最強の魔王による転生令嬢を巻き込んだ異世界チート無双計画

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2章英雄闘拳地区予選

2章26話もう苦しまなくていい

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 ゴブリンは大半が雄として生まれ、雌として生まれてくることは滅多にない。
 仮に雌として生まれれば、子孫を残す役割を与えられる。
 けれど、このゴブリンはその役割だけで、一生を終えるのが、嫌になったのだろう。
 本当に可哀想だ。
 魔王は悲しみの青眼で、ゴブリン女王にゆっくり近づく。

「もう、悲しまなくていい……俺がお前を人間にしてやる。女にしてやる」

 その衝撃の発言に、ゴブリン女王は驚愕し、固まるも、首を振る。

「そんな嘘の優しさで妾を騙せると思うなぁぁぁぁぁ!」

「もういい! 静かにしろ」

 魔王は醜いゴブリン女の顔を強く抱き締める。
 ゴブリン女王は久し振りの雄の温もりに、感極まり、再度号泣する。

「美しくなりたかったんじゃ……美し……」

「お前は化け物なんかじゃない! お前には可愛いらしいピンクの目玉がある……貴様は……可愛くて、美しい」

「でも……お主は妾を化け物と呼んだではないか!!!」

「あれは嘘だ。ゴブリンを投げつけられ、カッとなってお前に当たってしまった。すまなかった」

「本当か?」

「ああ。もういい泣くな……お前は美しい心を持ってる。そして、今から人間の美しい女にしてやる……そしたらさ俺と結婚しよう」

「あんたは……妾でいいのか?」

「お前がいい」

「うん」

 ゴブリン女王は恍惚の表情で、魔王の雄姿の顔を見つめる。
 彼女は今までの人生で誰から告白もされず、付き合うこともできず、毎日毎日機械のようにゴブリンの卵を生むという役割を定められてきた。
 しかし、今日で、この呪われた運命が解き放れることになる。

 すると、魔王は立ち上がり、左手をゴブリン女王に差し出す。
 ゴブリン女王は頬を赤らめ、両手を組み、正座をする。
 今から人間の美女になれるんだという新たな自分と結婚という幸せが待っているという純情な期待が溢れ出す。
 その瞬間、魔王に企みのある青眼と笑みが垣間見えた。

「もう苦しまなくていい。呪われたゴブリンの運命は俺が変える」

 そして、左手から破壊の鉄の弾丸が生じ、炎を付加し、ゴブリン女王の頭上を垂直に貫く。

「え」

 岩と岩の隙間にゴブリン女王の、流血した、ふざけた顔がそこにあった。

「本当に気味が悪いな」

 足でゴブリン女王の顔面を更に押し込む。
 物凄い酷い顔と鼻息を吹きながら、必死で地上へ出ようとする。

「フンガッ……フンガッ……フンガッ」

「フガフガやかましいわ!」 

 刹那、地上は地割れし、崩壊し、穴の中へ吸い込まれていく。

「結婚はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 ゴブリン女王の怒りの断末魔が聞こえてきたが、炎の渦がボワッと威力を増し、生命を絶えさせる。
 まだ、結婚とか言うか……醜いな。
 そして、魔王は地下ゴブリンの支配権、地下迷宮の発掘権を獲得する。
 これが魔王の真の目的だった。
 ゴブリン女王には、せめて、幸福に最期を迎えてもらおうと、下手な芝居が売ったが、あの断末魔を聞く限りに、呪いに満ちた思いで死を迎えてたことに違いない。
 しかし、もうそんなことはどうでもいい。
 これから、新たな文明の発掘作業に着手できるのだからな。

「哀れなゴブリンよ」

 その時、魔王は背後に悲惨な顔となったゴブリン女王が現れた気がしたが、それは幻覚に過ぎない。
 するとわどこからともなく、汚い、破けた、キラキラとした緑色のドレスが落ちてきた。

「何だこれは」

 よく見えると、真ん中に赤い刺繍で、ゴブミと書かれていた。

「うっ」

 思わず変な声を出して、ドレスを捨てる。
 魔王は額の汗を垂らし、不吉な予感がしたので、そのドレスを踏み潰し、すぐさま炎の弾丸を投じ、燃やす。

「なんだ! なんだ! なんなんだ。なんだというのだ!」
 
 あいつは醜いから俺が殺してあげた。
 これからの人生、あの醜い顔では、悲惨な末路を送っていた。
 あいつを俺が救ったんだ。
 そして、魔王は生き残った地下ゴブリンを率いて、例の発掘作業途中段階の場所まで来ていた。
 支配権が魔王に移ったことで、地下ゴブリンは魔王に対して、忠誠を誓い、一糸乱れぬ動きと、勤勉な態度で従う。
 魔王は更にゴブリンの特殊能力つまり役割である穴掘りを変更し、魔王への一生の忠誠という、明らかにおかしい特殊能力を付与した。
 なお、新たな能力はその名の通りだ。
 魔王の一生の忠誠、そして、目標達成したら死亡という制約を取っ払った。
 加えて、それぞれのゴブリンに単体での子孫を生産できる生殖機能を追加し、持続的な労働力を可能にする。
 ここに地下コブリン改め、新生ゴブリンとする。
 すると、魔王は一度、止まり、またあることを考える。

「正直言ってゴブリンでなくて、魔王である俺の力で穴を掘ることは出来るんじゃないか」

 試しに、破壊の鉄の弾丸を何度か目の前の岩の壁にぶつけるが、びくともしない。
 百段階発展した鉄の弾丸ですら無理だ。
 というより、ここだけ何かがおかしい。
 異空間かを感じさせる。
 俺の放った魔力が岩の壁に衝突し、威力が半減している。
 何か特殊な岩かと思ったが、そうではないらしい。
 この俺が知り得ぬものとは何だ。
 ますます、まだ見ぬ新たな文明を知りたくて仕方がない。
 その時、背後からまたあの正義のヒロイン気取りをした女神の声がした。

「何しているの! あんた?」

「何だ! 今は邪魔をするな! 考え事をしているのだ!」

「良くそんなことが言えるわ」

 アカリの肩に狼狽しきった老龍騎士がぜあぜあと息切れをして、深刻の状態だった。
 
「分かるわよね? あんたがやったことよ」

「俺がじじいに何かしたのか?」

「本当に呆れるわ。ゴブリン女王を殺しておいて」

 アカリの紫眼がムッとし、額に皺が入る。
 いつもそんな顔ばかりしやがって。
 そんな俺が憎いか?

「あなたが日頃の悪行を正すまでは、この態度は変わらない。仮に正したとしても、私が許すかどうか分からない」

 馬鹿馬鹿しい。
 生意気に女神風情が、魔王である俺に説教しやがって。

「あーお前の戯言は聞き飽きた……さあ、ここから出て行け」


 
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