最強の魔王による転生令嬢を巻き込んだ異世界チート無双計画

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1章女神の願い

1章37話コーラ

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 顔を合わせたと同時にそんな声が漏れた。
 それは俺ばかりではない。
 目の前にいるのはショートカット茶髪の少女ではなく、何故だか、斜めにいる帽子を深く被った、挙動不審の男か女の奴だ。
 さっきから俺を尾行してる。
 今まで、泳がせておいたが、我慢の限界だ。

「何なんだあいつは……目障りな奴だな」

 すると、少女の穏やかな顔が目の前に。
 切り揃えられた前髪、ふわりと浮かんだ横髪。
 正統派アイドル級の容姿、そのほんわりとした癒し系の顔とブラウンの瞳で、男を落とすのだろう。
 名はヒヨリ。
 そういえば、この少女先程、コンビニでバイトしていたんじゃないのか。
 では、そのバイトの時間が終わり、今度はこの妖しげなバイトの時間という訳か。
 なかなかの感心ものだ。
 ヒヨリは人形の状態で、首を傾げる。
 ヒヨリの細身に纏うのは制服風のドレスに、身体に似つかわしくない大きな胸、帯びるお尻、白い生足。

「何をお飲みになりますか?」

「コーラで」

「コーラ?」

「ああ、コーラだ」

「……コーラですね」

 ヒヨリは頬に人差し指を当て、珍しい注文に困惑しながらも、コーラを持ってくるよう鼠男にお願いする。
 そして、魔王はコーラを一杯飲み、ヒヨリと話を始める。

「今日はいい天気だったな」

「そうでしたね」

「ところで……明日も晴れだそうだ」

「そうなんですね」

 何だこの老夫婦の会話は!
 これは俺が悪いのか?
 このヒヨリという少女も、客商売をしているなら、何か話題を出しリードするのが常識だろう。
 それにしても、なぜ魅了という特殊能力はいつまで経っても発揮しない。
 思惑では、速攻、二人で肩を抱き寄せ、店を後にする手筈だったはず。
 な? ルル?

「はい! 呼びました?」

「今の話聞いていただろ?」

「はい。必ず魔王様なら魅了の効力を発揮出来ますよ」

「発揮できてないから、苛立っているんだ」

 すると、ヒヨリは耳に掛かった薄い髪を少し触り、クルンクルンと二杯目のコーラを掻き回し、穏やかに質問する。
 
「名を伺って宜しいですか?」

「俺は……クリムト。いや、魔王だ」

「魔王? 私はヒヨリです」

「ああ……知っている」

「え?」

「いや、なんでもない。こっちの話だ」

「そうですか」

「それにしても、バイト大変ではないか?」

「まあ、確かに大変ですけど、頑張るしかないです」

 
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