最強の魔王による転生令嬢を巻き込んだ異世界チート無双計画

1章女神の願い

1章8話冷淡な市民

　アカリはホラホラ王国で、魔獣狩りの依頼と飲食店のバイトを掛け持ちしながら、日々を暮らしていた。
　そして、そんなある日、彼女にとって、もっとも一番の目的である神英雄を倒すために、ビラを配りながら、街行く人に声を掛けている最中だった。

「お願いします！　誰か悪の神英雄を倒すために、立ち上がりませんか？　今、彼らは世界の平和を脅かそうとしています！　誰か協力してくれる勇士のある方を探しています」

　アカリはクリーム色のロング髪に汗を垂らしながら懸命に強く訴え、ビラを差し出すが、市民や冒険者は一切受け取らず、耳を傾けることはなく、ただ無視するばかり。
　たとえ、受け取る人がいても、ビラをもみくちゃにし、投げ返される。

「英雄に楯突く奴なんて……この世にはいねぇーよ。馬鹿じゃねぇーの」

「お願いします！　今こそ立ち上がるべきなんです！　じゃないと、世界は終わってしまう！」

　また、怒鳴る輩も。

「うるせぇな！　悪が英雄だと？　頭がおかしいんじゃないか？　まさか、お前反英主義者（世の中から英雄を排除しようとする思想を持つ者）か？」

「いえ……そうではなく」

「うぜぇ……消えろ」

　見下した上位英雄の男の三人組が現れる。
　リーダーの髭を蓄えた男が女神の顎を触り、引き寄せる。

「なかなかの上玉じゃねーか。オレが手伝ってやろうか」

「やめてください」

「何だその挑戦的な紫眼は？　女神の分際で……」

　すると、下っ端が笑いながら、はやし立てる。

「あれ、女神って言えば二、三年前に全滅したっすよね？」

「あぁ？　そうだったか？　知らねーが、女神を騙る女かぁ？　これはとんだ罠にかかるところだったぜぇ」

　リーダーの男は女神を突き飛ばし、立ち去って行く。
　アカリは舞い散るビラを悲しげに見ながら、くしゃくしゃになったビラを握り締め、悔しさを滲ませる。

「何で……みんな分かってくれないの」