選
2章27話申す
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「それは、無理な相談じゃ」
老龍騎士が息を整え、怒りの黄色の龍の両眼で、前へと出る。
地下ゴブリンも、突然動く老体に少しびっくりする。
「何だ?」
「ワシは先代のゴブリン女王の恩に報いるため、何としてでも、ゴブリン文明の歴史を見届けねばならん……現ゴブリン女王を失った今……ワシにこれぐらいしかやれん」
「勝手にしろ」
魔王は苛立ちを吐き捨て、再度思考に取り掛かる。
それにしても、この百体程度の新生ゴブリンでこの岩壁に穴を掘ることができるのか。
恐らくある程度まで行けるだろう。
それ相応の年月は要求されるだろうが。
「とにかく新生ゴブリンよ! 発掘作業に取り掛かれ!」
「ギャァァァァァ!」
そして、新生ゴブリンの発掘作業は始まったが、削り取っているだろうことは目視で分かるが、如何せん進みが遅い。
これでは、百年経っても、掘ってるに違いない。
どうするべきか……。
すると、アカリが不満を隠そうとしているが隠しきれてない態度で、問い掛ける。
「で、何をやるつもりなの?」
魔王は溜め息もつくも、隠しても仕方ないので、アイデアを提案してくれるかもしれないという淡い思いで、事情を話す。
「この先に新たな文明がある。だから、こうして掘っている訳だ」
「嘘でしょ!?」
「な、なんじゃと!?」
驚愕する二人。
「ゴブリンが千年もの間……発掘していたのだ。新たな文明がこんな近くにあるはずがない」
「ゴブリン女王が隠していた。恣意的な欲望のために、ゴブリンを一生働かせ、わざと文明を見つからないようにしていたのだ」
「まさか……」
「これは事実だ」
魔王のその言葉は真実か定かではないが、ゴブリン達が黄色の両眼を輝かせ、依然よりも元気良く穴を掘っている姿を見れば、文明はあるはずはないと否定するのは憚られる。
アカリはゴブリンの姿を目にし、何かを悟ったのか、優しげな紫眼で、魔王に言葉を掛ける。
「やり方は間違っているけど、このゴブリン達を救ったことは正しいわ」
「フンッ」
魔王は誉めているのか批判しているのか、判別できず、また恥ずかしさもあり、曖昧な態度を取る。
すると、アカリが無理矢理に背伸びして、含んだ笑みで覗いてくる。
「照れてるの?」
「うるさいぞ!」
そんな、緊張の糸が切れた空気の中、一匹のヘルメットを深く被った小さなゴブリンが意見を口にする。
しかも、言語が話せるゴブリンとはな。
ちなみに、通訳機はオフになっている。
「支配者様に意見を申し上げたいと思います」
魔王は再び、神経を張り詰めさせ、その場の空気を悪くする。
その影響ゆえか、他のゴブリン達も悪寒を感じ、縮こまり、作業スピードも遅くなる。
「意見だと!?」
すると、アカリがゴブリンを擁護するかのように、魔王を宥める。
「別にいいじゃない。意見ぐらい」
「部外者は黙れ!」
「ちょっと何よそれ」
「主従関係の崩壊に繋がる重要なことだ……」
魔王はアカリの口出しを一蹴し、意見を申すゴブリンを青眼で、上からの圧力を掛ける。
そのゴブリンはヘルメットによって表情はしっかりとは窺えないが、依然として、屈することはなく、前へ一歩出た。
ここで、下手に主人である俺が弱さや統率力の無さを露呈すれば、他のゴブリンに示しつかず、不労働(ストライキ)に発展する可能性がある。
慎重に事を運ばなければ、
「奴隷の分際で、この支配者である俺様に意見を申すということは、それなりの覚悟があってのことだろうな?」
「ちょっと、あんた!」
「アカリは黙っていろ! これは俺とこいつの問題だ!」
「お嬢ちゃん……魔王の言う通りじゃ。ここは魔王に任せなさい」
珍しく、老龍騎士が魔王の擁護に回る。
渋々アカリは魔王の反抗を抑える。
そして、再度は魔王は脅迫で問い掛ける。
「もう、二度は言わない。死を覚悟して、慎重に発言しろ。お前程度のゴブリンいくらでもいるのだ」
「はい。僕の命がどうなろうと構いません。ただ、新たな文明の発見に貢献したい、何より、支配者様の崇高な計略に力添えを果たしたいのです」
なかなかの覚悟だな。
しかし、若いだけの威勢はこの俺には通用はしない。
「では、申せ」
「ありがとうこざいます。あのスコップでは新生ゴブリン達には合わず、適さないかと。現状、扱い切れず、作業に遅延が生じています」
確かにこの新生ゴブリンは俺仕様に創造されている。
このゴブリン女王の細胞から作ったと見られるスコップと新生ゴブリンが適合しないのも頷ける。
「よし、分かった。すぐに、新生ゴブリンのスコップを創造しよう」
「あの……いや、なんでもありません」
「この際だ……何でも申せ」
「はい。スコップではなく、ドリルの方が宜しいかと。昔、皆スコップで穴を掘るのがゴブリン達の常識で、伝統でした。しかし、今や時代は変わり、ドリルの方が効率が良く、疲労も少なく、不労動が生じにくいのです。ゴブリン達も、日々進歩しなければいけないと、この千年という長い年月を経てようやく気づいたのです」
「そうか。すぐさまドリルを創造する。少し待つが良い」
「はっ!」
「ルルよ聞いているか?」
「はい! お久しぶりです魔王様。何でしょうか?」
「俺だけではドリル製造は無理だ。ルルの手を借りたい。出来るか?」
「はい! もちろんです! 任せてください魔王様!」
