最強の魔王による転生令嬢を巻き込んだ異世界チート無双計画

1章女神の願い

1章31話魔王を尾行する

　あの魔王本当にムカつく。
　結局、依頼の件は機械不良で、依頼承認とはならなかったし、あれから一切連絡しても、返信来ないし。
　アカリがそんな不満を胸に繁華街を歩いていると、その時、あの坊主男が見えた。
　全身が黒影に包まれた、異様なオーラを放ち、あの企みのある青眼がキョロキョロと周囲を見渡す。
　アカリは思わず看板に隠れる。
　
「なんで……あいつがここに」

　それから、魔王は一人、雑踏の中を歩いて行く。
　これはチャンスかもしれない。
　このままあいつを尾行し、弱みを握り、私の目の前で絶対ひざまずかせて見せる。
　そして、アカリは近くにあった仮装屋で帽子を買い、深く被る。
　魔王を尾行すると、異常な行動が目に入る。
　数分歩いては、止まり、数分歩いて、止まるを繰り返す。
　止まった地面を見ると、
　
「蟻？」
　
　黒い蟻の大群が潰されていた。
　そういえば、最初に出会った時も、蟻を潰していたわね。
　もしかして、蟻が嫌いなのかしら。
　すると、魔王が右角を曲がってしまい、姿を見失う。
　
「あっ。行っちゃう」
　
　急いで、追い掛けると、魔王は空を一度見上げ、気味悪く笑い、そして、コンビニマートに入る。

「ウィーン」

「いらっしゃいませ！」

　あいつもコンビニなんて行くのね。
　てっきり、高級レストランで、豪華料理を食べていると思ったけど。
　店内に入ると、魔王は右側のコーヒーマシン売り場にいた。
　アカリは慌てて、一歩前の左側の棚へと隠れる。
　
　　　　　　　　　＊


　その時、魔王はコーヒーマシン売り場で、苛立っていた。
　クソ……。
　俺はいつもの指定の位置で、コーヒーを淹れているのに。
　誰だ！　先にカップを占有している奴は。
　しかも、コーヒーを淹れ終わってるというのに、取りに来ないとは何事だ！