「よろしく頼むぞ」
老龍騎士が息を整え、怒りの黄色の龍の両眼で、前へと出る。
地下ゴブリンも、突然動く老体に少しびっくりする。
「何だ?」
「ワシは先代のゴブリン女王の恩に報いるため、何としてでも、ゴブリン文明の歴史を見届けねばならん……現ゴブリン女王を失った今……ワシにこれぐらいしかやれん」
「勝手にしろ」
魔王は苛立ちを吐き捨て、再度思考に取り掛かる。
それにしても、この百体程度の新生ゴブリンでこの岩壁に穴を掘ることができるのか。
恐らくある程度まで行けるだろう。
それ相応の年月は要求されるだろうが。
「とにかく新生ゴブリンよ! 発掘作業に取り掛かれ!」
「ギャァァァァァ!」
そして、新生ゴブリンの発掘作業は始まったが、削り取っているだろうことは目視で分かるが、如何せん進みが遅い。
これでは、百年経っても、掘ってるに違いない。
どうするべきか……。
すると、アカリが不満を隠そうとしているが隠しきれてない態度で、問い掛ける。
「で、何をやるつもりなの?」
魔王は溜め息もつくも、隠しても仕方ないので、アイデアを提案してくれるかもしれないという淡い思いで、事情を話す。
「この先に新たな文明がある。だから、こうして掘っている訳だ」
「嘘でしょ!?」
「な、なんじゃと!?」
驚愕する二人。
「ゴブリンが千年もの間……発掘していたのだ。新たな文明がこんな近くにあるはずがない」
「ゴブリン女王が隠していた。恣意的な欲望のために、ゴブリンを一生働かせ、わざと文明を見つからないようにしていたのだ」
「まさか……」
「これは事実だ」
魔王のその言葉は真実か定かではないが、ゴブリン達が黄色の両眼を輝かせ、依然よりも元気良く穴を掘っている姿を見れば、文明はあるはずはないと否定するのは憚られる。
アカリはゴブリンの姿を目にし、何かを悟ったのか、優しげな紫眼で、魔王に言葉を掛ける。
「やり方は間違っているけど、このゴブリン達を救ったことは正しいわ」
「フンッ」
魔王は誉めているのか批判しているのか、判別できず、また恥ずかしさもあり、曖昧な態度を取る。
すると、アカリが無理矢理に背伸びして、含んだ笑みで覗いてくる。
「照れてるの?」
「うるさいぞ!」
そんな、緊張の糸が切れた空気の中、一匹のヘルメットを深く被った小さなゴブリンが意見を口にする。
しかも、言語が話せるゴブリンとはな。
ちなみに、通訳機はオフになっている。
「支配者様に意見を申し上げたいと思います」
魔王は再び、神経を張り詰めさせ、その場の空気を悪くする。
その影響ゆえか、他のゴブリン達も悪寒を感じ、縮こまり、作業スピードも遅くなる。
「意見だと!?」
すると、アカリがゴブリンを擁護するかのように、魔王を宥める。
「別にいいじゃない。意見ぐらい」
「部外者は黙れ!」
「ちょっと何よそれ」
「主従関係の崩壊に繋がる重要なことだ……」
魔王はアカリの口出しを一蹴し、意見を申すゴブリンを青眼で、上からの圧力を掛ける。
そのゴブリンはヘルメットによって表情はしっかりとは窺えないが、依然として、屈することはなく、前へ一歩出た。
ここで、下手に主人である俺が弱さや統率力の無さを露呈すれば、他のゴブリンに示しつかず、不労働(ストライキ)に発展する可能性がある。
慎重に事を運ばなければ、
「奴隷の分際で、この支配者である俺様に意見を申すということは、それなりの覚悟があってのことだろうな?」
「ちょっと、あんた!」
「アカリは黙っていろ! これは俺とこいつの問題だ!」
「お嬢ちゃん……魔王の言う通りじゃ。ここは魔王に任せなさい」
珍しく、老龍騎士が魔王の擁護に回る。
渋々アカリは魔王の反抗を抑える。
そして、再度は魔王は脅迫で問い掛ける。
「もう、二度は言わない。死を覚悟して、慎重に発言しろ。お前程度のゴブリンいくらでもいるのだ」
「はい。僕の命がどうなろうと構いません。ただ、新たな文明の発見に貢献したい、何より、支配者様の崇高な計略に力添えを果たしたいのです」
なかなかの覚悟だな。
しかし、若いだけの威勢はこの俺には通用はしない。
「では、申せ」
「ありがとうこざいます。あのスコップでは新生ゴブリン達には合わず、適さないかと。現状、扱い切れず、作業に遅延が生じています」
確かにこの新生ゴブリンは俺仕様に創造されている。
このゴブリン女王の細胞から作ったと見られるスコップと新生ゴブリンが適合しないのも頷ける。
「よし、分かった。すぐに、新生ゴブリンのスコップを創造しよう」
「あの……いや、なんでもありません」
「この際だ……何でも申せ」
「はい。スコップではなく、ドリルの方が宜しいかと。昔、皆スコップで穴を掘るのがゴブリン達の常識で、伝統でした。しかし、今や時代は変わり、ドリルの方が効率が良く、疲労も少なく、不労動が生じにくいのです。ゴブリン達も、日々進歩しなければいけないと、この千年という長い年月を経てようやく気づいたのです」
「そうか。すぐさまドリルを創造する。少し待つが良い」
「はっ!」
「ルルよ聞いているか?」
「はい! お久しぶりです魔王様。何でしょうか?」
「俺だけではドリル製造は無理だ。ルルの手を借りたい。出来るか?」
「はい! もちろんです! 任せてください魔王様!」
「よろしく頼むぞ」
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